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ショートショート2月~

やめられないこともない

作者: たかさば

どうにもこうにも、アプリゲームにハマってしまって、いる。


気が付くと、スマホを開いてしまうのだ。

気が付くと、一時間くらいあっという間に過ぎちゃっていたりするのだ。


この所、カラードロップをそろえるゲームに、ドはまりしている、私。


動画の広告を見ていて、何の気なしにダウンロードして、ちょっとやったらいつの間にかハマっちゃってさ。

広告内容と全然違うって、だまされたって憤慨してたはずなのに、いつの間にかハマっちゃってさ。

いつの間にか、ゲームの中で繰り広げられる、愉快なドラマの展開が見逃せなくなっちゃってさ。


「ああー、ライフ無くなった、フレンドにお願いしなくちゃー!」


見ず知らずではあるが、この世界で同じゲームを楽しむ仲間に、ライフをおねだりする。このゲームはね、ライフの数だけパズルゲームにチャレンジができてですね。課金したらライフも回復できるんだけど、そこまでしたくないっていうか。課金したらこの年で廃人化決定コース突入とかありえなす…ああ、もらったライフもあっという間に使っちゃった、あと五分待たないとだめだ、はあ。


パズルをクリアできなければ、ライフは減って、ゲームができなくなる。ライフは時間経過で回復するので、しばらく待っていたらまた遊べるんだけどさ。なんというか、ステージクリアの波に乗っている時って、あんまりこう、時間を置きたくないっていうか、続けて遊びたくなるっていうか、あとちょっとだったのにーって悔しくなるっていうか。ああ、このライフの貯まるまでの時間が非常に、うっとおしいー!キー!!!


・・・何故だ、なぜ私はこんなゲームにハマっているんだ。


飽きっぽさに定評のある私。


指先で球をくるくるやって消すやつを半年で放り出し、指先でキャラクターを弾き飛ばすやつを一か月で放り出し、街中に出現するかわいい怪獣を集めるやつを二週間で放り出し、街中を歩いてクエストをクリアしつつ転職したりするやつを10日で放り出し…名だたる神ゲーをとことん蔑ろにしてきた私が、朝起きてはひとゲーム、一息ついてはひとゲーム、鍋を煮込んでいる隙にひとゲーム、待合室でひとゲーム公園のベンチでひとゲーム寝る前にももちろんひとゲームひとゲームひとゲームひとゲーム!!!


やらずにはいられない、目に付いたらやらねばならない、やれない状況でもやりたいと思ってしまう。・・・何この禁断症状。もうさ、なんか毒電波でも仕込んでんじゃないの、このゲーム。



「あ!!!お母さんまた充電しながらゲームやってる!!駄目じゃん!!!」

「だって充電しながらじゃないと電源落ちちゃうもん。」


ゲームのし過ぎなのか、最近妙にバッテリーの持ちが悪くてですね。


「そんなことしてるからスマホが悪くなるんだよ!いきなり壊れたりしたらどうすんの!!」

「まだこの前買えたばっかじゃん、大丈夫でしょ。あ、シークレットボックスゲットー!」


…娘の忠告なんか、まるで気にしちゃいなかったのだけれども。



「何これ!!電源入んない!はい?!いつもみたいに充電しながら寝落ちしたはずなのに!!!」


いつも6:00にセットしてあるスマホのアラームが鳴らず、娘のでかい足音で目を覚ました私は…枕もとの異常に気が付いた。充電中のスマホに…ランプがついていない、電源が入らない、何をしてもうんともすんとも言わない!!!ちょ、マジか!!!慌ててキッチンに向かうと…ひい―!!!もうじき7:00じゃん!!


「お母さん珍しく寝坊だね!!ごはん勝手に食べちゃったよ!!もぐもぐ!!!」

「スマホが壊れた・・・。」


食パンを焼きもせずにバターと蜂蜜と練乳を塗りたくって食べている旦那にスマホを差し出してみる。ぶくぶくとしているがこれでも割と凄腕の電気屋だ、ひょっとしたら直してくれるやもしれぬ!!


