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コードバディ×トゥルーラブ  作者: エレン


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真とりょうの友情 目覚めた新しい力②

 昼食後の昼休み、真は誰もいない中庭で校舎の壁にもたれかかりながらサイダーを飲んでいた。

 中庭の中心には噴水があり、その周りをベンチが四つ並んでいた。

 気候は暖かく、風も穏やかだ。

「よお、真!」

 渡り廊下から声をかけてきたのはりょうだった。りょうは上靴のまま真の近くまで歩いて行った。

 壁のない渡り廊下からは噴水とベンチのある場所までタイルがひかれており、靴に履きかえなくてもそのままベンチまで行けるようになっている。

「りょう」

 真は缶を口から放すと、壁から背を離した。

「なに一人でたそがれてんだよ。もう弁当食ったのか?」

「……ああ」

 りょうは真がもたれていた場所の近くのベンチのそばまで歩いた。

「立ってるのもなんだから座れよ」

 そう言いながらりょうはベンチに腰掛け、真もベンチの西側からまわってりょうの右隣に座った。

「……友達は?」

 りょうは遠慮がちに訊ねた。

「ああ、いるにはいるよ。でもこうやってここにいると落ち着くんだ」

「そうか」

 中庭を暖かい風が吹き抜ける。落ちた新緑の若葉が舞い、風に流れた。

「……なあ、真」

「ん?」

 りょうは腰を落としたまま中庭の噴水を見つめながら喋り、真は再びサイダーの缶を口元に持っていった。

「なんで、サッカーやめたんだ?」

 真は口をつけかけた缶を持つ手を止め、沈黙した。

「……俺さ、真と始めて合宿で会った時、衝撃受けたんだよ。こんな上手い奴がいたのかって。同じ中学のサッカー部のチームメイトとは全然違った。こいつには負けたくない、こいつに勝ちたいって思いながら試合した」

