愛&りょう・菜穂&真!Wデートはドッキドキ!?②
近くのベンチに左から真、りょう、愛、菜穂の順に腰掛け、ソフトクリームを食べた。
「おいし―」
「うん」
菜穂の言葉に愛はうなずいた。
「りょう、甘いもの好きだっけ?」
菜穂が風浜に尋ねた。
「俺?うん、普通に好きだよ」
「高嶺くんがチョコ選ぶの意外だったなー」
菜穂がソフトクリームから口を離し、体をかがめてにやけながら真を見る。
「……別にいいだろ?」
真はそれだけ言うとソフトクリームを舐め続ける。
「よっしゃー、お化け屋敷行くぞー‼」
ソフトクリームを食べ終えた四人は、ファンタジーランドの名物、ゴーストハウスの前に立っていた。
「あたしお化け屋敷も苦手なんだけど……」
「そんなんじゃ遊園地楽しめねーじゃねーか」
引き腰の愛に、りょうは笑いながら言う。
「今順番待ち無いよ!早く行こ!」
そう言い、菜穂はまたもや真の腕を引っ張る。
「行くぞー、愛!」
「えぇ……」
りょうは愛の肩を掴み、入口へ歩いて行った。
「四名様、どうぞ」
愛たちは入口の先へ進んだ。
「うわ、暗っ……」
愛が隣で歩いているりょうの服の袖をつかむ。
「こーいうとこってほんとに幽霊いたりして……」
「お、おどかさないでよ‼」
からかう菜穂に、愛は声を上げる。
(いっつも戦ってるくせになんで怖いんだよ……)
真は呆れながら心の中で思った。
「きゃあぁああああ‼」
愛の首に何か冷たいものが触れた。
「……うるせぇな」
真がボソッと呟いた。
「何⁉今の何⁉」
愛は慌てて辺りを見回した。だが何も見当たらない。
「……愛、もしかしてお化け屋敷初めて?」
りょうが聞く。
「そーいや、中学生の時来た時も外で待ってたもんねぇ」
菜穂が余計なことを言う。
「こ、高校生になったんだからもう平気だよ‼大人みたいなもんだもん、へいき、へい……」
「グワァアァアアア‼」
「キャ―――‼」
曲がり角で現れたゾンビに、愛は恐怖の叫び声を上げた。
「リアルな被り物だったねー」
ガタガタ震える愛をよそに、菜穂は冷静な感想を言う。
「最近のは一層怖さが増してるよな」
りょうが菜穂に言葉を返す。
ぎゅうぅっとりょうの腕にしがみつく愛を、りょうは大分意識しながら見た。その様子を見た真は先ほどよりも更に苦いものを食べたような顔をした。
「ってか、なんでみんなそんな普通なの⁉怖くないわけ⁉」
「……まあ、俺はべつに」
「あたしなんか県内の遊園地のお化け屋敷はもちろん、関東中めぐってるからねー。行ったとこ十五は越したかな?」
菜穂は大っぴらにはしてないがホラーやオカルトが好きなのである。廃墟や閉鎖された遊園地なんかにも探索に行き、心霊写真を撮ってくることもある。
「……こんなもん、偽物なんだから怖くないだろ」
「そうだけどさー……」
真までもから平気なそぶりを見せられ、愛は自信を無くした。
ゴーストハウスはホラー要素の強い脱出ゲームになっており、三つの部屋を突破しつつ通路の迷路を進んでいく様式だった。
愛たちは一番目の暖炉のある部屋へ辿り着き、謎を解いていた。
「ええー何この暗号ー訳わかんないよー」
薄暗い部屋の中で、菜穂は開けた小さな宝箱の中から出てきた紙を見てぼやいた。
「貸してみろ」
真がそれを取り、数秒見ると菜穂に紙を渡し、部屋から出る最後の鍵を見つけ出して言った。
「3番だ」
