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第百一話 3Pって三人でポケモンで対戦するって意味

 やっとで家に戻ったら、今度は白石に捕まった。


 泣きながら俺に抱きついてきて、振りほどくわけにもいかず、

 俺はアホみたいにずっとバンザイしてる。


 だって俺のほうから触ったら犯罪じゃない?


 シュウちゃんは軽くため息ついて無視。


 カリンは俺の顔見てホッとして、でも白石については温かみのある

 微笑みで見守ってる。


 トサカは顔さえ見せない。


 菜穂さんだけが腕組んで俺と白石をじっと見つめてる。


 ……誰か白石を引き離して?


「なあ白石、そんな心配することないだろ? ちょっと警察の人と

話をしてきただけだ。別に逮捕されたわけじゃない」


「だって……だって……」


 みぞおちに頭グリグリグリ。


 これ痛いだけだよな。

 愛があれば痛くないのか? 俺には愛がないのか?


「フェアウエルのときみたいになってたらどうしようって、

今度こそせんせー死んじゃうんじゃないかって怖くて……」


「そっか……そうだよな。すまん、もうあんなことにはならない」


 白石にとっては忘れることなんかできないだろう。


 一生消えない傷を負ったんだ。

 心にも身体にも。


 教師として、側にいられる大人として、きちんとケアしていかないと……


「ねえ、白石ちゃん、もういいんじゃない? 離れなよ」


 菜穂さんの無慈悲な一撃。

 ……大人。


 あれ? 今、白石チラッと菜穂さん見た?


 そんでこれ見よがしに頭グリグリグリ。

 ま、まさか抱きつくとこから演技だったのか……。


「それ痛いよ。おっさんはだいたい胃か腸が弱ってるから死ぬ」


「……うん、ごめん」


 痛みを訴えたら離れてくれた。助かった。


 けど、目元を拭った動きは演技じゃない。全部が演技なわけない。

 怖いのは本当なんだ。


 無意識に白石の頭を撫でてた。


 女の子の髪に触るなんてまずギルティ。

 なのに白石の嬉しそうな顔といったら……


 異世界で獲得したスキルでこれが最強かもしれん。


 でも、菜穂さんの怒り狂った目の色といったら……

 なんで強スキルに自傷ダメージつけるかな。


「あんたら、3Pしてないでこっちに来るっスよ。シマナツが

フェイクニュースのたたき台、作ってくれたっス」


 「マジかよ、早いな。あ、白石、

3Pって三人でポケモンで対戦するって意味だからな」


「せんせーのそういうとこ、ときどきマジでムカつく」


「私は好きだな、コーイチ君のそういうとこ。

子供には大人の優しさが伝わらないんだよ、子供には」


 想像できなかったな。

 左右で別々の女の子と腕を組んで歩く日が来るなんて。


 そしてそれがこんなにもしんどいものだなんて。

 胃がしくしくするのってなんだっけ?


 ……いや、いい。知りたくない。


「うっそ、これ本物じゃないの? 相変わらず腹立つ顔してるわ~。

喋りかたも表情も、既存の映像から学習してきたってんじゃなく、

今日の関谷さんって感じ。シマナツが動かしてるの?」


「今はね。でもすぐに自分で喋れるようになるよ」


「天才だな……いや悪魔か」


「お、セナコー久しぶり。元気……じゃない顔してるね?」


「はあ、ちょっと人間関係で悩んでまして……」


「ふうん、そういう場合はリセットするのもアリだよ?」


「ですかねぇ。リセット押しながら電源切っちゃいたい気分です」


「でも、それはあなたの生活に新しい変化が起きてるってことでもあるの。

まずは新しい関係を一度、整理してみて」


「手伝ってもらえる?」


「いつでも」


「ね、せんせー、めっちゃシマナツに依存してる人みたいだよ?」


「コーイチ君、シマナツにAIみたいなことさせないでよ。

アホになっちゃうでしょ。シマナツ、どう? 動画の作成には

どれくらいかかりそう?」


「半日かな。少なくともこの子が自分を関谷さんだって思うまで」


「ねえ、せんせー」


「ん? どした? 詳しいことは俺にもわからんぞ」


「この人、関谷さん? ニュースになってる人だよね?

なんだか、ひどい殺され方したって……」


「な、なんだと? 白石ってニュース見るのか⁉」


「あ、バカにした。ま、せんせーと付き合ってからだけどね。

なんていうか、大人のたしなみ? でさ、この人がなんで

シーマとかシマナツに関係あるの? もしかして警察にも

この人のことで呼ばれたの?」


「その前に俺たち付き合ってる?」


「話を逸らさないで」


 白石に詰められてる。


 おかしいな、生徒の成長は嬉しいはずなんだけど、

 その猜疑心の塊のような顔を見ていると素直に喜べないぞ。


 どうしよう……今後のことを考えると全部を話すわけにもいかない。


 菜穂さんをチラ見。


 こっち見んなって目で見返された。

 確かに、やましいことがあるみたいだもんな。


「あのさ、セナコーが無事戻って来たんだし、そろそろ焼肉行かない?

