第十話 おばあちゃんの言葉、四人目の癒しの力②
「愛!!一般人がディグレイドに襲われてる、早く変身して行け!!」
「えぇ!?急に!?」
自分の部屋で手芸をしていた愛は作業をやめ、そのまま変身した。
「トゥルー・ラブ・チェンジ!!」
ルビーローズはエーラを従え、そのまま窓から、住宅街の屋根をつたって飛んだ。
「どっち!?」
「北川町のほうだ!!」
「ハァ、ハァ……」
乙葉は川沿いの道の行き止まりまで追い詰められていた。ブラッドは大鎌をかかげ、宙に浮きながら乙葉を凝視している。
「……あなたに何が分かるのよ」
乙葉は走り疲れたボロボロな身体でも尚立ち上がり、ブラッドを睨みつけた。
「何も知らないくせに、分かったようなこと言わないで!!」
「……お前、大人しそうに見えて意外と度胸あるな」
ブラッドは熱のこもった瞳で、爛々と乙葉を見据えた。
「……だがもう、これで終わりだ!!」
ブラッドは乙葉の心臓めがけて大鎌を振り下ろした。
ガキィン!!!
間一髪、ルビーローズがブラッドの大鎌をピュア・ラ・ブレイドで防いだ。ブラッドの大鎌とルビーローズの剣の交わし合いの後、トゥルーサファイアが参戦し、ブラッドを上空に跳ね飛ばした。
「えっ……!?」
乙葉は赤と青の二人を見てびっくりした。青い方は見覚えがある、この前上空を飛んでいた男子だ。
「この子、この前学校見学に来た……乙葉ちゃん!?」
「なんだ、知ってるのか?」
エーラが言う。
「ルビーローズの知り合いか」
トゥルーサファイアが少し驚いて言う。
「こんな可愛い女の子を襲うなんて、あんた本当嫌な趣味してるわね!!」
ルビーローズはブラッドに怒鳴り散らした。
「変な言い方するな、俺はこんなガキに興味ない」
ブラッドはすかしたように言った。
「今日こそお前を倒す!!」
トゥルーサファイアが剣を構えてブラッドを凝視する。
「ハッ、いいぜ。やってやろうじゃねーか!!」
乙葉の上空で、トゥルーサファイアとブラッドの接戦が始まった。
ルビーローズもトゥルーサファイアを援護する。
シェルルが心配そうに、乙葉の周りをふよふよと飛んでいた。
(一体何なの……)
乙葉は目の前で起こっている出来事に困惑しながら、意識が遠くなっていった。
「植物の声が聞こえるとか、お前本当気持ちわりいよなー!!そこでずっと花としゃべってろよ!!」
幼稚園の、同い年の男子にそう言われ、乙葉は泣きながら公園から出て走って行った。
「うっ……ぐすっ、ひっく……」
乙葉が自分の部屋のベッドに顔を伏せて泣いていると、乙葉の祖母、セツ子が部屋に入ってきた。
「どうしたんだ、また男の子にいじめられたのかい」
乙葉は泣き止まない。
「にんげんなんて……きらい、大嫌い!!花の方がよっぽど心がきれいなのに、なんでにんげんはあんなに汚いの!?」
セツ子は乙葉の隣に座り、優しく彼女の頭をなでた。
「……そんなにんげんでもね、本当はねっこは美しいんだよ」
「うそだ!!」
「……お花より、人間の方が尊い生き物なんだよ」
「……ぜったい、うそだ……」
セツ子は乙葉の背中を朗らかに抱きしめる。
「……そんな風にしか思えなくてもね、そんな大嫌いな人間を愛してあげて」
「……なんで……?」
「乙葉が愛してあげることで、救われる人たちがいっぱいいるからさ」
乙葉はうっすら目を開けた。
(私は……)
ルビーローズとトゥルーサファイア、ブラッドの接戦は続いていた。
ルビーローズ、トゥルーサファイアは息を切らす。
「今日はいつもよりしぶといわね……」
「お前ら邪魔なんだよ。俺が用があるのは、そこの茶髪のおかっぱだよ」
「えっ!?」
ルビーローズはトゥルーサファイアと共に、乙葉を振り返った。
「どうして乙葉ちゃんを……!?」
「わかったらどけや、ザコが!!」
ブラッドは大鎌を大きく振りかざし、紫色の雷をルビーローズとトゥルーサファイアに喰らわせた。
「キャアァアァアア!!」
「ぐっ……!!」
空中にいた二人は、地面に膝をついた。
「さあ、邪魔が入ったがさっきの続きをやろうか?」
ブラッドが大鎌を持って乙葉に近づく。
(「そんな大嫌いな人間を愛してあげて」)
おばあちゃんの声がこだまする。
乙葉はうっすらだった目を完全に見開くと、ブラッドの前に立ち上がった。
「なんだ……?」
ブラッドは怪訝な顔つきを乙葉に向ける。
