愛と真の修行!?凸凹コンビはガッタガタ!!②
七時半頃、愛が教室へ入るとクラス中がざわついており、ほとんどが昨日の「不審者」についての話題で持ち切りだった。
「お、おはよう菜穂」
愛は微妙にどきまぎしながら挨拶を返した。
「で、犯人はでっかい鎌持ったコスプレ男だって」
「やべーよなぁ。しかも十代だろ?俺らとそう歳変わらねぇじゃん」
愛の近くの席で男子生徒が二人、例の事件について話していた。
「愛、今朝のニュース見た?女の子が襲われたって」
「う、うん、知ってる」
真菜津の名前は放送上記載されなかった。だが愛が登校時に確認したところによると今日は休んでいる。
「怖いよねぇ。あたしもう街行けないよ」
「今日は学校中がその話で持ち切りだぜ」
愛は、学校が終わったら先生に真菜津の住所を聞いて、お見舞いに行こうと思った。
「そういえば、お前昨日高嶺と二人で街にいたんだって?」
愛はびっくりして近くに来た男子生徒を見た。
「えっ、そうなの、愛⁉」
菜穂が驚いて愛に尋ねた。
「一組の男子が言ってたぜ。天園と高嶺が街でうろついてるの見たって」
「ほんとか、愛⁉」
光が驚き戸惑った顔で言った。
「そ、それは……」
その時、誰かが四人の近くを通りかかり、男子生徒に向かってドスのきいた声で喋った。
「おい」
男子生徒がびっくりして振り返ると、そこには不機嫌な顔をますます苛つかせた真が立っていた。
「な、何……」
「俺は昨日、街には行っていない。変な噂を真に受けるな。一組の奴がでたらめ言ってんだろ」
「え、うん何、そうなん?そっか、俺の勘違いだったわ!ごめんネ~……」
そう言うと男子生徒は気まずそうにそそくさと自分の席へ戻っていった。
「おい天園」
帰りのホームルームが終わり、荷物を整理していた愛の前に真が廊下側の前のドアから手招きした。
愛は無言で真についていき、人気のない階段の踊り場まで連れていかれた。
「……何?」
「放課後、裏山まで来い」
裏山は全くと言っていいほど人気がない。そんなところに連れて行って何をする気だ、と一瞬変な想像をしかけたが、愛は頭の中で首を振ってすぐに想像を消し去った。
「修行するぞ」
「しゅぎょう⁉」
愛の声が高くなった。
「修行って……何の……」
「トゥルーラブのに決まってんだろ。今の俺たちのコンビネーションでディグレイドに勝てるなんて思い上がりもいいとこだ」
「え……でも」
「エーラとシェルルも一緒だ。これからすぐに裏山に集まれよ」
「今日はこのあと、瀬川さんのお見舞いに行こうと思ってるんだけど……」
真は苦みばしった複雑そうな顔をすると後ろ頭を掻いた。
「……終わった後でいいだろ」
「……何それ、高嶺くんが原因なのに……冷たくない?」
「その間に奴らが襲ってきたらどうするんだよ‼また犠牲者が出るぞ⁉」
「……高嶺くんはさ」
愛は間を置き、真を見上げた。真は表情を真顔に戻し愛を見下げた。
「あたしとパートナーで、いいと思うの?」
真は真顔のままじっと愛を見た。
「……本当のパートナーじゃなきゃ、ディグレイドには勝てないんでしょ?」
「……俺は」
真は結んでいた唇を軽く開いた。
「……俺には好きな人がいる。その人と結ばれるっていう願いを叶えて貰うためにトゥルーラブになった。それは変わらない」
愛は無言のまま、目線を少し下に落とした。
「だが、戦いは別だ。ディグレイドを倒さなければ世界は堕落する。それを防ぐためなら多少理不尽なことだって俺はやらなきゃならない」
「でもさ……それって」
愛は言いづらそうに目線を泳がせた。
「ふ……二股かけることにならない?」
「問題ない」
顔を赤くしかけた愛を真は一刀両断した。
「戦いってのは、要はコンビネーションの問題なんだ。どれだけ息が合うかでやりやすさは変わる。愛なんてのはそこまで重要じゃない。女神様が勝手にそう言ってるだけだからな」
愛は自分の顔ぐらいの大きさの氷を頭の上に乗せられたような気分になった。
――なによ……
「……あっそ」
そう言うと、愛は真に背を向けた。
「じゃあ、今からエーラと裏山まで行くから、先に行っててよ」
「……?ああ」
愛は若干音を立てて階段を上ると、教室へ戻っていった。
「はーっ‼全然分かってない‼」
愛は家に帰ると、もやもやした気分のまま両手を広げベッドに仰向けになった。
「何がだ?」
エーラは愛の勉強机の上でさくらんぼを食べながら尋ねた。
「……女心がっていうか……」
エーラはさくらんぼの茎と種をティッシュの上に置くと、目をぱちくりさせて愛を見た。
「……お前、天堂って男が好きなんじゃなかったのか?」
「え……」
そう言われて愛は気が付いた。本当に嫌いな相手なら、「愛」が必要ないなんて言われても葛藤しないはずだ。
(私……)
愛はベッドから起き上がった。
(高嶺くんのこと、嫌いじゃなくなってる……?)
