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恋です。

恋です。11話

作者: 新垣新太

飯塚は藤川と付き合って1年が過ぎる。高校3年生の夏休み、飯塚はこのタイミングで藤川の両親に挨拶をしたいと考えていた。藤川からは、その件について二つ返事でオッケーが出た。藤川のお父さんの仕事の休みに合わせ、8月8日の午後に藤川の家に行くことになった。


・・・


藤川ご両親に挨拶当日。飯塚は制服姿でマンションのエントランスを通った。藤川の家は6階建てのマンションで、飯塚は何度か遊びに来たことがあった。藤川は、玄関前の通路で飯塚を待ってくれていた。


飯塚「あ、お待たせ」

藤川「全然大丈夫、まだ10分前だよ。何それ?」

今日の藤川は電車オタクの藤川だった。

飯塚「これ、お菓子。初めて会うのに何か持ってけってうちのお母さんが」

藤川「別に平気だよ。でもありがと!」


そして、玄関から中に入ってすぐの扉を開けると、テーブルに座る藤川の両親が笑顔で迎えてくれた。


藤川「はい、私の彼氏の飯塚君」

飯塚「初めまして、飯塚正次郎と言います。これ良かったら、お菓子です」

藤川の父「娘がお世話になってます」

藤川の母「わざわざお菓子までありがとね!じゃあ、ここに2人で座って。今お茶淹れてくるから」


藤川の父親は眼鏡をかけた優しい顔で飯塚と握手をした。藤川の母親は飯塚からお菓子を受け取ると、ささっとキッチンに移動してお茶の準備をし始めた。


藤川「うちの両親の武男(たけお)良枝(よしえ)です」

4人掛けのテーブルに飯塚と藤川は隣同士で座る。その時、藤川が前髪が気になったのかテーブルの上に置いてあった小さな手鏡で顔を写していた。


藤川「やっばぁ。何この顔、ほぼ素っぴん何だけど。飯塚ごめん、メイクしてくるから待ってて」

飯塚「え、今?」

藤川「パパ、ママ!メイクしてくるから、3人で喋ってて!」

藤川の母「ちょっと、由衣!、、もう、ごめんね飯塚君。お茶淹れ終わった所なのにー」

飯塚「僕は大丈夫です。、、お茶、ありがとうございます」


藤川は3人をリビングに残して、自分の部屋にバタバタと行ってしまった。少し気まずい空気が流れるのかと思ったが。この機を待っていたかのように、藤川の父が話し出した。


藤川の父「今日は来てくれてありがとうね」

藤川の母「本当に。由衣と一緒にいると態度がコロコロ変わるから大変でしょう」

飯塚「由衣さんとは付き合って1年が過ぎましたけど、いつも楽しませてもらってます」

藤川の父「そうか、もう1年も付き合っているのか」

飯塚「あ、すいません。由衣さんとは真剣にお付き合いさせて頂いてます!」

藤川の母「ふふふっ」

藤川の父「まぁそんなにかしこまらずに」

飯塚「あ、はい。でも、僕は。これからも由衣さんと一緒にお付き合いを続けて行きたいと考えていて。まだ、これは由衣さんにも話していないのですが、卒業したら結婚を前提に同棲を申し込むつもりです。それを今日、お2人に伝えたくて来ました」

藤川の母「あら」

藤川の父「それは、緊張してるわけだ(笑)。、、うん、そしたらね。由衣についてちゃんと知っておいて欲しいことがあるんだ」

藤川の母「そうね」


・・・


飯塚は、藤川の両親から由衣は心的ストレスにより多重人格になっていると話を聞く。原因は、ずっとファンとして応援してきた俳優の菊地竜次が結婚したことだと言う。その俳優の名を聞いてハッとした飯塚。高校入学直前の出来事が昨日の事のように蘇った。飯塚が好きだった女優の大原ひろみを奪った男。だが、その男を大好きだった藤川。複雑な気持ちが交差する飯塚。藤川のお父さん曰く、由衣の心にはトゲが刺さったままの状態で、菊地竜次の結婚をまだ受け入れきれていない段階なのだと。結婚発表の衝撃が、由衣の心の感情を分裂させて今の多重人格の姿として現れている。と病院の先生に言われたと言う。飯塚は藤川の両親から、この話を聞いても由衣の事を好きでいてくれるならば。本来の姿である藤川由衣を取り戻すために、心のトゲを取って欲しいとお願いされた。


バタバタバタバタッ!


藤川「お待たせ!バッチリオッケー!」

藤川の父「よろしくね」


飯塚は藤川の両親からの熱い視線に、少し目が泳いだが、しっかりと頷いた。飯塚の胸のうちには、熱い何かが込み上げてきていた。藤川由衣に恋をすると言うことが、こんなにも責任と深い愛情が伴うのだと飯塚は感じていた。


藤川「そうだパパ!子供の頃のホームビデオ見ようよ!」

藤川の父「あぁ、ちょっと待ってろ、準備する」


その後、藤川が幼い頃のホームビデオを4人でお菓子をつまみながら観賞した。なぜかはわからないが、飯塚はちょっぴり涙を溢していた。

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