龍鏡(りゅうきょう)
ここで清められた刀? それにこの数珠はこの神社にあったもの?
なんでシュウがそんな数珠を持っていたのだろうか。
わからないことが多すぎる。
「この数珠って何なんですか? それに私が選ばれた者って……」
困惑する私は、何をどう話したらいいのかわからない。
「シュウ様? 朱音様にはきちんと説明したのですよね?」
葵さんの目が怖い。
シュウを睨んでいるが、肝心のシュウは舌で手を舐めて顔を洗っている。
あ、葵さんが猫つかみでシュウを持ち上げた。
「何をする?」
「それはこちらのセリフです。説明、したのですよね?」
「にゃーん」
それでごまかしているのだろうか。
「一から説明ですか……」
葵さんがものすごくがっかりしている。
「あの、説明って?」
葵さんがシュウを手放し、私に近づいてくる。
「言葉よりも、見たほうが早いと思います。こちらに」
私の手を取り、部屋の奥に連れていかれる。
「あ、あの! 俺も行ってもいいですか?」
「来たければ来なさい。来るなといっても来るのでしょ?」
葵さんは少し冷たい態度で相原さんに言葉を放つ。
私はそのまま部屋の奥にあるもう一つの部屋に通された。
暗い部屋の中に、うっすらと光るろうそくの炎。
外はあんなに明るく少し暑いくらいなのに、この部屋は真っ暗で少し寒い。
奥の方に小さな扉が付いた神棚みたいなものが見えた。
その左右には榊とお札のよう物も見え、何かを祭っているようにも見える。。
「ここで少しお待ちください」
部屋のちょうど真ん中あたりで止まり、葵さんは奥にある神棚のような物のに向かい、手を合わせた。
そして、何かぶつぶつ言いながら、懐から取り出した幣を手に取り、左右に振っている。
しばらくすると、小さな扉を開け、中から何かを取り出した。
なんだろう、あの鏡のような物は。
それを手に取り、私の方に向かって歩いてくる。
あの鏡、何か嫌な感じがする。
「これを見て、何か感じますか?」
葵さんが私の方に視線を向ける。
「なんか、嫌な感じがしますね」
「ここにヒビが入っているのがわかりますか?」
鏡をよく見ると下の方に少しヒビが入っている。
「はい、小さいけどヒビが入っていますね」
「この地域の邪気はこの龍鏡に封印されています」
「この鏡に……」
二匹の龍が丸い鏡の淵にそって飾られている。
一匹は金色、もう一匹は銀色。まるで生きているかのような細工がされている。
「ずっと適性者が不在で邪気を浄化できず、ヒビが入ってしまいました」
「浄化すれば何とかなるんですか?」
「はい。今すぐに割れてしまうことはありませんが、少しずつ浄化していけば何とかなります」
「あの、変なこと聞いていいですか?」
今までの話を聞いて疑問に思った。
「はい、なんでしょうか?」
「葵さんが浄化すればいいのでは? 私よりも適任ですよね?」
「今のままはできません。朱音様がいて、初めて私も浄化できるようになります」
私がいて、初めて浄化できる?
少し意味が分からない……。