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久しぶりの投稿になりました。


~簡単なあらすじ~

犬猿の仲な幼馴染、ひじり健人けんとは苛められていた犬を助けようとした所で召喚され異世界転移。二人と一匹はまとめて聖女の器として魔力を注がれてしまい、触れ合っていないと聖女の魔法を行使できないと言われてしまう。それを何とかしようと、召喚先の国の王子レイナードと筆頭魔法使いベリルに、とある提案をされるのだが──。

 

「従魔の契約? 」

「ええ」


 ベリルさんはにこりと笑うと、腕をスッと前に突き出した。何を……? と考える間もなく、カラスに似た鳥が少し開いていた窓から入って来て、止まり木よろしく彼女の腕に乗った。私は驚きに肩を揺らす。


「驚かせてごめんなさい。この子は私の使い魔で、ノーアと言います」


 カアッと嬉しげに鳴く、黒く艶々した翼をした──ノーアちゃん(くん? )を見つめた。外見は日本に生息するカラスそっくりだが、瞳がベリルさんの髪色と同じ赤だった。


「この子と私は従魔の契約をしていて、離れていてもお互いの魔力で繋がっているのです」

「なるほど、それで俺とおもち、聖とおもちを魔力で繋ぐってわけだな? 」

「話が早くて助かる」


 いや、話が早いのはこの男だけです王子。昔から一を聞いて十を知ると言うか、とにかくムカつくくらい優秀な奴なのだ。

 中学校でのテスト順位で勝てた事は一度もない。

 私はあんなに……あんなに勉強したのに。まぁそのおかげで? 高校は推薦でいいとこに受かったわけだけれど。いや決してコイツのおかげではない。勉強した自分のおかげなのだ。


「──聖は、いいのか? 」


 ぜんっぜん聞いてなかった。健人の声にハッとして、でもコイツに小言を言われるのは癪だとばかりに嘘をついた。


「えっ? うん。もちろん? 」

「(お前、絶対聞いてなかったろ!! )」


 耳許で小声で怒鳴られても(器用だな)、何が何だかな私に、笑顔でレイが告げた事は。


「じゃあおもちとはそれぞれ従魔契約して、二人はパートナー契約をするって事でいいね」


 あの、パートナー契約とは何でしょうか。とは言えない雰囲気。隣で健人が、白くなったボクサー並みの哀愁を漂わせてソファーに背を預けている。

 きっとお互いに不本意な契約なんだろう。どうして聞いていなかったのか。

 ていうか! そんなに嫌ならあんたが断ればいいじゃない! 人のせいみたいな態度しちゃって腹の立つ~~~!!


「これでもし戦闘とかで近くにいられなくなっても、聖女の力は其々が行使できますから」


 とか言われてしまえば、もう仕方ないかと思ってしまう。聖女の力を使う度に健人と手を繋ぐ事を思えば(まあ手じゃなくてもいいんだけど)、謎の契約もさもありなんといった所だろう。

 そう思ったのに。


「ただ──もしお互いを嫌悪したりすると簡単に契約が切れてしまいますから、気を付けてくださいね」

「っ、それ、もし切れたら結び直せない、とか? 」


 私の言葉に、ベリルさんは苦笑した。


「結び直せない事はないのですが……その時は仲直りしたと示す為に、口付けをしないといけないのです」


 とんでもない言葉が聞こえた。恐るべしパートナー契約。いやしかし、そもそも切れる様な事にならないようにすればいいってことよね。

 いや、どうだろう。こうなってくるとそもそも契約自体無理になるのではないか? だって私と健人だよ? お互い嫌い合ってるのは全校生徒が知るところだった私達だよ?