今んとこ私たちにできることないっしょ」


「そっスね。動画できたら編集とかで手伝ってもらうかもっス。

今のうちに腹ごしらえが正解かも。先生はどうします?」


「俺の分もおごり?」


「んなわけないっス。女子高生三人なんて無限に食うんスよ?」


「じゃ、俺はいい。あとでコンビニで弁当でも──」


「ダメ! 私が作る。せんせーの胃袋は私のなんだから」


「やたら怖い言い方するな。村瀬はどうすんだ?」


「連絡しといた。しばらく引きこもってなんかしてたから、

来るかどうかわかんないけど」


 白石とカリンは車のキー持ったシュウちゃんに

 幼稚園児みたいについていく。


 焼肉パワー、恐るべし。


 忘れ物したのか、白石が戻ってきて突然のハグ。

 本当に子供みたいな、お母さんに抱きつくみたいな。


「せんせー、危ないことはしないでね」


 そのまま上目遣いで見られて、俺は無言でうなずく。

 こういうの口に出して言うより拘束力が強い気がする。


 みんなが出かけてしまうと、菜穂さんが疲れたため息をつく。


「カリン師は気が利くね。言いたくないことがあるって雰囲気、

しっかり感じ取ってくれた」


「え? あいつが?」


「しっかりしろ、先生。生徒の成長を見過ごしてるよ」


「そういうシマナツはどうなんだよ、守護天使の調子は?」


「ん~~~、なんだか四六時中、ずっと頭の中で誰かが喋ってる」


「それって大丈夫なんか?」


「人間だったら病気だね」


「ま、守護天使はウイルスみたいなものだからね。もし、過剰な負荷や

誤作動を感じたら言って。すぐに停止させるから」


「むしろ調子いいよ? 関谷さんのフェイクもすんなり作れたし」


「うん、これは想像以上の出来。関谷さんが亡くなったことで、

このフェイク動画の与える影響は間違いなく大きくなる。

もちろん批判もね」


「亡くなったことで……ね」


「うん……ごめん」


 菜穂さんはそっとシマナツに手を置く。


 シマナツは生きてるけど、シマナツのもとになった夏実さんは

 だいぶ前に亡くなってる。


 シマナツにはどこまで夏実さんの記憶があるのかわからない。


 でも、少なくとも彼女は自分を夏実さんだと思い、

 自分が死んだことを知っている。


 その彼女に、死者のフェイク動画を作らせようとしてる。


 どっちが悪魔だ?


「動画の内容はどうする? シンプルにシーマの危険性を主張するか?

でもそれだと、群道君やシマナツのことも話さなきゃいけない」


「群道君のことは隠す気はないよ。ただ、ストレートにいくと批判は

シマナツと私に集中する。シーマの有用性を際立たせてしまうかもしれない」


「プレゼンのときの杏奈は菜穂でさえ気づかないくらいのクオリティだった。

あれはアバターというよりデジタルダブル。あれをアバターとして提供するのは、

ユーザーに無許可で電子的な分身を作るようなもの」


「それを訴えれば警鐘にはなるだろ」


「弱い。人権侵害だと訴えても裁判には長い時間がかかる。

その間は提供を停止させるくらいの証拠となるデータがほしい」


「群道君の自殺未遂は?」


「あれはシーマじゃなくて私」


 待て……待て待て、頭の中で何か繋がろうとしてる。

 ひらめきシステムだよ、頭の上に電球出るやつ。


 群道君だ……鍵は群道君……。


「群道君は、シマナツの中に何かを見たんだよな?」


「……そして自殺未遂」


「杏奈さんが群道君の家を訪ねて、何かのデータを持ち去った……」


 俺と菜穂さんは顔を見合わせる。


「そうだよ、コーイチ君! 群道君が見たものがシーマの中にも

あるって証明できれば──」


「提供を停止させられる」


「おおー、なんか二人の共同作業、見ちゃった」


「白石ちゃんに自慢しよ」


「言わんでいい。おいシマナツ、お前はイヤらしい顔をするな」


 菜穂さんはぶつぶつと呟きながら部屋の中を歩き回ってる。

 いわゆる天才ムーブ。


 やっぱり菜穂さんって天才なんだ……。


 なあエリン様、

 俺はこういう人をこそ、向こうに呼んだほうがいいと思うぜ?

読んでいただき、ありがとうございます。

まだまだ手探りで執筆中です。

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