エーラの首に下げているクローバーの形のチャームが光り輝き出す。
「これは……!!」
乙葉の胸の中心に、黄緑色の宝石が輝いているのがエーラの目に見えた。
エーラは乙葉にチャームをぶん投げた。
「これを!!」
乙葉はチャームを受け取り、心の奥深くから叫んだ。
「トゥルー・ラブ・チェンジ!!」
黄緑色の眩い光がキラキラと乙葉を包み、茶色のショートボブだった髪はツヤのある綺麗な黄緑色に変わり、それと同じ色の、妖精のような出で立ちの、ふんわりとしたスカートタイプの衣装に変身した。胸のリボンの中心にはペリドットが光っている。靴は同系色のリボンで巻かれた、トゥシューズだ。衣装全体は、葉っぱや花で装飾がされている。
「新緑に萌える癒しの若葉、ピュアハーブ!!」
ピュアハーブは口上を言い終えると、スッと目を閉じ、黄緑色の光を体全体から放った。その光は、ルビーローズとトゥルーサファイア、そしてブラッドまでも包み込んだ。
「っ!?」
ブラッドは慌ててその黄緑色の光から距離をとった。
ルビーローズとトゥルーサファイアはその光の中にいると、優しく、強く、心地良いものを物凄く感じた。
ついでに光の範囲内にいたエーラとシェルルも、その「感じ」を受けた。
「気持ちいい……」
ルビーローズは身体が芯から回復する感覚を受けた。ブラッドと戦って受けた傷が、シュワシュワと治っていった。トゥルーサファイア、エーラ、シェルルも同様だった。
「これは……すごいな」
トゥルーサファイアは感心した。
「あなたもこっちへ来て」
乙葉は右手をスッと伸ばし、ブラッドへ向けた。
「……なっ!?」
ブラッドは困惑してピュアハーブを見た。
「……何言ってんだ、お前、正気か!?」
「あなたも傷ついてる。早く、治癒しなきゃ」
ブラッドは目を見開いてこめかみに汗を流した。
「拒むというのなら」
ピュアハーブは光の中から琴を取り出し、心のこもった綺麗な声で歌い出した。
♪小鳥さん お歌が上手
うさぎさん 外かけまわり
子猫さんは おねむの時間♪
「うっ……!?」
ブラッドは青ざめ、両手で耳を塞いだ。
♪木漏れ日と花畑
光のワルツ
癒しのメロディーを
あなたにおくりましょう
わたしの歌は祈り
心の闇の黒いもやを
愛のキラキラで満たして♪
「うっ……やめろ、やめろ……!!うぁあああああっ……!!」
ブラッドは耳を両手で塞いだまま、姿を消した。
『ピュアハーブ!!』
ルビーローズとトゥルーサファイアがピュアハーブに駆け寄る。
「すごいよ乙葉ちゃん!!ブラッドを一人で退散させるなんて!!」
ルビーローズはピュアハーブの両手を握り、瞳を輝かせながら言う。
「えっ……もしかして、愛さんですか!?」
「そうだよ。変身後はルビーローズ。よろしくね♪乙葉ちゃんが仲間になってくれて嬉しい!!」
ルビーローズはピュアハーブに抱きついた。
「……ブラッドにあんな風にできる奴、初めて見たよ……」
トゥルーサファイアは感心しながら複雑な思いで乙葉を見ていた。
「これで四人目が増えた!!ディグレイド全員に太刀打ちできるまであと少しだ!!」
エーラが短い手でガッツポーズをとる。
「聞いてた通り、本当に可愛らしい子ネ!!これからよろしくネ!!」
シェルルも短い手を差し出し、ピュアハーブと握手する。
乙葉はにっこりと目を細めて、癒しのオーラを出しながら満面の笑みをシェルルやルビーローズ達に向けた。
「ハァ、ハァ……」
ブラッドはアジトの支部に帰ってくるや否や、武器を乱暴に床に置き、息を切らした。
(なんなんだあいつは……今までのトゥルーラブと違う……)
「どうしたのよ、ブラッド」
アナディアナがカウンターから立ち上がり、ブラッドに声をかける。
「...…べつに、なんでもねぇよ」
ブラッドは陰鬱な声でそう言うと、視線を床に固定されたように凝視し、動かなくなった。
緑川 乙葉/ピュアハーブ
15歳 身長:150cm 8月23日生まれ(おとめ座)O型
髪色:栗色(変身前)→黄緑 属性宝石:ペリドット
花や植物が大好きで、大人しく優しい性格。
普段は栗色のショートボブで、たまにフレームレスのメガネを愛着。
手先が器用で手芸などが得意。
ナチュラルヒーリングハープ(琴)を使用し、相手を浄化の歌で癒したり、ピュアハーブ・フラワーヒーリング(技)で相手を光で包み込む。




