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第八十八話 な・ぜ・あ・お・る⁉

 さて、菜穂さんとシマナツとのわだかまりも


 ──ついでに俺との間のわだかまりも──


 解けて、なんかほっこりした気分になってた。


 久しぶりに家族旅行にいったみたいな雰囲気?

 みんなで歌とか歌っちゃったりしてさ。


 家族旅行したことないからわからんけど。


 だからっていうか、油断してたなあ。


 家帰ったらさ、いるんだもん、白石。

 村瀬とカリンも一緒。


 空気が一瞬で凍り付くっていうか、口の上側に舌が張り付く。


 今さらなんだけど初めてだな、白石と菜穂さんが会うの。

 明らかに白石が気圧されてるけど。


「な、なんだー、来てたのかお前らー、でも教師の家に勝手に

入るのはよくないぞー」


「おかえりなさい、せんせー。

楽しかった、学校サボってのデートは?」


 あらあらカレーのいい匂い。

 村瀬とカリンは皿とスプーンを前に事態の推移を見守る。


 ていうか楽しんでるだろ、お前ら?

 目が笑ってるんだよ。


「村瀬、白石をからかうな。誤解だ、デートなんかじゃない」


「そうだね、デートじゃない。両親に会ってもらったの。二人とも、

彼を気に入ってくれたわ。子供のころの話とかで盛り上がって、

つい長居しちゃった」


 言いながら俺と腕を組む菜穂さん。


 な・ぜ・あ・お・る⁉


 なに考えてんの? からかうとかいうレベルじゃない。

 嘘が一個も入ってないのも悪質。


「わ、私の親とも会うよ…………三者面談で」


「ふふ、声ちっさいのかわい。三者面談だってさ」


「子ども扱いすんな」


「それ子供しか言わない。あ、初めましてだよね?

私、七海菜穂。いつも彼にご飯作ってくれてありがとね。

でもぉ~、子供が立場ある人の家に勝手に出入りするのってよくないわ。

迷惑かけてるの……わかってるんだよね?」


 な・ぜ・あ・お・る⁉


 村瀬、カリン、手に汗握って観戦してないで止めろ。


「し、白石? お玉は下ろしなさい、お玉は。危ないからな。

菜穂さんも、いたずらにしちゃ度が過ぎてる」


「……菜穂さん? 私のことは白石なのに?」


「ええ~~、コーイチ君、付き合ってないって言ったじゃない。

付き合う気もないって」


「はあ? なにこいつ? ババアがぶってんじゃねーぞ。

確かに私とはまだ付き合ってないけど、だからって

あんたとせんせーが付き合うとかねーから」


 外野! 無責任な歓声をあげるな。


 菜穂さん、目を細めて白石を見下ろすのヤバい。

 中盤で暴走して身内を殺しちゃう女幹部の目だ。


 せっかく作った敵キャラ間引くとか、開発陣の苦労が

 伺えるイベントだよね。


 苦労が……


「あのさー、白石ちゃん? コーイチ君と私は大人のお付き合いを

してるの。仕事でもプライベートでもお互い支え合ってる。

彼が優しいから勘違いしちゃったかな?

あんた、彼から見たら女じゃないのよ」


 白石が黙って右手の人差し指を菜穂さんに向ける。

 そ、それはダメ! マジでダメ!


 間に入るの、何気に命がけ。


「か、かかカレー食べよ? みんなで、仲良く。

わあ~~、キャンプみたいじゃん」


「まだご飯炊けてない。あと十分。蒸らしで十分」


「じゃあ、お茶淹れるよ。あっまいチャイとかいいよね。

気分がほぐれる。ほら、白石も菜穂さんも座って」


 俺、めっちゃ声が裏返ってる。


 だって怖いんだもん、女のケンカ。


 睨み合ってる二人の背景がぐにゃあってなるやつあるじゃん?

 あれ、なってるなってる。


 いやそもそも、なんで菜穂さんケンカ売った?


 お互いに目を逸らさないまま座った二人の間に、

 とりあえずシマナツ置いといた。


 何とかしてくれ。


「ちょ……アホ、無理に決まってんでしょ。

菜穂ってひとに取られそうになると急に執着すんのよ」


「そういうこと早く言えよ」


「言ったらつまんなくなるでしょーが」


 村瀬とカリン、もう笑えよ。

 我慢しすぎてテーブルかたかた震えてるんだが?