そう言うと真は三つのドアの中から3と書かれたドアの鍵穴に鍵をさし先に進み、三人は真についていった。
二番目の部屋もほとんど真が謎を解いて脱出し、三人は次の部屋へ向かうため迷路を歩いていた。
「ほとんど真が解いてんじゃん……」
「さすが学年トップ」
りょうが愛に腕を掴まれながら言い、菜穂もそれを真似しているのか真の腕をつかみ歩きながら言った。
「この調子なら次も楽勝だねー」
菜穂はニコニコと真の顔を見る。最初の通路よりお化けやゾンビの出現率が高くなり、愛は頻繁にキャーキャー叫び声を上げていた。
「愛、怖くないって」
泣きそうになりしがみついてくる愛をりょうはなだめた。
「グォエエエエエエ‼」
「キャー‼怖―い‼」
現れたゾンビを前に、菜穂はちっとも怖くなさそうに真にしがみついた。
「……藤野……」
呆れた真の声を聞いた後、愛はどこからか伝わる揺れを感じた。
「ん……?」
りょうと菜穂は気付いていない様子だった。
「ねえみんな、なんかさっき……」
愛が言い終わらないうちに、上下の激しい揺れがお化け屋敷中を襲った。
「きゃあああああああ‼」
「うわっ‼」
「きゃ⁉」
愛の叫び声の後にりょうと菜穂が声を上げた。
その直後、辺りが真っ暗になって何も見えなくなった。どうやら停電が起こったらしい。もともと暗かった通路が真っ暗になり、愛はパニックで慌てた。
「キャ――‼いや――‼」
「おい、おちつけって愛……いてっ!」
「ちょっとぉー、何も見えないよー‼」
愛の悲鳴と、足を踏まれたらしいりょうの声と、困惑する菜穂の声が暗闇の中で聞こえていた。
その時、愛は誰かに腕を掴まれ、引っ張られた。
「灯りのつく場所を探すぞ!」
りょうの声がした。
「非常用ランプを探すぞ」
「あ、うん、わかった、高嶺くん!」
どうやらりょうが愛、真が菜穂の腕を掴んでいるようだ。
愛は引っ張られるままに誘導された。
通路の壁に気を付けながらしばらく走った後、りょうが非常用ランプのスイッチを押したようで、一部の空間が明るくなった。
「良かった、ありがとりょ……」
愛は灯りに照らされた人物の顔を見て驚いた。りょうではなく真だったからだ。
「高嶺くん⁉」
「天園⁉」
どうやらお互いをりょうと菜穂だと思い込んでいたらしい。
「大丈夫か、愛‼」
「え?」
違う場所で灯りをつけた菜穂とりょうも、お互いの顔を見て驚く。
「りょう⁉」
「藤野⁉」
しばらく互いを見合った後、りょうは残念そうに頭を掻く。
「なんだ、愛じゃないのかよ……」
その言葉に菜穂はムッとする。
「悪かったわね。あたしだって高嶺くんじゃなくてガッカリ」
ふくれた菜穂を見て、りょうは困ったように笑った。
「ごめんて。愛ほどじゃないけど、俺は藤野といたって楽しいよ」
「……あんたって、ほんとに愛のこと好きなのね」
「……そうだけど?」
りょうは暗がりの中、顔を赤らめて言った。
「ん……でも愛って好きな人いるよね」
「えっ⁉誰だよ、それ‼」
「んー……それは言えないな。まだ発展途上だとは思うけど」
「……マジかよ」
りょうは頭を抱えてうずくまった。気づいてないんだ、と菜穂は内心思ったが、自分
も今日気づいたことなので人のことは言えない。
愛は真に掴まれている腕を見た。ごつごつした筋肉質の大きな手の感触が続いている。
「……あの、腕」
それを見た真は手を放す。
「あ、悪い」
その直後、何者かが真を羽交い絞めにし右手で口を封じた。
「ンッ⁉」




