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コードバディ×トゥルーラブ  作者: エレン


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12/27

真とりょうの友情 目覚めた新しい力③

 放課後、帰り支度をして校舎を出た真はユニフォームを着てグラウンドで一人でリフティングをしているりょうを見かけた。

「真!」

 真を見つけたりょうは、リフティングを中断して真の方へ駆け寄った。

「部活始まるまでちょっとの間だけでいいから、自主練につきあってくれよ」

「いや……俺は」

 バイトがあるから、と言おうとした真だが、昼休みに付き合った練習で久しぶりにボールを蹴り、思いの他楽しく、日頃のストレス発散にもなった真は心が揺れ動いた。

「いいじゃん、ちょっとだけでいいから」

 りょうは真の肩に腕を回して引き寄せた。

「……じゃあ、十分だけ」



「ねえ見て、あれ高嶺くんと風浜」

 ベランダに出ていた菜穂は、隣にいる愛の肩を叩きながら校庭を指差した。

「二人、一緒にサッカーしてるよ。仲いいの、いいねぇ」

 菜穂はベランダの塀に腕を乗せながらにやにやと二人を見ていた。菜穂の性質上、何かノンケではないことを考えているのではなかろうか、と愛はちらっと思った。

「愛ー、そろそろ帰るぞ」

 光が人の少なくなった教室の入口の方から声をかけた。

「あ、うん」

 愛は菜穂と一緒にベランダから教室に入った。



 校庭のサッカーゴール近くで真とりょうは練習していた。

「リフティングからのシュート、できるか?」

 そう言いながら膝でボールを頭の上にあげ、ゴールに向かって蹴った。

 ボールはゴールポストに当たり、内側に跳ね返ってかろうじてゴール内に入った。

「んー」

 りょうは唸り、見ていた真は自身もリフティングを始め、頭上にボールを上げた直後、垂直に飛ぶように蹴り、ボールはきれいにゴールに収まった。

「うおっ」

 りょうは素直に感心して目を見開かせ真を見た後、やや悔しそうに笑った。

「なんだよ……やめたお前の方がまだ上手いじゃんか」

 りょうは後ろ頭をがしがしと掻いた。

 数人だが、校庭に人が集まってきた。ユニフォームを着ているのでサッカー部だと見てわかる。

「じゃあ俺、そろそろ」

 真が校門の方に向かおうとした時、りょうの後ろに男子生徒が二人立っているのに気が付いた。真はその二人が出すオーラに、ただならぬ殺気を感じた。

「……りょう」

 真はりょうの後ろを指差した。

「ん?」

 りょうは後ろを振り返った。門脇湊斗と坂本航が、制服姿で立っていた。門脇は二歩、三歩とりょうに近づいた。

「なんだよ、門脇」

 りょうは門脇の雰囲気がおかしいのに気づいた。ふと門脇の右手を見ると、折れた木材を持っている。

 門脇は木材を振り上げ、りょうに襲いかかった。

「危ない‼」

 真はすばやい反射神経でりょうを押した。間一髪、二人は棒をよけられたが地面に倒れこんだ。

「なにすんだ!」

 りょうはすばやく立ち上がり、門脇から距離を取った。

 真は二人の目が虚ろなのに気づいた。よく見ると、体に黒いものが憑りついている。

 りょうは門脇から木材を奪おうと走り出した。

(やばい……っ!)

「お前がいるから俺はぁあああっ‼」

 門脇は木材を再び振り上げて叫び、りょうに振り下ろした。りょうは右へよけたが、完全によけきれず左肩へ当たった。

 ガツッ……‼

 痛々しい音を立てて鮮血が左肩から飛び散った。

「いって……‼」

 りょうはよろめきながら地面に座り込んだ。

(まずい……)

 どう見ても二人は悪霊に憑りつかれている。ディグレイドの仕業だろう。だがりょうの前で変身するわけにはいかない。姿が消えたことの説明もできないし、ディグレイドが現れれば戦いに巻き込んでしまう。