愛が真を嫌いになった理由は翼を侮辱されたからだ。だが昨日の戦いで庇われたり持ち上げられたりしたせいからなのか、少しずつ意識し始めているような気がした。それに、昨日は翼と話をしていない。トゥルーラブになったことで、真と接する機会が増えているからということもあるかもしれない。
「……どうせあの人には好きな人がいるじゃん」
愛は瞼に影を落としながら呟いた。
「まあ、そうだな」
エーラがさらっと言った。
「……ほんと男って女の気持ちわかんないよね。コウモリもそうなの?」
愛は普段着で裏山に来た。水色のパーカーに黄色いショートパンツで、その下には黒いストッキングを穿き白地に青いラインの入ったスニーカーを履いていた。
「ここでいいの?」
正確な場所は真から聞いていなかったが、エーラもシェルルも生物や霊体を感知する能力があるため近づけばお互いがわかるらしい。
「おっ、来た」
正面から真が歩いてきた。黒いシャツの上に灰色の上着を羽織り、下は濃い青色のジーンズ、靴は黒のスポーツシューズだ。
(私服初めて見たかも……)
その真の肩の辺りから、ジェルが顔を出した。
「こんにちワ愛ちゃん!昨日はオツカレさま!」
「うん、ありがとう」
挨拶もそこそこなところで、エーラが割って入った。
「早速修行を始める、が、その前に説明だな。お前ら二人はディグレイドっつー組織を倒さなきゃいけないわけだが、そいつらはリューフ……この世に漂っている霊みたいなもんを操って攻撃したり、人間に危害を加えたりする」
「攻撃とか危害って、何をするの?」
愛がエーラに問う。
「昨日の利用された二つ結びの女、あれはブラッドに操られた黒いリューフを憑りつかされたせいだ。それにブラッドの闇のパワーが加えられてあんな力を出せたんだ」
「……リューフって、悪いものしかいないの?」
「白いリューフもたくさんいるぞ。そいつらを味方にできれば、強い力が出せる。強くなれば見えるようになる。お前らの役目は、闇に染まったリューフと、最終的にはディグレイドも全員浄化すること」
「どうすればいいの?」
「とりあえずこれで変身しろ」
愛はエーラに腕につけられるぐらいのチャームを渡された。十字架にハートがかかったような直径2センチほどのチャームで、上下左右の十字の先はハートから少しだけはみ出ていた。真ん中にルビーらしき赤い小さな宝石がちょこんとつけられていた。くっついたハートと十字は綺麗な金色だ。
真はポケットから六芒星のチャームを取り出した。真ん中の右上には小さな青い宝石がくっついている。こちらは高級感のある銀色だった。
「愛はハート、真は六芒星のチャームだ。変身するときに必要だから絶対になくすなよ。肌身離すな」
「わかった」
愛は返事をし、二人はそれぞれチャームを握り締めると、かけ声を唱えた。
『トゥルー・ラブ・チェンジ‼』




