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第百話 どのルートもバッド・エンドっぽい展開

 今さらながら思い出した。


 関谷さん宅で杏奈さんと群道君らしき二人が逃げて、

 そのときには通報済みだったんだよな。


 それで警察が来るまでの間に外に出ようとして、腕を怪我した

 菜穂さんを抱えたんだ。


 はい、そのときです。


 邪魔だなって思ってグローブ外しました。

 何も考えてませんでした。


 まったく、これだから素人は……。


「いや、それを持ってたのにはわけがありまして……」


「やっぱりこれ、瀬名さんが持ち込んだんですね」


「あ……」


 しまった。そういや俺が装備してたなんてわかんないはずだ。

 カマかけられたってやつ?


 ドラマとかじゃ引っかかるやつアホだなって思ってた。


 俺がアホだった。


 あれ~~、これわざと黙ってたって流れになってない?

 不利な証拠ってやつ?


「瀬名さん、あなた、関谷さんの殺害に関わっていませんか?」


「はあ⁉ ないない、俺……私たちは関谷さんの力を借りたかった。

必要な人だったんですよ」


「これを持っていた説明になっていませんね」


「そっちこそ、これを持ってたってだけで関谷さんを殺害したと

疑う理由にはならないでしょ」


 お、ちょっと黙った。反論、効いた?

 やっぱりどんなときも冷静さを失ってはいかんな。


「仰る通りです。ただね、瀬名さん。私たちは理由があるから

聞いてるんです。関谷さんを殺害した凶器は発見されてますが、

検証の結果、それであんなふうに頭部を損壊できないんです。

熊とか、そのくらいの力がないとね」


「でも私は実際に見たんです、関谷さんの部屋に──」


「二人の男女がいた、と。しかし、周辺の防犯カメラからも、

近隣住人の証言からも、そういった二人がいたという情報は

得られていません。今のところ、関谷さんの部屋にいた二人の男女、

というのはあなた方だけなんです」


「だとしても、私にだって熊みたいな力はない」


「そうでしょうか? 我々が思い出したのは瀬名さんの自宅で

起きた暴行の件です。あの現場でも同じように常人離れした

破壊の痕跡が見つかっています」


「それは私じゃありません。斎藤先生は筋トレが趣味でしたし、

あのときは普通の心理状態じゃなかった。

警察の方がそう仰っていませんでしたか?」


「瀬名さん、落ち着いて」


「落ち着いてますよ」


 もしかして取り乱してんのか、俺?

 いや、そういうふうに思わせようとしてるだけだ。


 そっと差し出してくれた水は頂くけども……。


「どうやって? は後回しでもいい。問題は誰が? です。

二つの似通った特異な状況に、一人の人物が関わっている。

あなたですよ、瀬名さん。これを偶然と片づけるわけにはいかない。

ですから、こうして話を聞かせてもらってるんです」


 これ結構、譲歩してくれてる感じか?

 本当に俺が関谷さんを殺したとは考えてない?


 いや、そんなに優しい顔はしてないぞ。


 向こうの世界で渡り合ってきたサージ……ティルダ王宮の文官。

 あれみたいな、本音をがっちり隠した顔してる。


「私に言えることは何も変わりませんよ。

関谷さんに危害を加える意図は一切なかった。そのグローブはただの

護身用です。今あなたが仰ったように、私は以前、暴行にあって、

それから不安を感じるようになったんです」


「瀬名さん、よく考えて答えてください。このグローブは関谷さんの

殺害に使われた可能性があります。あなたのもので、

あなたが持ち込んだということで、間違いないんですね?」


 俺の答えによっては容疑者になるってことか。


 でも、なんでわざわざそれを警告する必要がある?

 俺に何を言わせたい?


 ……やっぱり菜穂さんが本当の目標なのか?


 だとしたらどっち? 殺人? 業務上横領?


 ここで俺が容疑者になるのは正解か?

 でもそうなったら、俺の自宅の家宅捜索が視野に入る。


 シマナツや守護天使は押収の対象になるのか?


 もしかしてそれが目的で?


 なんだくそ、どのルートもバッド・エンドっぽい展開。

 章の初めからやり直したらダメ?


 黙ってるしかないなと思ったら、なんだか外が騒がしい。

 おいおい、菜穂さんが乗り込んでくるのとかやめてよ?


「答えなくていい。何を聞かれてたか知らないけど」


 誰?


 いきなり部屋に入って来たブランド物のスーツ姿の女性。


 身長たっか。髪なっが。

 生まれてこのかた、他人を見下ろしたことしかないって目をしてる。


 いわゆる怖いほうの美人。

 けど、襟元のデカいシルクのリボンは何?


