第五話 愛&りょう・菜穂&真!Wデートはドッキドキ!?①
「かいっせいだー‼」
菜穂は雲一つのない青空を見上げ、うーんとのびをした。
「気持ちいいぐらい晴れてるねー」
愛と菜穂は、ファンタジーランドの改札口前で男子たちを待っていた。
愛は黄緑色のワンピースに白いカーディガン、膝丈の青いジーンズ、ベージュ色のパンプスでコーディネートし、淡いピンク色のポシェットを腰に下げており、菜穂は紫のラメ入りのワンピースに、フードのついた黒と灰色のボーダーの丈の長いカーディガンを羽織り、下はフリルのついた黒いニーハイに茶色いショートブーツだ。
「あと十分だね」
愛は左手首に付けたブレスレット型の腕時計を見た。時刻は九時五十分を指している。
「あっ、来た!」
菜穂は頭に手をかざして遠くを見た。前から二人の男子が歩いてくる。
りょうはプリント入りのシャツに黄緑色のパーカーを羽織り、下は膝の位置でしぼるタイプのベージュ色のズボン、緑と白のスポーツシューズ、真は白いシャツに青いデニムのジャケットを羽織り、下は黒いスキニーだ。
「風浜―、高嶺くーん‼」
菜穂はぶんぶんとおおげさに両手を振った。それに気づいたりょうは手を振り返す。
愛も手を振ると、真もスッと右手だけ上げた。
愛、菜穂、真、りょうが対面した。
「おはよー‼」
「おっす!」
菜穂とりょうが片手でハイタッチした。
「晴れて良かったね」
「ああ」
愛と真も顔を合わせる。
「ていうかりょう、ケガは治ったの?」
愛がりょうに聞く。
「ああ、なんかもう全然痛くなくってさぁ。おそるおそる包帯取ってみたらすっかり治ってんだよ。マジびっくり」
「へぇ~」
「なんか魔法でもかけられたみたいな感じ」
真はりょうに気づかれないように微かに笑った。
昨日真がりょうに貼った絆創膏はジェルが治癒の魔法をかけたものだ。そのことなら愛はエーラに聞いたのですでに知っている。
「あっ、りょうと愛の服の色、おそろいじゃん」
そう言うと菜穂はぐいっと愛をりょうと真の間にひっぱり、二人を隣同士に立たせた。
「えっ?」
愛は自分とりょうの服の色を交互に見た。確かに愛のワンピースとりょうのパーカーは色合いは少し違うが黄緑だ。
「言われてみればそうだな」
りょうはさらっと言った。
「私と高嶺くんの服装も似てるよねー!なんか、黒っぽいし!」
そう言うと菜穂は愛と真の間に入り、真の隣に立った。
「……そうか?」
「ってわけで、今日のペアはこんな感じねー‼」
菜穂は真の言葉に被せるように言い、真の左腕にしがみついた。
「えっ⁉ちょっと」
愛はあわてて菜穂を見たが、
「今日は一応Wデートだからね!私と高嶺くん、愛と風浜のっ☆」
と言い、菜穂は真をひっぱって改札口に向かって行った。
「あ‼ちょっと、菜穂‼」
愛は走っていく菜穂に手を伸ばした。
「まあ、せっかくだから楽しもうぜ」
立ちつくす愛に、りょうはいつものさわやかな笑顔で言った。
「……もう……」
(私と高嶺くんに関係があることの記憶、菜穂は消されてるんだっけ……)
愛は複雑な心境の中、りょうに背中を押されて改札口へ向かった。
「最初はどれ乗るー?」
菜穂は真の腕にしがみついたまま遊園地のマップを見て言った。
「……歩きにくいんだけど……」
愛はそんな二人を少しモヤモヤしながら見ていた。
「まずはやっぱりジェットコースターだろ!」
そう言ってりょうは近くにあるジェットコースターのアトラクションを指差した。
「あっいいね!高嶺くんは?」
「平気」
菜穂が聞くと、真は無表情でそう答えた。
「え~?あたしジェットコースター苦手……」
「だいじょぶだって!行こうぜ!」
そう言うとりょうと菜穂は入口に走り出し、ついでに真も引っ張られてついていき、愛も仕方なく三人に続いた。
りょうは一番前に座り、隣に愛を促した。
「うぇ、よりによって一番前⁉」
「大丈夫だって。なんなら俺にしがみついてたっていいからさ」
「はあ?」
爽やかな笑顔でさらっと言うりょうに、愛は呆れた。
「高嶺くんは私の隣ねー♪」
菜穂は真にしがみついたままりょうの後ろに座り、真を隣に乗せた。真はもうどうでもいい、というような表情で座った。
前から見て一番前の右側がりょう、左側が愛、りょうの後ろが菜穂、その隣が真という席順でジェットコースターは出発した。
「きゃあ――‼」
垂直、回転、上がり下がりと、激しく進むジェットコースターに愛は目を回しながら耐えていた。
風が強く顔や体を吹きつけ、髪が後ろに流れる。
「終始叫びっぱなしだったねー、愛」
体中震えが止まらない愛は菜穂につかまりながら階段を降りた。
「もうムリ、ムリ……」
「ははっ、愛らしいなー」
りょうは愛を見て軽快に笑った。
「……少し休むか?」
真が言った。
「うん……」
愛は近くのベンチに腰掛け、少し休んだ。三人はベンチの近くに立ったまま遊園地を眺めている。
「あっ、次、あれ乗りたいな」
愛は近くで回っているメリーゴーランドを指差した。
「メリゴ?」
菜穂が言った。
「……お子様だな」
真が愛をチラッと見てつぶやいた。
「何よー。悪かったわね」
愛はむうっとふくれた。
「そう?俺普通に好きだけど」
りょうがそう言い、若干真だけ仕方なさそうに、四人はメリーゴーランドへ乗った。
ウォータースライダー、コーヒーカップと乗った後、愛は少し目を回していた。
「ク、クラクラする~」
愛は頭を押さえながらよろよろと歩いていた。
「愛、乗り物弱いね」
「菜穂がグルグル回すからだろー」
そう言ってりょうは腕に手を回し、愛を支えた。
「愛、大丈夫か?」
「う、うん……」
その様子を見た真は、苦いものを食べたような顔を少しだけした。
「ちょっとみんなで休憩しよ!ソフトクリーム食べたい!」
そう言って菜穂は目の前にある店を指差した。チュロスやクレープを売っている店で、よくある置くタイプのソフトクリームの看板が店の前に置かれていた。
「あたしファンタジーソフト!」
菜穂は店のお姉さんの前でカラフルなキャンディーチップが散りばめられたソフトクリームの模型を指差した。それはファンタジーランド限定のソフトクリームで、食べるとアイスと一緒にキャンディーが口の中ではじけるのだ。
「あたしもそれで」
愛も同じものを頼んだ。
「オレはミックス!」
りょうはキャンディーなしのバニラ&チョコを頼んだ。
「チョコ」
真はそれだけ言うと、店の前に立って待っていた。
(へぇ、高嶺くん、チョコが好きなんだ……)
愛はチラッと真を見た。甘いものは苦手そうだけどな、と少し意外に思った。




