【P8】知性の囁き──“在るものと、語るもの”
回廊は、静寂ではなく“思念”に満ちていた。
あなたの足音は吸い込まれ、天井も見えぬほどに黒く沈んだ。
淡い光を放つ鉱石の模様が、ある一定の周期で瞬いた。それはまるで、誰かの
“心音”のようでもあった。
すると、唐突にそれは始まる。
「接続中──識別子:『記憶不定』/暫定IDを付与──」
声ではない。けれど確かに“語られて”いた。
そしてあなたの頭に、ビジョンが流れ込んでくる。
遠い星を思わせる空。石で編まれた都市。“音”を視る民。
その文明は何者かにより抹消された。だが、その“精神だけ”がここに眠り、語る者を待っていた。
「ここは、古代集積知“エン=クルス”の中枢である。
来訪者よ、問う:個としての“記憶”と群としての“記録”、いずれを選ぶか?」
これは、出題だ。記録として生きるか、記憶として消えるか。
その選択により、回廊の先は変化するのだ。
あなたは短剣を見た。刃に映るのは、まだ輪郭の定まらぬ自分の姿。
森が問うのではない。今、あなたが自らに問われているのだ。
【選択】
- 「記憶」=人として選択し、回廊の先へ進む → [P13へ]
- 「記録」=知性体との同化を受け入れる → [P22へ]