 真はすばやくりょうの前に回り込み、座り込んだりょうを立たせて抱えたあと拳で腹を強く殴った。

「……っ⁉な、んで……」

 りょうは真の不可解な行動にショックを受けた後、気を失った。

「トゥルー・ラブ・チェンジ」

 静かにそう呟くと変身し、真はりょうをかかえてマントで包み、周囲から見えなくするとすばやく校舎の上に飛び上がり中庭に移動した。

 一旦着地すると、南校舎の開いた窓に入り、そこから保健室まで移動してベッドにりょうを寝かせた。幸い他に人はいなかった。

「……ごめんな」

 真はそう言い残し、保健室の窓を開けて校庭まで飛んだ。



 真が再び校庭へと戻ると、門脇と坂本を含むグラウンドにいた生徒たちが負のオーラをまとって真の方へ近づいてきていた。

「……これは」

 サッカー部の先輩たちや、同級生たちも皆虚ろな目をしている。ざっと見て十人はいるだろう。

「よーお、久しぶりだなトゥルーサファイア」

 真が上を見上げると、ブラッドがいつもの格好で宙に浮いていた。

「ブラッド‼」

「今日はあの女はいねぇのか。好都合だな」

 真の脳裏に愛がよぎった。真は小さく舌打ちをすると汗を垂らした。

 その直後、門脇が木材の折れた方を真に向けて振り下ろした。

「っ‼」

 間一髪、真は右に体を逸らして木をよけた。その後も間髪入れず門脇は棒を振り回す。

 真は剣を使い、焦りながらも直撃しないように上手く棒をかわした。

「お前……‼」

 真は門脇たちから距離を取り、ブラッドを睨みながら声を大きくした。

「ぁン?どうしたよ。俺はいつでもお前を殺す気満々だぜ」

 ブラッドは口の端をにいっと吊り上げる。

 その後、宙に浮きながら下にいる生徒たちを眺め、パチンと指を鳴らした。

 坂本やサッカー部の同級生、先輩たちが折れたパイプや石を持ち上げ、一斉に真に襲いかかってきた。

「‼」



 光、菜穂と一緒に下校しようとしていた愛は、廊下で雅たち三人に遭遇していた。

 敵意むき出しなのは変わらないが、少しいつもと様子が違う。

「……天園愛……」

 雅、舞、美緒、特に雅の体を濃い黒い霧が覆っていた。

(この三人……‼悪霊に憑りつかれてる‼)

「え、城ケ崎⁉」

 愛と動揺する菜穂を両腕で制し、一歩前に出た光が二人を睨む。

「なんだお前ら」

 愛はふと、上の階が屋上だということに気が付いた。

「二人とも‼こっち‼」

 愛は光と菜穂の腕を掴むと、廊下を走った。

「え、愛⁉」

「どうしたの⁉」

「屋上へ来て‼」

 愛は二人を引き連れて階段を上り、屋上へのドアを開けて入ると鍵を閉めた。

「……はぁ……」

 愛は息を切らし、額の汗を拭いた。通り過ぎる風に吹かれた時、一人の男のことを思い出した。

(高嶺くん……)

