表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

若者陰謀論【1000文字未満】

作者: 平之和移


「最近の若者は……」


中年おじさんの言葉はいつもこれだ。何かとつけて若者は悪とした。同調する太鼓持ちの出っ歯が酒を注ぐ。古錆びた居酒屋。そうだそうだとうなずくばかり。


「若者は忍耐が足らん。少し怒鳴った程度でどうこう言いおって」


「全くですなぁ。全くですなぁ」


出っ歯の音頭に気を良くしたか、中年はにんまりと笑う。酒も回って口も回る。


「そういえば聞いたかい。最近の若者は政治にくい込み、自分達の言いなりにしているらしいよ」


「大変ですなぁ。全く若者は」


「うむ、そうだ。少子高齢化が進んだからといって、自分達の毒牙を国に立てている。確かに若者は減ったかも知れないが、老人が蔑まれる理由にはならない」


「その通りですよ。若者は国を乗っ取る気だ」


二人は敵を得て仲間を得たと笑い合う。彼らの脳裏には自分達に頭を下げる青年達がいる。なぜか女性は含まれていない。


中年はあることに気付き首を傾げた。


「しかし、あいつらが政治を操っているとなるとだ。我々への月間給付金がなくなったのは彼らのせいなのか?」


「その通りでございます」


「では、優先席に老人ではない奴が座るのも?」


「その通りでございます」


「なら、老人が運転すると事故を起こす車も?」


「その通りでございます」


「なんてことだ!」


中年は頭を抱えた。おぞましい若者。彼らは自分達を相手に暗闘を仕掛けてきたのだ。この居酒屋には若者がいないから助かっている。しかし、人気の場所だったら。


寒気がする。もしかしたら、妻子に嫌われているのも若者のせいか。若者が彼女達を盗ろうとしているのか。


「気付いてしまいましたか」


居酒屋の店主がやってきた。影多き、深刻な表情。中年と出っ歯は自然と背筋を伸ばした。


「そう、お二方。この世の悪の裏側には若者がいます。奴らのせいで、我々飲食業界は苦しんでいる。無給で働いてくれないし……」顔を近付ける。「貴方も戦いませんか? 悪しき若者と。大丈夫、所詮奴らはマイノリティ。老人という多数派には勝てませんよ」


不安に直撃する魅惑は、脳を麻痺させるに丁度よい。中年と出っ歯は頭を縦に振り、秘密結社に入った。


一方その頃。中年の娘は老人の陰謀へ刃向かっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] この小説を読んで飲食店の闇を感じました
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