「うーん、寿命だね!修理してもらったら!!!」

「お母さんめちゃくちゃな使い方するからだってば!!!」

「パン焼いていい?」


スマホは直らず、食パンはすべて食い尽くされ。腹ペコでスマホショップに向かいましたとも。


「修理できませんかね。」

「ああ、この機種はもうサポート終了してますね、買い替えです。」


最近は、二年でサポートが終了するらしい。二年前に最新製品ですよとおススメされたのに、たった二年で修理すらできなくなるほど落ちぶれてしまうとは。なんという厳しいスマホの一生、こんなん自分だったら泣くわ…。


「これが最新の製品です。何色にします?」

「じゃあ、これで。」


ああ、この最新の機械も、二年後にはまた時代遅れの修理不可品となるというのか。この世知辛さよ…。


いろいろとげっそりしながら帰宅した私を待っていたのは、スマホの復旧作業。とはいえ、いい機会なんでいらんもんはサクッと削除してスッキリさせたいところ。使ってなかったアプリなどはすべて削除し、同期したり日常で必要なアプリをダウンロードしたり…ゲームはやめておこう、まずは使用環境を整える方が先だ。


一通り設定が完了したところで機能の確認など。


「うわ!!!何これ!!!この新しいスマホ!!めちゃ動画奇麗に見える!画面でか!!カメラ?!毛穴まで映っとるがな!!ひい―!!!」


私は新しいスマホの機能充実っぷりにですね!!大歓喜極まりないと言いますか!!


動画視聴に動画撮影に写真撮影に画像処理に録音録画、音楽の再生―!!!なに、たった二年でスマホってやつはここまで進化するんですか、マジですか!!!大喜びでいろいろと新機能を試しまくる、堪能しまくる、日々、日々、日々、日々―!!!


とてもじゃないけど、ゲームをやるヒマがないぞ!ゲームよりもやりたいことが…新しいスマホには、みっちりとつまっている!!


・・・なんだろう、この感じ、前にも感じたことが…ある。そうだ、壊れたスマホに買い替えた時もこんな感じだった、パノラマが写せるとかメモリが増えたとか画素数ハンパねえとかはしゃぎにはしゃぎまくって…。で、スマホそのものに夢中になって、ええとー当時ハマってたゲームを入れるタイミングを逃したというか、忘れてそのまんまになったというか。


そうだな、このスマホにする前は別のゲームに夢中になってて…何だったっけかな、お金がわんさかたまっていくやつ。その前は確か料理作って人に食べさせる奴にはまってたし、その前の携帯の時はカード集めて合成するやつにはまってて…。そのさらに前はキャラゲーやってて…。


携帯やスマホを新しくするたびに、その機能に夢中になって使い倒して、慣れてきたころにゲーム入れてハマって・・・。

いきなり壊れて、新しいスマホにするタイミングでスパっとゲームから遠ざかる・・・。


そうだ、いつもの私のパターンだ、王道だ、ああ、今回もまたしてもなのか、なるほどねえ…。


あんなにも隙を見つけてログインしていたゲームに、丸っと一週間ログインしていないことに気付いた、私。


もう二度と、ゲーム画面を開くことはないと、確信したので、あった。



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― 新着の感想 ―
[一言] わかりますね。 毎日、やらないといけない日課みたいになっちゃうんですよね。毎日のログインボーナスを貰わないといけない!みたいな。なんだかんだで、数日ログインしなくなると、まぁいっかみたいにな…
[良い点] わかる。 気持ちがわかりすぎる。 このゲーマーの心理、よくぞ書いた! [気になる点] 喪失からの再獲得。強い [一言] 知り合いがドラゴンのクエスト11を絶賛プレイ中でlineで興奮中。 …
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