第四話 真とりょうの友情 目覚めた新しい力①
「おっはよう愛!いよいよ明日はファンタジーランドだね!」
朝の教室で菜穂が眠たそうな愛にハイテンションで話しかけてきた。
「え……ほんとに四人で行くの?」
愛は口もとに手を当てあくびを押さえながら言った。
「もっちろん!風浜に高嶺くんのこと聞いたらオッケーだって言ってたって!」
「あっ、そうなんだ」
真が承諾するのは意外だった。りょうはともかく、菜穂とはあまり話したことがないように思うからだ。愛とは……発展途上、というところだろうか。
「愛―!」
教室の廊下側から声がした。見ると、入口に風浜りょうが立っていた。教室に数人いる女子の一部が少しざわめく。
「あっ、りょう」
「明日はよろしくな!つーか、愛とどっかに出かけるの久しぶりだな!」
キラキラと周りに効果が飛びそうな顔を向けられ、愛は若干引きながら返事をした。
「そ、そうだね」
「俺、最近遊園地行ってなかったから超楽しみでさー」
「私も私もー‼」
菜穂が同調する。
「おーおー楽しそうだな二人とも」
席に座っていた光が愛たちの方へ近づき、話しかける。
『イェーイ‼』
菜穂とりょうが両手でハイタッチをする。
「……っていうかなんで二人ともそんなテンション高いわけ⁉」
愛が困惑しながら二人に尋ねる。
「最近憂鬱な事件ばっかりだし、こういう時こそアゲて楽しまなきゃ!」
「そういうことだぜ☆」
りょうはノりながらギターを持った二人組の芸人みたいな口調で言った。
「なごむなー」
絶句している愛をよそに、光は机によりかかりながら缶コーラを開けた。
――人間界と地獄界の狭間
堕落組織「ディグレイド」支部――
黒曜石のようなものでできたでこぼこの壁、紫色に光るタイル、バーのようなカウンターのある百六十平方メートルほどの空間に、彼らはいた。
部屋には北と南にそれぞれ扉のない出入り口があり、それぞれ暗い通路へと続いている。部屋全体に、「ぐごぉお」と品のない中年男のようないびきが響いていた。
左肩にタトゥーのある黒髪の小柄な男は、床にあぐらをかき、五センチほど伸ばした自身の黒い爪をヤスリで磨いていた。
赤いドレスを着た紫色の髪の女は、カウンターのイスに腰かけて赤ワインを飲んでいた。
「……チッ」
ブラッドは爪を磨く手を止めると北側の通路を睨んだ。
「……なによ?」
アナディアナはカウンター席からじろっとブラッドを見た。
「……別に。あいつはまだ部屋から出てこねぇのかよ」
「ああ、まだ報告が済んでないとか言って上に行ったっきりね」
ぐごぉ、ぐごぉおと続いてたいびきが「ぐごおおお」と大きくなった。
「うるせぇ‼」
ブラッドは床に転がっていた金属製のドクロを離れた所で寝ている太った男、グラッディに投げつけた。見た目より軽かったのか、頭に当たるとポコンと拍子抜けな音がした。
「……んあ?」
グラッディは間抜けな声を出し目を覚ました。
「……んだよ、気持ち良く寝てたってのによぉ」
グラッディはむっくりと起き上がると周りを見回した。
「お前のいびきは耳ざわり通り越して害悪なんだよ。寝るなら別の部屋で寝ろ」
「あぁ⁉なんだとてめぇ、もういっぺん言ってみろ‼」
ディグレイドのアジトは意外に狭い。一階は、入り口付近の部屋と、今三人がいる場所と、もう一部屋しかない。「もう一部屋」はディグレイドのリーダーが用意したVIPルームで、ここにいる三人は立ち入り禁止だ。二階には二部屋あるが、一つは「ボス」との通信部屋、もう一つは「リーダー」の部屋で三人は立ち入り禁止なのだ。
「ったく、あいつばっかり優遇されすぎなんだよ‼」
グラッディはブラッドとの罵り合いの末、ドクロを壁に強く投げつけると憤慨した。
「ボスのお気に入りだしね」
アナディアナは口につけたグラスをワインが半分残ったままテーブルに置いた。
「あーもううぜー」
ブラッドは立ち上がると、壁に立てかけていた大鎌を手に取った。
「ちょっと、どこ行くの?」
「あいつの指示を待ってたんじゃことが進展しねぇ。地上に行ってくる」
「……いいの?勝手なことして」
アナディアナは影のある伏せ目で言った。
「あいつが戻ってきたらお前が言っとけ」
そう言い残すとブラッドは鎌を担ぎ、一階へ続く南の出入り口へ消えていった。




