【P1】目覚め──“森は記憶を喰らう”
その森には名前がない。かつて、神官たちは“神座の狭間”と呼び、放浪の民は
“灰声の森”と呼んだという。だが今では、誰も正式な名を知らない。なぜなら、
この森に足を踏み入れた者の多くは、二度と戻らないからだ。
あなたは、湿った苔と冷たい根の感触で目を覚ました。見上げれば、天空を覆う枝葉が交錯し、陽の光すら届かない。それでいて森は妙に明るく、空気の粒子が
淡く青白く輝いていた。
記憶が――空白だった。名前、家、言葉すら、なにひとつ自信が持てない。
ただ、胸の奥に小さな種のような感情――「ここに来なければならなかった」という確信だけが、焼き付いたように残っていた。
起き上がると、膝の上に一枚の羊皮紙があった。地図……なのか、それは? 一見すると意味のない線がぐねぐねと走っているだけだが、その左上には装飾的な文字でこう記されていた:
「記憶なき旅人よ、汝が心の形を示せ。森は試練とともに、汝を映し返すだろう」
腰には、見覚えのない短剣が一本。柄の部分には小さなルーンのような文字が彫られている。刃は古びていながら鋭く、誰かの意志が込められているようにも感じられた。
周囲には音がない。風も鳥も、虫さえも。けれど静寂の中に、耳にはかすかな違和感が届いていた。
どこかから、水の流れる音が聞こえる。そしてその逆方向では、低く茂みが揺れる音。何者かの気配――それは動物か、それとも人か、あるいは……
あなたは立ち上がり、決断する。
この森は、ただの自然ではない。ここには「意思」がある。
【選択】
- 音のした茂みに近づく → [P2へ]
- 川の音を頼りに森の奥へ進む → [P3へ]
一部つながりやページ番号の間違い、選択肢の表示に関わる部分をリテイクした以外、ほぼ出力されたものをそのまま使っています。