 ぞわっと、悪寒が体中をはしった。何か嫌な予感がする。

「愛?」

 光が声をかける。

「屋上へ来て、どうするの?」

 菜穂も尋ねる。

 愛は勢い良く振り返ると、真剣な眼差しで二人を見て言った。

「二人はここにいて」

 光と菜穂は呆気にとられた。

「え?何でだよ」

「愛はどうするの?」

「高嶺くんのところに行かなくちゃ」

 光と菜穂は意外そうに目を見開いた。

「高嶺くん⁉」

「お願い、何も聞かないで、行かせて‼」

 愛は必死の形相で光と菜穂に訴えた。二人は顔を見合わせた。

「……わかった。後で話を聞かせろよ」

「えっ、光⁉」

 菜穂は納得していないようだったが、光の承諾を受けると愛は走り出した。

「ありがとう‼」


 屋上のドアをくぐり閉めた。階段の下には雅たち三人が迫っていた。

「トゥルー・ラブ・チェンジ‼」

 愛は変身した。

『えっ⁉』

 いきなり姿が消えた愛に、三人は困惑した。

「トゥルーラブ・シャイニング‼」

 愛は階段の下まで飛び、ピュア・ラ・ブレイドを光らせ、一気に三人の体を通した。

 悪霊が三人の体から抜け、一気に浄化された。

 愛は北側の窓を開けると外に出、マントを使って宙に浮かび上がり、光と菜穂のいる屋上を超えて南側の校庭まで飛んで行った。


「……?」

 何かの気配を感じた光は後ろを振り返ったが、風が通り過ぎたように見えただけだった。



 上空へ飛び、生徒たちをかわしたが、鎌を出したブラッドに攻撃を受け続けていた真は体力を削られながら耐えていた。

「おらぁ‼」

 ブラッドは大鎌を振り、激しい音を立てて真を地面に打ちつけた。

「うっ……」

 砂埃の中、真は体を震わせながら膝をついた。

 門脇や坂本を含む生徒たちが、地面に落ちてきた真に待ってましたとばかりに木材等を振り上げた。

「くっ……‼」

 やられる、と真が目を瞑ったその瞬間。

「トゥルーラブ・シャイニングッ‼」

 剣を光らせた愛が生徒たちの体を通し、一掃した。

「高嶺くんから離れなさい‼」

 憑かれた悪霊を浄化された生徒たちは呆気にとられ、そのまま気を失った。

「ルビーローズ……‼」

「高嶺くん、大丈夫?」

 真の前に立ち降りた愛はピュア・ラ・ブレイドを両手で握ったまま真を見た。

「……変身した後は正式名称で呼べって」

「あ、ごめん」


「真―‼愛‼」

 エーラがジェルを引き連れて飛んできた。

「ケガはなイ⁉」

「……二人とも、来るのおせーよ……」

 真が傷だらけの姿で剣を握り締め、二匹を見た。


「チッ……来たか」

 ブラッドは上空で鎌を担いだまま二人と二匹を見下ろした。

「あんたは……」

 愛は浮かんでいるブラッドを睨んだ。

「八日ぶりだな、女」

 適当な呼び方をするブラッドにイラっとして愛は顔をしかめた。

「あたしはルビーローズよ‼名前ぐらい覚えときなさいよ‼」

「あぁ?トゥルーラブの自覚が無い奴が何言ってんだ」

「はぁ⁉」

「……分からない馬鹿に説明してやる義理もない」

 そう言ってブラッドは持っていた大鎌を消した。

「お前程度の相手ならこいつで十分だな」

 そしてブラッドは右手の黒爪を長く伸ばし、宙を愛に向かって飛び攻撃してきた。

 愛は右手でピュア・ラ・ブレイドを振り、爪を弾き飛ばした。

「‼」

 目を見開くブラッドに、愛は自信に満ちた瞳を向けて笑う。

「シャイニング‼」

 愛が叫ぶと、剣が眩く光った。

 愛は地面を蹴るとブラッドに向けて剣を大きく振った。

「っ‼」

 ブラッドは焦燥の色を浮かべると、すばやく身を引き剣をかわした。

「訓練したルビーローズをなめんなよ‼」

「そうヨそうヨ‼一週間でみるみる成長したんだカラ‼」

 エーラとジェルが茶々のような応援を入れる。

「フン……成程、少しはマシになったようだな。だが」

 ブラッドは右手の傷口から滲み出した血を舐めながら、左手の黒爪を長く伸ばした。

「あいつには及ばねぇんだよっ‼」

 そう言いながら空を蹴り、愛に向かって爪を振りかざした。

 愛は目を見据え、ブラッドの全ての攻撃を剣で防ぎ、最後にみぞおちに真一文字を振った。

「ぐっ⁉」

 愛の光ったままの剣がブラッドの腹を浅く斬り、斬られた部分が白くキラキラと光った。

 ブラッドは愛から距離をとり、再び上空に留まった。


 ジェルは真の顔の前に行き、体を光らせておでこを額にくっつけた。

 真のおでこから体全体に光が行き渡り、負った傷が治癒された。

「サンキュー、ジェル」

 真は立ち上がると剣を握り締め、笑いながらブラッドを睨んだ。

「チッ!」

 ブラッドはこめかみに汗を垂らし、右手を上へかざした。

 漂っている悪霊が具現化し、ブラッドの右手の周りに集まった。

「ブラックブラッド・ダークファントム‼」

 ブラッドが叫ぶと、具現化した闇のリューフが学校中の生徒に憑りつき、操られた生徒たちがゾンビのように校庭中に集まってきた。一度倒れた門脇たちも起き上がり、再び木材を持って真を襲う。

