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~フィリーネと侍女アン~

「お嬢様、お疲れ様でございました。蜂蜜入りの紅茶でございます。夕食まで少しお休みください」


「アン、ありがとう。アン・・・アン・・・んんんん」


「お嬢様、そのようにクッションに顔を押し当ててはお化粧がついてしまいます。

お白粉や紅は落とすのに難儀いたします。おやめくださいね。

でも、本当にようございました。おめでとうございます。

幼い頃からですものね、ブルーノ様を想われてから大分長い年月を過ごされましたから。

本当に良かったです。私もうれしいです」


「アン!ありがとう。10年以上よ。ブルーノを好きになってから、もう10年以上。

ううん。もっとかな。だって、いつ好きになったかなんてわかんないわ。

物心つく頃にはもう一緒に遊んでいたし、ああ、こんな日がくるなんて思わなかった」


「そうですね。メイナード様との婚約が決まってからのお嬢様は、本当にお辛そうでした。

笑顔もどんどん減っていかれて、側にいても悲しすぎて旦那様の首を絞めてやろうかと思ったことも一度や二度ではございません」


「え?やめて!さすがに息の根を止めるのはやめてちょうだい」


「はい、承知しております。腐ってもお嬢様の御父上ですからね。

まだまだ頑張って稼いでいただかないと、お嬢様を綺麗に仕立てる資金が底をついてしまいます。大丈夫でございます」


「いや、アンのその笑顔は腹の中が見えなくて怖いわ。お手柔らかにね」


「はい、もちろんでございます。

それより、ノーマン公爵家はいかがでした?お嬢様のことですから、しっかりと猫はかぶっていたことと思いますが、ちゃんとお気に召していただけましたか?」


「猫は大丈夫よ、三毛もブチも何重にも重ねたから。それに相変わらず昔のように皆さん歓迎してくれたわ。最近はご無沙汰していたけど、夫人は寂しかったっておっしゃってくださってね。娘のように思っているからいつでもお嫁に来て良いって・・・うふふ」


「そうでしたか、それはよろしゅうございました。まあ、お嬢様のことですから、ヘマをするような真似はしないとは思いましたが。これで一安心いたしました」


「ええ、すぐにでも婚約するらしいわ。ブルーノが待ちきれないって。それに学園を卒業したらすぐに挙式を上げるんですって。

ブルーノったらね、卒業式の後すぐにでも教会に行くって勢いだったけど、さすがにそれは公爵家に止められていたわ。ふふ」


「ああ、そうでございましょうねえ。

先ほどお会いしたばかりだと言うのに、こうして部屋いっぱいの花をまあ。しかもご自分の瞳の色である青い花ばかり。

独占欲が強いと言うかなんというか、この部屋に収まり切れない分は屋敷中に飾らせていただきましたが。今度からは枯れてしまう花ばかりではなく、ちゃんとお嬢様を引き立たせてくれる宝石類にしていただくように進言いたしたいところでございます」


「本当にアンって辛辣よね。きっと間に合わなかったのよ。宝石だってドレスだってすぐに用意できる物ばかりではないから」


「それはそうでございます。まさかお嬢様への贈り物が店頭に並ぶような既製品であって良いわけがございません。そこまで考えての行動でしたら、褒めて差し上げなければなりませんね」


「ええ、そうに決まっているわ。だから今度褒めてあげてね」


「私などがそのような・・・不敬罪で首を刎ねられかねません」


「大丈夫よ。アンには結婚しても私の侍女としてついて来てもらうから。今のうちに顔を覚えてもらった方が良いわ」


「ありがとうございます。私は死ぬまでお嬢様についていくと決めております。

それこそ、地獄の底までもです。お嬢様こそ覚悟なされてくださいませ」


「え?ええ、覚悟はしておくわ。一応。

でね、結婚してからの新居なんだけど、ブルーノのお祖母様がお過ごしになられていた邸が王都の西にあるんですって。そこを改装して住むことになりそうなの」


「さようですか。で?ブルーノ様の今後の身の振り方は?まさか、爵位もなく職もなくお嬢様を養っていけるとは思っておりませんですよね?いくら公爵家とは言え、嫡男のお兄様がいらっしゃいます。どうするおつもりなのでしょう?」


「爵位は、ブルーノのお父様が鉄道事業の功績で伯爵位をお持ちだったの。それを譲りうけるらしいわ。それに仕事は第二王子の側近として就くことが内々で決まっているらしいの。

だから、贅沢さえしなければ十分暮らしていけるわ。ちゃんとアンのお給料も払えるから安心して」


「私のお給料のことなど、どうでもよろしいのです。むしろ、お嬢様を輝かせるドレスや宝石、化粧品などにかける金銭を節約しようものなら・・・ギリギリ」


「ちょっと、アン。歯ぎしりはやめて、歯が痛むわよ」


「はっ!お見苦しい音を・・・申し訳ありません」



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