 真は黙ってりょうの話を聞いていた。

「で、偶然同じ高校に入って、驚いたよ。俺、嬉しかった。今度は敵じゃなくて仲間としてサッカーできるんだと思って」

 真は瞳を霞ませて噴水の前の黄緑色の芝生を見ていた。

「――でも、お前はサッカー部には入らなかった」

 りょうはそう言った後、真の方に顔を向けた。

「……何でなんだ?お前の実力なら、プロになるのだって夢じゃない」

 真はりょうの方を見ないまま缶を見つめていた。

「……悪い」

 真は缶を人差し指で押した。パキッ、と小さな音が鳴る。

「……おふくろが病気で……俺がバイトしないと、生計が成り立たないんだ」

 りょうは目を見開いた。

「なんだ‼そういうことなら早く言えよ‼」

 りょうは明朗にそう言うと、バシッと真の背中を強く叩いた。真は驚いてりょうを見る。

「なーんだー!オレ、真がサッカー嫌いになったのかと思ったー!」

 はぁー、と脱力したように笑うりょうを真は何とも言えず見ていた。

「そんなわけねぇよなー!あんなにいきいきとプレーしてたもんなぁー、あー、心配して損したわー」

 ケタケタと陽気に笑うりょうを見て、真は寂しそうに笑った。

「そうか、お袋さんがなあ。それで……。大変だな」

「いや、まあ、なんてことないよ」

 曖昧に言った真の心境には気付かず、りょうはベンチから急に立ち上がった。

「よし!今からサッカーするから、つきあってくれよ!」

「え⁉」

「放課後できないなら昼休みにやろうぜ。校庭行くぞ!」

 そう言って真の腕を掴み立ち上がらせるりょう。真は慌ててサイダーを飲み切るとベンチの近くにあったゴミ箱に缶を投げ入れ、腕を引っ張るりょうについていった。


 そして、校庭へ向かうりょうを、渡り廊下から茶髪と黒髪の二人の男子生徒が気に食わなさそうに見ていた。

「……フン」

 茶髪できつそうなつり目の背の高い男子、門脇湊斗かどわきみなとは見えなくなったりょうのいた方を睨んでいた。

「なに、あいつ、高嶺?」

 黒髪の鼻が尖った男子、坂本航さかもとわたるは茶髪の男子に話しかけた。

「……中学でレギュラーだったか何だか知らねーけど、調子に乗ってんじゃねーよ」

 門脇は渡り廊下の屋根を支えているポールを蹴った。

「……でもあいつ、高校入ってからは部活に入ってなくね?」

「俺が言ってんのは風浜のことだよ‼」

 門脇は苛つきながら坂本に怒鳴った。

「チッ……なんであいつがレギュラーなんだよ‼」

 そう言って門脇はポールを二回強く蹴った。


「へぇ……なるほど」

 二人の様子を上空から黒い影が見ていたのには門脇たちは気付かなかった。



「天園さーん」

 昼食後、授業の復習をしていた愛はクラスメイトの女子数人に話しかけられた。

「ん?」

 愛は顔を上げた。

「朝話してたの聞いたんだけど、風浜くんとファンタジーランド行くってほんと?」

 迫る女子たちに、愛は曖昧に「あはは……」と笑った。

「いいなぁ~」

「天園さんたちだけずるいー」

 そこに、菜穂がつかつかと歩きながらやってきた。

「あっ、藤野さんも行くんでしょ?」

 女子の一人が声をかける。

「そうだけど?」

 菜穂はとぼけた声を出した。

「ずるいよー」

「抜けがけじゃーん」

 女子たちはあからさまにではないが文句を言った。

「だって愛と風浜は幼なじみだし、あたしも中学から一緒だったもん。遊園地行くのなんか普通じゃん」

「えーでも」

「じゃあみんなも今度誘ったら?」

 菜穂の反論に、女子たちは静かになった。

「あんまりうるさく言うと、風浜の写真、撮ってきてあげないよー?」

「えぇっ⁉撮ってきてくれるの⁉」

 菜穂の言葉に、女子たちはどよめいた。

「うるさく言わないなら」

「言わない言わない!」

 やったー、と歓声が起こった。

「一枚五百円ね」

 ええー高いよー、と文句を言う女子たちと菜穂を見て、愛は呆れたように笑った。



 図書館に本を返しに行こうと、教室を出て廊下を歩いていた愛は階段の前で待ち構えていたように現れた三人の女子生徒に呼び止められた。

「天園さん」

 嫉妬のこもった憎々しげな声に、愛は目力を強くした。

 真ん中に立っている黒髪ロングウェーブのきつい目つきをした愛よりスカート丈の短い女子、城ケ崎雅じょうがさきみやび、彼女を取り巻くように両脇のやや後ろに立っているのは茶髪の二人、ツインテールの藤井美緒ふじいみおとショートカットの佐渡舞さわたりまいだ。三人とも愛の隣のクラス、二組の生徒だ。

「……何?」

 愛は本を抱えた手にやや力を込めながら聞いた。

「あなた、高嶺くんと遊びに行くんですって?」

 雅は有名ブランド会社の社長の娘、すなわちお嬢様だ。紺色を基調としたブレザーの襟元のリボンはわざわざ好きなブランドものに発注し、タイピンも高そうなものをわざわざ見せびらかすようにつけてある。

 お嬢様ならそれらしくお嬢様学校行けよ、といつも思うが、そんなことを口に出せばやっかいなことになりかねないので言わない。

「……それが何か」

 面倒臭そうに無表情で答えると、雅は鼻で笑った。

「藤野さんが誘ったらしいけど、あの子も空気読めないわよねぇ。高嶺くんに相手にされるわけないじゃない」

「風浜も一緒だって聞いたけど」

 佐渡舞が冷たい声でそう言い、

「その二人と遊びに行くとか」

 藤井美緒が続け、

「どこまで調子に乗れば気が済むのかしら?」

 雅が最後の台詞を言った。

 めんどくさ、うざいと心の中で言ったあと、本返しに行く時間がなくなるな、もう放課後にしようか、と雅たちから気を逸らし考えていた愛に雅は苛ついた声を出す。

「ちょっと‼聞いてんの⁉」

 愛の服を掴もうとした雅は咄嗟に反応して後ろへ下がった愛を予測できず、少しだけよろめいた。

「……っ!」

 五時間目のチャイムが鳴り、向かいから先生が歩いてきたのを目にした美緒と舞は少しばかり焦りの表情を顔に出した。

「じゅ、授業始まるから」

 そう言って愛は本を持ったまま教室へ戻っていった。

 雅は愛を睨みつけると、舞と美緒を引き連れて自分の教室へ戻った。



「愛、大丈夫だった?」

 五時間目終了時、愛から雅たちのことを聞いた菜穂は心配で尋ねた。

「雅のやつ……あたしがいたらぶっとばしてやったのに」

 光は苛つきながら二組の教室の方向を睨んでいた。

「大丈夫だよ。何もされてないから」

 笑う愛を見て、光は怒ったように声を大きくする。

「そこが甘いんだって!放課後何してくるかわかったもんじゃないよ!今日は一人で校舎をうろついたらだめだ‼」

 なんか彼氏みたい、と菜穂は思ったが言わなかった。

「今日はあたしと帰るぞ。愛を安全に送った後部活に行く」

「男前だなぁ(笑)」

 へらへらと笑う愛を光は呆れながら見た。

「ほんとにこの子は……誰か頼もしい彼氏でもいてくれたらいいんだけど」

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