「くっ‼」

 真は剣を使って攻撃を防ぐ。

「ひぃいっ⁉」

 愛は剣を握ったまま顔を青くし、周りを見回す。

「ルビーローズ‼」

 エーラが愛の顔の正面まで飛び、おでこをくっつける。くっついた愛のおでこが光る。

 愛の心の中に、フレーズが思い浮かぶ。

「心に浮かんだ言葉を言え‼」

「トゥルーラブ・シャイニング・アロットフ‼」

 愛の首下についているルビーとピュア・ラ・ブレイドが光り、愛は剣を垂直より少し斜め上に真っ直ぐかかげた。愛を中心に円を描くように光の剣が四重にいくつも現れ、愛は回転した。光の剣が四方八方へ飛び、憑りつかれた生徒たちを貫き、悪霊を浄化した。

 ブラッドは黒に近い紫色の球体のバリアを張り、光を防いでいた。

 真はすばやく空に飛び上がり、トゥルーソードをバリアに打ち付ける。金属が響く音と、鋭い閃光が辺りに飛び散る。

「チッ!」

 ブラッドはバリアを消し、遠くへ飛ぶと、そのまま闇に消えた。

「次はこうはいかねぇからな!」



 愛は呆けたまま剣を地面に付け、立ち尽くしていた。憑りつかれていた生徒たちも、脱力したように地面に座っていた。

「やったな!ルビーローズ!新しい力だ!」

 エーラが愛の近くに飛んできた。

「新しい力……?」

「女神様から授かってきたんだよ。そろそろ必要になるだろうと思ってな」

「そ、そうなんだ……派手な技だね」

 飛んでいた真が地面に降り、愛のそばへ近づく。

「大丈夫か?」

「うん。高嶺くんも、大丈夫?」

「コードネームで呼べっつってんだろ」

 愛は気が付いたように目を開いて頭を掻いた。

「あ、そっか……ごめん。でもこれ、なんか慣れなくて」

 ジェルが三人の所まで寄り、香水のようなものを見せた。

「ジゃあワタシたちは今からこれで後始末するワ」

「後始末⁉」

 愛が驚きながら聞いた。

「リューフに憑りつかれていたことや、トゥルーラブやディグレイドがからんだ記憶を消すことができるノ。これも女神様から今日貰ったのヨ」

 ジェルの言葉を聞くと、真は思い出したようにハッとした。

「……ちょっと俺、保健室に行ってくる」

 そう言うや否や、真は変身を解くと保健室まで走っていった。

「あっ、そうだ、あたしも屋上まで行かなきゃ!」

 愛もそう言い、変身を解除した。

 校舎へ向かおうとすると、そちらの方から見慣れた二人が走ってきた。

『愛―‼』

 二人と二匹を交互に見て、やばっ、と愛が焦ると、

「じゃ、じゃあ俺らは生徒たちに香水かけてくるから!」

「またアトでネ!」

 エーラとジェルは慌てて校庭を飛んで行った。

「愛‼」

 光が心配した顔で愛の両肩をつかんだ。

「ひ、光、菜穂……」

「あれ?今なんか黒いのが飛んで行かなかった?」

 菜穂が上空を見回した。

「と、鳥じゃない?」

 エーラは訳ありのため人の目に見えるが、ジェルは完全な天使のため人に見えない。

「で、愛、今までどこにいたんだよ‼なんか校舎の皆、様子がおかしくて、大変だったんだから‼」

「で、なんか剣の形した変な光が飛んできたと思ったらみんなボーッとなっちゃって」

 愛は何と言っていいか分からず、「そ、そうなんだ」と言うことしかできなかった。

(あ~、ジェル、最初にこの二人に香水してくれたら良かったのになぁ……)

「で⁉高嶺くんのところに行くって、どういうこと⁉」

「高嶺とどういう関係なんだよ!」

 光に肩をがっしりと掴まれて揺さぶられ、愛は軽く目を回した。

(ジェルぅ~、戻ってきてぇ……)


