協力者
二人と一匹。
階段を駆け上がり、見えてきた社。
「はぁはぁはぁ……。やっぱり、この階段はきついよな」
相原さんが肩で息をしている。
私もこの段数を駆け上がるのはかなりきつかった。
「着いたの?」
先に一番上まで来ていたシュウに声をかけた。
「もう少し先ですね。休みますか?」
「す、少しだけ休ませてくれ」
私よりも先に相原さんが音を上げた。
近くのベンチが木陰になっており、少しだけ休むことにする。
木漏れ日が気持ちよく、吹く風もすがすがしい。
「はい、これ良かったら」
私は近くにあった自動販売機で買ったジュースを相原さんに渡した。
「ありがとう。はぁー、気持ちい……」
冷えた缶を首に当て、シャツのボタンを三つも開けている。
ズボンからシャツを全部出しており、だらしのない格好になっている。
そんな相原さんを眺めていた。
「あ、ごめん。少しだらしなかったかな」
「他に誰もいないし、境内に入る前だったらいいんじゃないかな」
シュウはさっきからその辺をウロウロして落ち着きがない。
「シュウ、少し落ち着いたら? さっきから同じところをぐるぐる回っているよ」
「ん、そうか……。いや、ここに来るのも久しくてな」
シュウはこの神社の使者といっていた。
シュウが仕えているのって神様なのかな……。
そんなことを考えながらしばらく休み、汗も引いてきた。
「シュウ、そろそろ行こうか」
シュウが先に歩き、私たちは後をついていく。
一体どこに行くのだろうか。
大きな社が視界に入ってきた。
あそこに行くのかしら。
と、思ったけど、その大きな社を横目に隣の細い道に入っていく。
こんなところ、勝手に入って大丈夫なのかな……。
しばらく歩くと扉が見えてきた。
その扉の下部分に小さな扉が付いている。
その小さな扉を使い、シュウは中に入っていった。
「私たちも中に?」
しばらく返事がない。
――ギィィィィ
扉が勝手に開いた。
「お待ちしておりました」
扉の向こうには巫女の姿をした少女が立っていた。
その足元にシュウもいる。
「シュウ?」
「二人とも中に」
巫女さんに案内され、私たちは中に入る。
扉の向こう側は長い廊下になっており、屋根もついている。
普通の人は入れないと思われる、社の裏の方。
右手には社の裏が見えており、左手には雑木林。
何も話さず、ただひたすらに歩く。
しばらく歩くとまた扉があった。
今度は巫女さんが扉を開け、中に入る。
私たちも中に通され、一気に視界が広がった。
巫女さんが数歩先に歩き、その歩みを止め、振り返る。
「朱音様、ですね」
「はい、東条朱音といいます」
「私は篠宮葵。この神社の神主、篠宮家の長女でございます」
篠宮さん。
とてもきれいな顔立ちに、青みがかかった長い髪。
後ろで一つに髪を結んでいるけど、すごく大人っぽく見える。
「えっと、相原智也です。よろしくお願いします」
丁寧にあいさつをする相原さん。
少しだけぎこちない。
「朱音様、この時を待っておりました。何年も……。私は朱音様と共に鬼を浄化する者。この命と魂はあなた様と共に……」
話が重い。命とか、魂とか。
でも、本当にそんなことが起きようとしているの?
もしかして、私は夢でも見ているのかしら?
「あ、あの……。篠宮さん?」
「私の事は葵とお呼びください」
まじめな顔で言われてしまった。
「じゃ、じゃぁ葵さん。鬼って本当にいるの? それに私はただの高校生……」
葵さんがゆっくりと歩み寄り、私の手首を握ってきた。
「この数珠。朱音様は選ばれし者。封印された刀は使えましたか?」
刀の事、知っているんだ。
「使えたけど、どうしてそれを?」
「そうですか、良かった。この数珠はこの神社にあったものです。そして、その刀はここで清められました」
少しうれしそうに話をする葵さん。
その目を見ると、少しだけ私は怖さを感じてしまった。