新しい生活の始まり
「――さん。東条朱音さん!」
窓の外を見ながら、流れる雲の数を数える。
今日も沢山の雲が流れ、一日が終わるんだろうな。
「東条、朱音さん!」
「はいっ!」
「三回目ですよ」
高校二年の春。私は新しい高校に通うことになった。
突然の編入生、周りはみんな一年生からの進級。そう、私だけ浮いている。
話しかける友人も、一緒に帰る友人もいない。
かといって、部活をするわけでもない。
今日もクラスメイトとろくに話もしないで、まっすぐ家に帰る。
古い家、母の実家にこの春からお世話になっている。
「ただいま」
廊下の奥から足音が聞こえてきた。
「お帰り。今日も早かったね」
優しいおばあちゃん。
おばあちゃんの作るご飯はおいしく、最近は料理を教わる事が多くなった。
「帰ったのか! よし、今日もじーさん頑張るぞ!」
「はいはい。朱音ちゃん、悪いわね付き合ってもらってしまって」
「いえ、特にすることもないので……」
おじいちゃんは昔、道場を経営していたらしくそれなりに門下生もいたらしい。
年には勝てず、ずいぶん前に道場はやめてしまったと。
ただ一人だけ、隣に住んでいる子の稽古をしているらしい。
隠居生活なので、それも一つの楽しみだと無料で見ているのだと。
どうして私も一緒に稽古しないといけないのか……。
「着替えたら道場に来るんじゃぞー。じーさん待ってるから!」
元気なおじいちゃんは稽古着のまま消えていく。
私も自分の部屋に行き、制服からジャージに着替える。
準備が終わり、道場で稽古着に袖を通し、帯を締める。
見た感じだけは、それなりに強そうなんだけどね。
「お待たせしました」
「では始めるぞ! 朱音、いつものように」
私は一本の竹刀を構え、おじいさんに向かって振り下ろす。
おじいちゃんは腕できれいに竹刀を流し、私の懐に入ってくる。
「ふふん。まだまだじゃの」
「おじいちゃんが早いんですよ」
――ガララララ
「こんにちわはー。先生いますか?」
少しやせっぽっちの彼は相原智也。
私と同じ高校に通う、同級生。しかも同じクラスだ。
「おう! よく来たな。では、さっそく始めるかのー」
制服で来た相原さんはそのまま道場の隅っこで着替え始めた。
あの、私一応女子なんですが。
何度か彼の背中を見たことがあるが、意外と引き締まっている。
パッと見た感じ華奢に見えるが、案外筋肉質なのかもしれない。
着替えが終わり、帯を締めこっちに向かって歩き始めた。
「今日も一日よろしくお願いします」
彼は礼儀正しく、おじいちゃんに挨拶をした。
「はい、よろしく。ほれ、朱音もあいさつ」
おじいちゃんに言われ、はっとする。
「よ、よろしくお願いします」
少し頬が熱くなったのがわかる。
恥ずかしい……。
初めましての方は初めまして。
おなじみの皆様はお久しぶりです。
作者の紅狐と申します。
今回初めての女主人公を書いてみることにしました。
刀と銃を武器に、鬼を倒していくローファンタジーです。
高校も舞台に入ってくるのでラブコメ要素も入れていきます。
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