 救いを求める様に健人を見れば、今度は頭を抱えて俯いていた。ただ見えた耳と首は真っ赤になっていて。


 うっわ。珍しいもの見た。


 こんなに赤いの、例のRPGゲームでヒロイン(名前はヒジリ)が主人公(名前はケント)の頬っぺたにキスした所を、二人で見てしまった時の健人以来な気がする。


「レイ……私と健人って、見ていればわかると思うんだけど……凄く仲が悪いのよ。そもそも契約出来ると思う? 」

「はははっ、まあ、やってみてダメだったら他を当たろう」


 レイは面白そうに笑うだけで、結局契約を結ぶ事になってしまった。解せぬ。



 従魔契約は呪文を唱えながら、私がおもちの頬っぺたにキスをすればいいって教えられて、この世界の女神様はキスがお好きなのかなってうんざりした。

 いや、おもちにキスするのは全然いいの。寧ろ契約関係なくちゅっちゅっしたいよ私は。


 うんざりなのはパートナー契約の話の方!! キスして仲直りを女神様に認めてもらえれば再契約、のとんでもなさもさることながら、パートナー契約にもキスが必要なんだって。なんと場所はお互いの心臓、の上。

 なんだそれっ!! しかも服の上からは駄目なんだと。ばか! 女神様のばか!! ヘンタイ!!!


 そういうわけで、秒で従魔契約を終えた私達は、パートナー契約へとコマを進めたわけなのだけど……。


 これがめちゃくちゃこっぱずかしくて、とりあえず健人は素肌の上に白い半袖半ズボンの上下を身につけてて、私は薄いベールを頭からかぶり、胸の辺りが大胆に開いた白いレースの、キャミソールワンピースみたいな服に、レースの薄いハイソックスを履いている。ちょっと薄着だけど、まるで結婚式みたいだなって思った。これだけでも充分恥ずかしいと言うのに……。


 聖なる水が満たされている四角い泉みたいな(水深は私の腰くらいの)所に二人で入り、自分の唇を聖水で清め、相手の心臓に口付けをする、らしい。なんで従魔契約はあんなに簡単なのに、パートナー契約はこんな仰々しいの??


 泉は冷たくもなく熱くもなく、でも温くもない。水として濡れた感覚はあるし、服も髪も水を含んでペタりとするのに、まるで存在していないかの様な不思議な感覚だった。

 泉の中にいるのは私と健人の二人。見届け人としてレイとベリルさんが正装で泉の外に立っている。


 両手で水をすくい、そこに唇をつける。健人も無言で同じ様にしているのを横目で見て、心臓が変な音を立て始めた。

 な、何緊張してるんだろ? ちょちょっとアイツの胸に唇をくっつけるだけなのに。


 黙ったままの健人の眦はほんのり赤くて、きっとコイツも恥ずかしいんだろうなと思う。説明聞いてる間は死にそうな顔してたけど。だからそんなに嫌なら断ればいいのに。


 健人は両手で私の腰を優しく掴み、自身の腰を屈めて私の心臓の位置に口付けを落とす。くすぐったくて身をよじろうとしても、健人の体温高めの手がそれを許してくれなかった。


 え、な、長くない……? チュッてしてパッて離れるもんじゃないの?


 ようやく離れた健人の顔はこれでもかって位真っ赤だった。わあぁ、止めてよ、伝染るじゃない。

 ベールの下で深呼吸していたら、健人にゆっくりベールを上げられて目が合った。

 えっ、私が自分で上げるって話では???

 これじゃまんま結婚式じゃん。

 あんたは自分の上着を開く仕事があるでしょうが! と腹が立ったので健人の上着のボタンを外して開いてやったら、焦った顔をしたので溜飲が下がった。

 健人とは十センチ位の身長差があるので、たいして屈まなくてもそのまま心臓の位置に口付けられた。

 唇を離すと、口付けた位置にお花の形をした、黄色の痣が浮き上がる。何、これ。


「契約は成った。レイナード・ファルファーレの名において、確かに見届けた事をここに宣言する」


 契約、成っちゃった。

 つまり、コイツは言う程私の事を嫌いではなく、私も、健人を言う程嫌っていないと、今、正に本人にバレてしまったと言う事ではないのだろうか。


 私は恥ずかしくなって、逃げる様に泉から出たのだった。


最近ムーンの方ばかり更新してしまってたので、こっちも頑張って更新していきたいと思います!

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