【P4】石碑への導き──“言葉なき記録”
森を抜けた先に、空間がぽっかりと開いていた。霧が晴れ、真上から光が差し
込む。まるでそこだけが天に選ばれたかのように静謐な一角だった。
円形の広場の中央に、それはあった。
高さは背の丈ほど、表面は苔に覆われ、周囲には何本かの壊れた柱が半ば土に
沈んでいる。古代の石碑。表面には読み取れぬ文字が彫られ、かすかに淡く脈動
しているようにも見えた。
あなたが近づこうとしたそのとき、地面に埋もれていた円形の装置がせり
上がった。中心には、手のひらをぴたりと当てられそうな窪みがある。
“何かを起動させるのか……?”
脳裏に浮かんだその思考に呼応するように、腰の短剣が微かに震えた。柄に
刻まれたルーン文字が淡く輝き、石碑の面にその模様が浮かび上がる。
「ここは“記録の石”だよ」
どこからともなく響いた声。あなたは一瞬、ルリかと思ったが、違った。
それはもっと感情の薄い、冷ややかな語り口。地そのものが喋っているかのような
声音だった。
「手をかざせば、君の記憶は一部戻るだろう。ただし、代償として“現在”の一部を支払うことになる」
奇妙な提案だった。記憶と引き換えに何かを手放す――いったい、何が奪われるのか? しかし躊躇している間にも、石碑の脈動は次第に強まり、今にも反応を始めそうだった。
【選択】
- 石碑に手をかざして記憶の扉を開く → [P7へ]
- 危険を感じ、その場を離れる → [P5へ]