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紙飛行機のラブレター 〜わたしの思い出〜

作者: 梅花かえで

学生時代のわたしは、けして目立つタイプではなかったけど、ある男の子に恋をして、毎日がキラキラと眩しいものになった。大人になった今でも、甘く懐かしい当時のことを時々思い出す。そんなある日の物語。


 毎年この季節になると思い出すことがある。今から20年以上前になるだろうか。

 当時高校2年生だった私は同じクラスの男の子に恋をしていた。笑顔が優しい少しおとなしめの男の子。彼はよくゲームやアニメの話を友だちと楽しそうに語っていて、その時の笑顔にハートを射抜かれてしまったのだ。

気が付けば彼の姿を追い、話すきっかけを探す日々。彼に「おはよう」と言うために、家を10分早く出るようにもした。同じタイミングで登校し、靴箱前で「おはよう!」と声を掛けそのまま一緒に教室へ向かう。至福の時間だ。昨日観たアニメの話やおすすめのマンガやゲームの話など話題は尽きないが、教室までの道のりがとても短く感じたのを覚えている。そして季節がひとつ変わる頃には、おすすめの本を貸し借りするようになり、互いに感想を話し合うようになっていた。

 ある日席替えで彼の隣の席になった。人生全ての運を使ってでも近くの席になりたいと、全力で神様にお願いをした2日後のことだった。

そういえば以前読んだ本に、

『好きな子の隣の席になった主人公は、授業中に紙飛行機を折り、

“好きです!付き合って下さい”

と書いて好きな子に飛ばす…』

なんてシーンがあったなぁなんて思い出し、

紙飛行機で告白……してみようかな……

なんて頭を悩ませたものだ。結論がでないまま幾日が過ぎた日の午後、いつも通り授業を受けていると隣の席から紙飛行機が飛んできた。驚いて隣を見ると彼が口パクで、

「あ・け・て・」

と言った。震える手で広げてみると

“放課後話がある。教室で待っていて欲しい”

私は小さく頷き、その後の授業内容は全く頭に入ってこなかった。

 放課後、教室から人がいなくなると、彼が声をかけてきた。

「待っていてくれてありがとう。

あの……えっと………」

暫しの沈黙のあと、

「好きです!付き合ってください!!」

彼が勇気を出して気持ちを伝えてくれたのに、私はコクリと頷くので精一杯だった。

初めて彼氏ができた時の淡い思い出。


 「ママー!」

娘の呼ぶ声に振り向くと夫と手を繋いてこちらに歩いてくる娘の姿があった。夫から、

「どうしたの?なにかあった?」

と問われ、

「ちょっとね、昔を思い出してたの。」

と答える。

娘の反対側の手を繋ぎ、歩きながら夫に伝えた。

「あの日、あなたが勇気を出してくれたから、今の幸せがあるんだね。ありがとう。」

すると夫は、

「本当は、当時読んだ本のシーンを真似しようと思ったけど、気持ちは直接伝えたかったから…」

と照れくさそうに笑った。昔から変わらない私の大好きな笑顔だった。

好きな人がいるだけで、毎日が特別な1日になり、甘酸っぱく日常が彩られる。恋人から夫婦になった今でもその気持ちを大切にしたいものです。

彼目線のストーリー、

『紙飛行機のラブレター 〜ぼくの思い出〜』

も一読いただけると嬉しいです。

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