 時計の秒針がゆっくり進む保健室の中、真は丸椅子に座り目の前のベッドに寝ているりょうを静かに見ていた。

 保健室には他に誰も居らず、出入り口のドアも閉まっている。南側の開いた窓から入る風が白いカーテンを揺らしていた。

 りょうの左肩には、多分保健医が手当てをしたのだろう、白い包帯が丁寧に巻かれていた。


「……ん」

 りょうがうめき声を上げた。

「……真?」

 りょうがうっすら目を開けると、真と目が合った。

「……りょう」

「俺、なんでここで寝て……」

 りょうが言い終わらないうちに、真が椅子に座ったまま土下座した。

「すまん‼」

 いきなり土下座されたりょうは訳が分からず、ベッドに寝たまま困惑した顔で真を見た。

「え?ど、どしたんだよ」

「俺がお前の腹を殴ったの、覚えてないか」

 真に言われて、りょうは顔の色が引いた。門脇たちに襲われたことも、思い出したようだ。

「俺の腹を殴ってくれ‼」

 土下座したまま真は大声で言った。

 りょうは先ほどとは別の意味で顔の色が引いた。

「何言ってんだよ。そんなことできるわけねぇだろ。……よく分からないけど、何か事情があったんだろ。顔を上げろよ」

 真は顔を上げた。

「……でも、一発殴られないと俺の気が済まない」

 りょうは困ったように笑うと、ゆっくりと起き上がった。

「勘弁してくれよ。俺こんな体だし、無理だって」

 りょうにどう返せばいいか分からず黙っている真に、りょうは澄んだ瞳を向ける。

「守ってくれたんだろ」

 真はりょうを見た。

「それぐらいわかるよ」

 りょうは目を伏せて笑った。


「ええっとね、だから委員会の関係で……」

「嘘つけ‼そんな感じじゃなかっただろ‼」

「ええ、まさか二人はつきあってるの⁉」

 愛が困り果てていたその時、ジェルが光と菜穂の前に現れ、二人に香水を吹きかけた。

「……あ?」

「あ、あれ……?」

 光は愛の肩から手を放し、菜穂はボーッと宙を見た。

 もちろん二人にはジェルも香水も見えていない。

「あたしら、何してたんだっけ?」

「何で校庭にいるの?」

「ほら、菜穂も光も部活じゃない⁉行かなくていいの?」

 愛は笑いながら二人を回れ右させた。

「そうだっけ?」

「……まあ、いっか」

 そう言って二人はそれぞれの部活へ行った。

「ゴメンね、早く来れなくテ」

 ジェルが言った。

「ううん、いいよ。エーラは?」

「校舎を飛び回ってるワ」

 愛はふと真のことが気になった。



「高嶺くん!」

 愛はジェルと保健室まで赴くと、真に声をかけた。

「あれ?愛」

 ベッドに座っているりょうが愛を見た。

「りょう⁉何でここに、っていうかそのケガどうしたの⁉」

「何か知らないけど門脇にやられて」

 りょうは左肩を見るとそう言った。

「ええ⁉大丈夫⁉」

「はは、愛が心配してくれるなんて嬉しいな」

「するに決まってるでしょ!」

 りょうは左肩を触り痛そうにしつつも笑った。

 真はその様子を見て口元を真一文字に結んだ。

「真クン」

 ジェルが真の顔の近くまで飛び、耳元で囁いた。

「……頼む」

 ジェルは香水を持ってりょうの顔の前まで飛び、おでこに吹きかけた。

「……あれ?」

 りょうはポカンとし、辺りをきょろきょろと見回した。

「俺、何で怪我してんだっけ?」

「ゴールポストにぶつかったんだよ」

 真が気を回して架空の理由を言った。

「あれ?そうだっけ……?」

「ちょっとトイレ行ってくる」

 そう言って真はジェルと保健室を出た。


「……痛い?」

 愛がりょうに尋ねた。

「そりゃそうだろ。……でも俺、肩なんかゴールポストにぶつけたかなぁ。おっかしいな、全然覚えてないんだけど」

「ぶつけたショックで覚えてないんじゃない?」

「マジで?俺頭もぶつけたのかな⁉」

「多分大丈夫だよ」

 愛は眉を下げて笑った。

「何でだよ!全然根拠ないんだけど⁉」

 保健室へ真が帰ってきた。

「りょう、これ貼ってろ」

 そう言って真はりょうの肩に絆創膏を貼った。

「えっ?何これ?包帯の上に絆創膏貼んの?」

「……一種のおまじないだよ。俺のせいで怪我さしたんだし、早く治るようにって」

「え?真のせいじゃないだろ」

「俺がボール受けようとしてお前にぶつかって、そのままゴールポストに肩ぶつけたんだよ」

「えー⁉俺全く覚えてな……痛っ‼」

 真がパン、と絆創膏を貼ったりょうの肩を叩いた。

「これで明日までに治して遊園地行くぞ」

「バカ、治るわけないだろー」

 苦々しく笑うりょうと真剣な顔の真を見て、愛は真も明日を楽しみにしてるんだ、と少し意外に思った。

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