新しい武器の可能性
学校が終わり、すぐに神社へ向かう。
俺はどうしても話がしたかった。
自分では戦うことができない。
たとえ、強くなっても東条さんの力にはなれない。
そんな気がしていた。
わずかな希望を持ち、見上げるほど長い階段を駆け上がる。
一番近くにあったお守りを売っている所の巫女さんに声をかけた。
「あの、すいません。葵さんどちらにいけばお会いできますか?」
巫女さんたちの目が怖い。
思いっきり不審がられた。当然のことですよね……。
「えっと、俺は相原と言います。すぐに話したいことがあって。邪気の件だと言っていただければ――」
無我夢中で一気に話す。
今すぐにでも葵さんに話をしなければ。
「その必要はないですよ」
奥から見慣れた服装の葵さんが現れた。
「葵さん! 話が――」
「ここではなんですし、こちらへ」
案内された昨日と同じ場所。
部屋は暗く、外よりも少し涼しい。
ろうそくの炎が揺らめく中、葵さんは俺だけを見ている。
「で、お話って何ですか?」
言葉にとげがある。
「あの、聞きたいことが……」
「あなたには戦えない。資格が無いのよ? それでも聞きたいことですか?」
「あぁ。一つだけ聞きたいんだ。東条さんの持っていた数珠。あれって中に刀が入っていただろ?」
すごく小さな刀。
でも、その刀で戦っている。きっと俺の知らないところでは大変なことが起きている。
そんな気がしてままならない。
「そうですね。確かに刀は入っています。今は私の薙刀も一緒に」
葵さんは嬉しそうに首からぶら下がっている勾玉を握りしめている。
鬼と戦うことがうれしいのか?
「武器って増やせるのか?」
「不可能ではないですね。清め、朱音様が受け入れれば増やせると思いますよ」
「そうか……。ありがと、聞きたいことはそれだけだ」
俺は葵さんに別れを告げ、急いで元来た道へ戻る。
そして道場に行き、いつもと同じ稽古を受けた。
「せ、先生もう一本お願いします」
「ふぅー、そろそろ休憩じゃ」
放課後から東条さんの姿を見ない。
今日は何をしているのだろうか。
鬼とどこかで戦ったいる? 俺と同じ年の女の子が……。
この気持ちをどうしたらいい? どうして俺はこんなに無力なんだ。
「おじいちゃん、そろそろ時間だよ?」
「おっと、もうそんな時間か。今日はここまでじゃ! 掃除はよろしく!」
先生は早々に道場から出ていく。
また俺だけ掃除か。
「相原さん、大丈夫?」
床に寝ている俺を覗き込んでくる東条さん。
今日は怪我もしていない。
「俺は平気。東条さんは?」
「ん、今日は何もなかったよ」
「そっか……。あのさ、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
俺は起き上がり、東条さんの目の前に立つ。
「いいけど、どうしたの?」
「あのさ、鬼と戦う時って刀一本で戦っているの?」
俺は彼女たちの戦い方を知らない。
どんな場所で、どんな風に戦っているのかを。
東条さんは初めは躊躇したけど教えてくれた。
初めて戦った時の事、葵さんと共闘した事。
俺が思っていたよりもずっと過酷だ。
そんな時に俺は……。
「あのさ、武器って増えたほうが今よりも楽になるかな?」
「武器?」
「そう。もし、刀が手元から離れたり、いつか空を飛ぶ鬼に会ったりしないかな?」
犬のような鬼。それに人のような鬼。
もしかしたら鳥のような鬼もいるかもしれない。
東条さんは少し考え込んでいる。
「確かに刀一本だと少し不安ですね」
俺はバッグから紙袋を手に取り、東条さんに渡す。
「だったら銃とか使ってみるか? 俺だったら少し整備できるぜ?」
渡したのはハンドガン。
女の子でも扱えそうな銃を持ってきた。
「え? でもこれっておもちゃじゃ?」
「貸して」
俺はそのまま安全装置を解除し、自分のバッグに向かって引き金を引く。
――スパァァァァァン
道場に響き渡る音。
その音を聞いた東条さんは少しびっくりしている。
「え? おもちゃじゃ、ないの?」
「一応玩具に入るのかな。でも普通に売っている銃だよ。電動ガンって知ってる?」
マガジン部分にバッテリーを搭載させ、弾数は三十発。
同じ銃を二丁。もちろん替えのマガジンも持ってきた。
「い、痛くないの?」
「痛くないよ。もしかして初めて?」
「うん……」
「少し練習してみる? もしかしたら有効な攻撃手段になるかもしれない」
俺にできること。
攻撃手段を増やす。武器を増やして、遠距離から倒せるようになれば、今よりも安全に戦えると思う。
初めは弓とかボウガンを考えたけど、矢がすぐになくなってしまう。
それに、両手で使う武器なので、刀が握れなくなる。
片手で使える遠距離武器。
部屋に合ったこの銃が目に入った。
もし、これが使えるとしたら……。




