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決意


 何あれ、犬じゃない。


「一体ですね。二人でかかれば大丈夫だと思います」

「あ、あの……。あれって?」


 少し離れた所に大きな人のような黒い塊が動いている。

犬じゃない。きっと普通の人よりも二回り以上大きい。

そして、何かこん棒のようなものを持ち歩き、ウロウロしている。


 怖い。あんなのと戦うなんて、私には無理だ。

手が震える。だめ、足がすくむ。


「朱音様、怖いですか?」

「う、うん。すごく、怖いよ。あんな大きな人――」

「あれは人ではありません。鬼です。邪気が人に似た形をしているだけの」

「わかってる。でも、あんな強そうな鬼と。しかも私達よりも大きいし、勝てるのかな?」


 葵さんは薄華桜を握りしめ、私を真っすぐに見てくる。


「強そうですね。私も怖いですよ。でも、浄化しなければ、もっと大変なことが起きてしまいます。街にはたくさんの人が住んでいます。すでに漏れてしまった邪気のせいで、犠牲になった人も……」

「犠牲になった人……」

「でも、今の私には朱音様の力を借り、浄化することができるようになりました。私は神社に仕える者として、代々受け継いできた者としての責任があります。ここで、逃げるわけにはいきません!」

「葵さん……」


 笑顔で私を見る葵さん。

その目には何か決意したような、そんな気迫を感じた。


「朱音様はここで待機していてください、私が浄化してきます。初めての実践なんで、私も練習したいんですよ」


 顔は笑顔だが作り笑いだとすぐにわかった。そして葵さんの手も少し震えている。

でも、葵さんは両手で薄華桜を握りしめ、その震えを無理やり止めた。


「では、行ってきますね」


 そう言うと葵さんは私の元から離れ、鬼に向かって走って行ってしまった。


「葵さん!」


 怖い、怖い、怖い……。

なんで私が、どうして私なの? なんで? どうして?

頭の中がぐるぐる回る。


 前は少し大きめの犬だった。

だから何とかなると思った。でも、今回は違った。

体の大きい、本物の鬼のような邪気。


 でも、葵さんは一人で立ち向かった。

私は一人で何をしている?


「やぁぁぁぁぁ!」


 葵さんの声が響いてきた。


「ぐぁぁぁぁぁ!」


 葵さんの薄華桜が鬼の脇腹を何度か払い、傷がついている。

すごい、葵さん強いんだ。


 鬼が手に持っていたこん棒を振り回し、葵さんに攻撃している。

葵さんはこん棒をうまく避け、地面に当たったこん棒は激しい音を立て、地面をえぐっている。


 あんな攻撃反則じゃない。

当たったら軽い怪我ではすまされない。

でも、それが今目の前で起きている。


 これが私の見ている現実。

夢ではない、現実なのだ。


 葵さんはこん棒を何度も避け、鬼に少し距離を取りながら、薄華桜で鬼に攻撃している。

少しずつ、鬼の体に傷がつき、動きが鈍くなってきたように見えた。


「がぁぁぁぁ!」


 鬼がこん棒を振り下ろし、その衝撃で地面がえぐれた。

そしてその衝撃で葵さんが吹き飛ばされる。


「きゃぁぁぁぁ!」


 吹き飛ばされた葵さんは体勢を崩し、倒れこんでいる。


「うぐぅ……」


 そこに鬼が追撃しようと再びこん棒を振り上げた。

まずい、葵さんはまだ立てない。


 私は何も考えず、飛び出していた。

そして、鬼が振り下ろしたこん棒を持っている腕に紅蓮刀を力いっぱい突き刺す。


 息が、できない。声も出ない。

ただ夢中で鬼の腕に紅蓮刀を突き刺した。

鬼の腕からこん棒が葵さんの真横に落ちる。


「朱音様……」

「葵さん、ごめん。私も、私も一緒に!」


 ゆっくりと起き上がった葵さんは再び薄華桜を手に取り、構える。

私も鬼の腕に刺さった紅蓮刀を抜き、葵さんの隣に立った。


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