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第五話/壁の代償

ギルドマスターの執務室へ通された二人は、言われるままにソファに腰掛ける。

机を挟んで向かい合ったギルドマスターが口を開く。

「改めて、私がギルドマスターのゲンオーだ、よろしく」

「あ、め、メイと申します」

「…シュテンだ」

メイに倣って名乗ると、ゲンオーは「うむ」と頷いた。

「なあシュテンよ、さっきのアレ、どうやったんだ?」

ゲンオーは体を乗りだしてそう切り出した。

さっきの、とは壁の穴の事だろうか。

「どうって…ちょっと力込めてぶん殴っただけだ」

「ほうほうほう、ちょっとか。君はその気になればこの建物ごと吹きとばせそうだな」

ゲンオーはデカい図体に似合わない少年のような眼差しでそう返した。

「それ程の力があれば問題ないだろう」

「あァ?」

「ケンム、入ってきなさい」

ゲンオーの合図で扉が開くと、細身の男が入ってきた。

俯いている上にフードを被っており、顔はよく見えない。

「彼はケンム、この街を拠点に活動する冒険者だ。昨日、彼はパーティメンバーと共に森へ入り、一人で帰ってきた」

「…ん?」

シュテンは話に違和感を覚える。

「おい、数が変わってるぞ」

「ああそうだ。彼の相棒はまだ帰ってきてない」

「そ、それって…」

メイが口を挟むと、ケンムはいきなり大きな声を出した。

「生きてるよッ!」

その表情にメイは口に手を遣る。

「すみません、無神経でした」

「いや、いいんだ…状況からみて、そう思われても仕方がない」

「…何があったのです?」

メイは続けてそう尋ねた。

「森を、順調に進んでいたんだ…でも、いきなり、緑尾龍が…」

「緑尾龍!?」

メイが思わず跳ねる。

「ああ、低級龍種の緑尾龍だ。低級とはいえ龍種をたった二人のパーティで相手するのは無謀に当たるな。彼らはそこそこ長く冒険者をしているが、いわゆる中堅冒険者だ、高ランクという訳では無い」

ゲンオーは冷静にそう返す。

「龍、ねェ」

当のシュテンは、この世界にはそんなものも居るのかと思いながら聞いていた。

数多の妖怪を下してきた酒呑童子も、龍は見た事がない。

「俺たちは、逃げているうちにはぐれてしまって…帰ってくれば合流出来ると思ったんだけど…」

ケンムは消え入る声でそう告げると、俯いたまま黙り込んでしまう。

「…そこでだ、君たち3人に取り残されたケンムの相棒を救出してきて欲しい」

「え゛っ」

1番に反応したのはメイだった。

「正気ですか!?相手は龍種ですよ!?こんな少人数で…」

「メイ嬢、君の相方は闘技場の強化壁に大穴を開けてみせた。君も見込んでいるのでは無いのか?」

「うっ…」

「報酬もたんまり出そう」

シュテンは頭の中で今の会話を整理する。

要するに、龍を狩ればいいらしい。

「…シュテン殿、どうします?」

「ん?あァ、いいんじゃねェの?」

「シュテン殿がそう言うのであれば…分かりました、やりましょう」

覚悟を決めるメイと、快諾を喜ぶゲンオーと、ひたすら頭を下げるケンムを見て、シュテンは悪くない気分だった。

「こういうの、なんか人間っぽいかもなァ」

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