 米が早く炊けてほしいなんて祈ったの生まれて初めて。

 さっさとカレー食ってみんな帰れ。


「白石ちゃんさあ、けっこうモテるでしょ。見ればわかるよ、

だってレベル高いもん」


「はあ? モテないよ、せんせーの前でヘンなこと言わないでよ」


「いやモテるよ、こないだも告られてたじゃん。

後輩の、あのほら、新しくサッカー部のキャプテンになった……」


「なんですかそれ? 初耳です。指導の必要がありますね」


「村瀬の指導はシャレになんないからやめて。

あれは断ったんだからノーカンでしょ、モテてない」


「なんで付き合わなかったの?」


「そんなのせんせーがいるからに決まってるでしょ」


「でもコーイチ君とは付き合ってないよね? 彼も誰とも

付き合う気はないって言ってるし。試しにその後輩君と

付き合ってみればよかったのに」


「あ、あたしもそれちょっと思った」


「カリン! あんたどっちの味方よ?」


「だって見た目だけでも向こうがずっとイケメンじゃん。

あれに比べたらセナコーなんてただのゲーム好きのおじさんだよ?

眠たそうな顔した秋田犬だよ?」


「か、かわええ……。俺ってそんな可愛い系?」


「そんなわけないでしょう、調子に乗らないで。

でも先生、見てください。サリちゃん、そうかもって顔してる。

親友の口から菜穂さんの意見を語らせ、有利に議論を展開する。

これが菜穂さんの能力!」


「実況すんな。そうかもなんて思ってないよ。

せんせーを誰かと比べたりしないし。せんせーはジャストドゥイット」


「……オンリーワンを強調したかったんだな」


「サリの英語テストの解答はもはやネタだもんな」


「でもよくわかりましたね、先生。愛?」


「愛! これ勝った! じゃ七海さん、帰っていいよ」


「カレーぐらい食わせろ。……じゃなくて、くそ、

なななッズみたいなノリ、懐かしいな。あのねえ、白石ちゃん

……聞けよ。白石ちゃんは比べないって言ったけど、

私は比べるよ? コーイチ君を今まで付き合ったのとさ」


「比べないとせんせーの良さがわかんないんだ。ぷぷ、ザコ」


「そう、私は恋して舞い上がってる白石ちゃんとは違う。

冷静に、経験から学んだうえでコーイチ君が最高だって思う」


「つっても、菜穂が付き合った男ってみんなろくでもないし。

学校の先生で勤務態度が真面目ってだけで満点だよね」


 マッハでシマナツ引っくり返された。

 ついに最初の犠牲者が。


「わかる? あなたと私の違い。あなたのはたんなる思い込みで、

私のは結論なの。もっと言うとね、あなたは自分のことだけ考えてる。

そうでなかったら、ここにいるわけない」


 あれ? 白石が沈んでる。撃沈?


 なんか涙目で助けを求めるように俺を見て……


 あ! そうか、俺が言ったんだ。

 家で会うのはやめようって。よくないって。


 でもここで白石をフォローするといつでも家に来ていいって

 許可を与えるようなもの。


 どうする?


 って悩んでる時間がすでに白石を追い込んでる。

 村瀬とカリンがガチギレしてる。


 ごまかしの効かない空気に俺自身が泣きそうになってると、

 菜穂さんのスマホが着信。


 なんだか聞き覚えがあるな、この着信音。


「おっと、シュウちゃんからだ。外で話してくるから、私のことは

気にしないで食べてて。それと、コーイチ君、ゴメン。

泣かせる気はなかったの」


 勝ち誇った笑顔で出て行く菜穂さんを、白石はずっと睨んでは

 いるものの、やっぱり泣いてるよなあ。


 言い返せないのが悔しいんだろう。

 白石も、俺の家に来ることをダメなことだって思ってたんだ。


 でも来て、夕飯とか弁当とか作ってくれてたんだ。


「すまん、俺もちょっと外で菜穂さんと話してくる」


「はあ⁉ セナコー、てめ、サリがこんなときに──」


「いいよカリン、せんせーを責めないで。あとシマナツ、

大丈夫? 痛くなかった?」


「ん、だいじょぶ。白石ちゃんは優しいね。だからじゃないけど、

菜穂の言ってたことは半分くらい菜穂にも当てはまるからね」


「サンキュー、シマナツ」


 ほんとにサンキューだ。

 俺は白石をカリンたちに任せて菜穂さんを追いかける。


 さすがにこれはなんていうか……やりすぎだ。

 一回りも年下相手への態度じゃない。


 ここは一言、言わせてもらう。

読んでいただき、ありがとうございます。

まだまだ手探りで執筆中です。

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