「ちょっと、あなた誰ですか? 勝手に入ってこないで」


 あ、俺の言いたいこと全部、背広の人が代弁してくれた。


「弁護士だよ、瀬名浩一さんのね。はい名刺。

もう充分話はしたでしょ? 帰るよ、瀬名さん。誰にでもほいほい

付いてっちゃダメだって教わらなかった?」


 手を引っぱられて歩くなんていつ以来?


 さすがに弁護士が出てくると警察も慎重だな。

 下手なことすると逆に訴える、なんてやりそうだし(イメージ)。


 それでも出て行く前に呼び止められた。


 さっき質問してたよりもずっと低い声だ。


「瀬名さん、またお話を聞かせてもらってもいいですか?」


 弁護士さんは……とくに気にしてない様子。


 ここは偽らざる本心で答えるべきだろう。


「ええ、いつでもってわけにはいきませんけど、協力はしますよ」


 ぜんぜん空気が柔らかくならない。

 むしろピリッとしたな。


 なんか俺、ヘイト上げるスキルの使いどこ、間違ってばかりね。


 駐車場に停めてあったのは黒のSUV。

 おおお、なんかそれっぽい。


 困ったらここに……て名刺渡されるタイプの弁護士に違いない。


 きっと菜穂さんが送り込んでくれたんだな。

 途中参加の強キャラ感あるぅ~~。


「助かりました。切り上げるタイミングがわかんなくて……」


「向こうも逃がさないように、無視したらヤバいって雰囲気作りますからね。

でも聴取に応じたのはよかったです。いきなり突っぱねると、

本気にさせちゃいますからね。ただ、最後のは最悪の煽りでした」


「面目ない。本気で協力するつもりなんだけど……」


「まあ、先生はなんだかんだで人がいいですからね。けど警察にとって

最悪なのはそういう人を意図して演じられる人間なんです」


「人がいいって……俺のこと、菜穂さんから聞いたんですか?」


「最初はそうですけど、今はちゃんと話してそう思ってますよ」


「え……話したって、いつ?」


「え……」


 弁護士さんは信号待ちで俺の顔をまじまじと見つめる。


「もしかして、気づいてないっスか?」


「そ、その喋りかた! シュウちゃん⁉」


「シュウちゃんっス」


「え? え? 弁護士って、警察に嘘ついたの?」


「ついてませんよ。資格は持ってるっス。いわゆるインハウスローヤーで、

刑事事件なんか担当したことないっス」


「シュウちゃん万能すぎん? しかもメイク落とすとこんなクール系美人とは、

文句なしのティア0だわ」


「ちょっ……美人とかやめるっス。先生に言われるとなんか照れる。

噂以上のナチュラルボーンジゴロっスね」


「どんな噂だ。ところでシュウちゃんはどう思った?

今の状況で、俺を殺人の容疑で逮捕するつもりかな?」


 コンビニでコーヒー買って、シュウちゃんに聴取のことを話す。


 ……料金、発生しないよね?


「まあ、本気で先生を逮捕する気なら、そんな手の内見せないっス。

やっぱり狙いは菜穂さんじゃないっスかね」


「業務上横領? 殺人?」


「家宅捜索が目当てかも。警察は関谷さんの事件も、シマナツと

シーマの開発に関わるトラブルが原因と考えてるのかもしれないっス」


「タイミング的にその二つを切り離して考えるのは難しいよな」


「先生の話からすると、シマナツがどこにあるかまでは掴んでない。

先生の自宅は候補の一つってとこっスね」


「菜穂さんもシュウちゃんも出入りしてたからなあ……」


「ただ、向こうからすると謎っスよね。今まで何にも関係なかった先生が、

なんでそんなに深く関わってるのか。誰だよ、お前って感じっス」


「ドラマだと黒幕だな」


「きっと背後関係を探ってるでしょうね。何も出てきませんけど。

いい時間稼ぎにはなるかも」


「逮捕状、取るのかな?」


「たぶん二人ともの、ね。先生、時間はあまりなさそうっス」


「シーマの危険性の告発。それと守護天使の公開。

それまでは何とかもたせないとな。いざとなったら、先に俺一人が

出頭して時間を作る」


 シュウちゃんは驚いて缶コーヒーを落としそうになってる。

 俺の自己犠牲は信じられませんか?


「あの……今さらなんだけど、なんでそこまでしてくれるんスか?

シーマ告発したって、守護天使公開したって先生は容疑者のまま、

ってことにもなりますよ、これ」


「それはわかってる。けど、今さら俺は無関係だからあとは

そっちでがんばってくれ、家からも出てけ、なんて言えないだろ」


「そりゃ言われたら困りますけど……先生の仕事が……」


「言えないんだよ、シュウちゃん」


 笑顔でシュウちゃんを黙らせた。


 言えないんだ。


 今となっては半分は俺の問題だなんて。

 向こうの世界から、悪魔が俺を追いかけてきたなんて。

読んでいただき、ありがとうございます。

まだまだ手探りで執筆中です。

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