初めての神衣
角を曲がり、目にしたのは倒れている相原さん。
そして、見たこともない黒い大きな犬。
「グルゥゥゥゥ」
目が赤く、今にも相原さんに飛び掛かろうとしている。
「な、なにあの犬は……」
私は急いで相原さんの隣に行き、相原さんの腕を自分の肩にかける。
「と、東条さん……」
「相原さん、大丈夫? あの犬はなんなの?」
「俺は大丈夫。あの黒い犬、突然飛び掛かってきたんだ」
少し離れた所にいる黒い犬はまだこちらを警戒している。
怖い、あんな大きな牙で噛まれたら……。
考えただけでぞっとする。
「相原さん、歩けそう?」
「なんとか、それよりも逃げたほうがいい。ここは俺が何とかするから」
「何言ってるのその足で。一緒に逃げよう」
少しずつ犬から離れようと、ゆっくりと後退する。
しかし、犬もゆっくりと一歩一歩こちらに向かって歩いてくる。
逃げられない。
「ガァァァァァァ」
ついにしびれを切らしたのか、犬が私たちめがけて飛び掛かってきた。
「にゃぁぁぁぁぁ!」
突如現れた黒い猫。あの猫、シュウだ!
横から頭を蹴られ、黒い犬は地面にたたき落された。
シュウはそのまま走って私たちの目の前にやってくる。
「大丈夫?」
目の前の黒猫、シュウが話したように聞こえた。
私は返事もせず、ただシュウを見つめる。
「えっと、聞いてるかな? 結構急いでいるんだけど」
私は何の声を聞いているのだろうか?
ふと隣にいる相原さんに視線を移す。
彼もまた、シュウをじーっと見つめ、瞬きもしていない。
どうやら聞き間違いではないようだ。
「だ、大丈夫かな?」
「そう、良かった。何とか間に合ったみたいだね」
シュウの後ろで起き上がろうとしている犬。
ゆっくりと起き上がってくるのが視界に入ってきた。
「東条さん、早く逃げないと!」
「う、うん!」
相原さんを抱きかかえ、再び後退する。
シュウは犬の方へ振り返り、威嚇し始める。
ゆっくりとシュウに近づく黒い犬。
「叫ぶんだ!」
シュウが声をあげる。
「叫ぶ? それよりも――」
「いいから! 『神衣』と!」
訳もわからず言われた通りに叫ぶ。
「神衣!」
突然手首の数珠がひかり、辺りは一面真っ白になった。
視界の全てを白で埋め尽くされ、思わず目を閉じる。
どれ位の時間が経過したのだろうか。
「もう、大丈夫ですよ」
聞きなれない声が耳に入ってきた。
その声を信じ、ゆっくりと目を開ける。
さっきまであった道がなくなり、別な世界が視界に入ってきた。
そして私の隣には、知らない一人の男性が立っている。
「この姿では初めましてですね、朱音様」