親子との出会い 霊媒体質の少女②
手芸部を二時間で切り上げ靴箱で上靴を履き替えていた愛は、テニスウェア姿の菜穂に声をかけられた。
「あれ?菜穂、部活終わったの?」
「うん!後で着替えるけど、それよりさあ」
菜穂はニヤニヤと笑いながら右手を後ろに回している。
「じゃ~ん‼」
菜穂は右手を前に出すと、何かのチケットを四枚愛に見せた。
「えっ、何、それ?」
「ファンタジーランドの一日半額チケット!おじさんがくれたんだ」
それはよく見るとかがやき町の市内にある遊園地のチケットだった。
「一緒に行こ!」
「いいけど」
「何よーそのリアクション。誘ってあげてるんだからもっと喜んでよ!」
「他は誰と行くの?」
そう尋ねると菜穂は「えへへー」とにやけながら両手を後ろに回した。
「高嶺くんと風浜くん」
「はあ――⁉」
愛はらしくなく大声を上げた。よりによって今一番会いたくない人と一緒に遊園地に行くだなんて考えられない。
「風浜にはもうチケット渡してるから。日にちは明後日の土曜日ね!」
少ししか話に出てきてない(というか姿さえ出てない)ので大半が忘れていると思われる、風浜りょうとは愛の幼馴染の一組の男子だ。運動神経抜群でイケメンな爽やかボーイである。
「ちょっちょっちょおー‼待ちなさいよ‼」
「風浜と高嶺くんって仲いいでしょ。愛と風浜だって仲いいし。だからホラ、一緒にファンタジーランド行ってジェットコースター乗る時私が高嶺くんの隣でさ……」
中学生の時からりょうはサッカー部で、当時サッカー部だった真とは練習試合や合同合宿で知り合っていた。気さくなりょうは他校の生徒とも普通に仲良くなれる。その時にレベルが高い者同士意気投合したのだ。
「待ってってば‼」
憤慨する愛を菜穂は不思議そうに見た。
「なに?」
「高嶺くんを誘うなら私、行かないから!」
「え?なんで?最近よく話してるから仲いいのかと思った」
「良くないよ‼」
愛ははぁはぁと肩を揺らし、息を切らした。
「そっかぁー。でもそれじゃWデートできないなぁ。うーん、光は試合近いし部活だし、どうしよう」
「……あのさ」
愛はジトッと菜穂を見た。
「高嶺くんのこと、好きなの?」
菜穂はキョトンとした顔をした。
「好きだよ?かっこいいし」
「……」
愛は絶句に近い沈黙をした。
「風浜だって、愛も行くって言ったら嬉しそうにしてたよ」
「え?そうなの?」
「だから、ねぇ行こうよ」
「……」
「高嶺くんには風浜からチケット渡すように言ったから」
「……」
「ねえー」
「……ちょっと考えさせて」
愛は腕時計を見た。時刻は午後六時半前だ。五月なので空はまだそこまで暗くない。
「ごめん、もう帰らなきゃ。行くかどうかはあとでメールする」
「……わかった」
菜穂に手をかざすと愛は靴箱を出た。
(今から行ったら絶対怒るだろうな、あの人……)
愛はいつも真との待ち合わせ場所に使う裏山に来ると、暗い空色とオレンジ色の中間の夕焼け空を見上げてため息をついた。
「トゥルー・ラブ・チェンジ」
愛は変身すると、右手に持った剣をチラッと見た。
「……行こ」
愛は仕方なさそうに飛び上がると、家々の屋根をつたってエーラを探しに行った。
「はー、もう帰ろうかな」
エーラも見つからず、マインド的にしんどくて疲れた愛は変身したまま商店街を人にぶつからないように歩いていた。
その時、二メートル先にいる二十代後半ぐらいの女性と五歳ぐらいの小さい女の子が目にとまった。
「うあ…うぁあ……」
「ちょっと、まいか‼」
(……えっ⁉)
女の子の体に黒い霧がまとわりついている。十中八九黒いリューフだろう。
「どうしたのよ‼」
母親らしき女性は女の子の肩をつかみ、不安そうに顔をまっすぐ見る。トゥルーラブか、よほど霊感の強い者でないとリューフは見えないのだ。
愛がどうにかしようと二人に近づいた時、斜め上から変身した真が現れた。
着地した真は、剣で女の子の体をすばやく二、三度通した。
「あ……」
少女の体から二、三の悪霊が抜けだし、周囲を漂った。
「天園!お前の剣で浄化しろ、早く‼」
「あ、はい」
愛は剣でリューフに光を当てた。綺麗な霧状の光になって消えていった。
「光をこの子にあててくれ」
愛は剣をかざし、唱えた。
「トゥルーラブ・シャイニング‼」
剣から光が放たれ、少女に当たった。
「……あれ」




