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57 座敷わらし、沼蟹に狙いを定める

 静水館にもどり、沼のことを相談したかったのでラトレルさんに声を掛けた。

 食事をしながら話すことになったのでラトレルさんは私たちに合わせて今日はいつもよりも早めの夕飯だ。


「フェルミがオラクとトーヤに会いたがってたぞ。孤児院に訪ねて行ったとき失礼な態度をとってしまったからって謝りたいそうだ」


「だって具合が悪かったんですよね。そんなこといいのに。あれどうかした、お楽?」


 たぶん凄く嫌な顔をしていると思う。本当に嫌だからな。フェルミが来るってことは絶対ついてくるではないか、あの御方が。


「私はほら、何故かみんなに言葉使いを注意されるから娘を怖がらせるかもしれないしな、謝罪だけなら十也だけでいいと思うぞ」


「あ? ああー、無理無理無理、僕は人見知りだからさ、ひとりで知らない子と会うなんて絶対無理だよ」


 ちっ、十也も気づいたようだな。


「二人ともどうした。女の子は苦手かい」

「そういうお年頃なんじゃない? 女の子と会うのが恥ずかしいんじゃないかしら」


 私たちの会話が聞こえたのか給仕中のベルナさんがそんなことを言いながら通り過ぎていった。


「えーちょっとー、ベルナさん違うからー、そういうんじゃないからね」


 十也は必死に否定しているが、確かに十也はそういう年頃だった。チョコレートを貰っていたしな。


「相手がどうしてもと言うのなら、ラトレルさんが一緒の時にしてくれ。それも一度だけだ」

「なんだかわからないけど、俺が一緒ならいいんだね。フェルミに都合を聞いておくよ。」

「よろしくお願いします」


「それより、沼のことを教えてくれ。場所は知っているのか。他の冒険者はどうやって捕まえているんだ」


 今日はそのためにラトレルさんに来てもらったんだ。気が重くなるエウリュアレ様のことはさっさと忘れよう。


「沼までの道は大丈夫だ。俺はひたすら沼に槍を突き刺して獲物が刺さるまでそれを続けていたけど沼蜥蜴は刺さったことがないし、沼蟹は槍で刺して傷がついたら価値がすごく下がるから俺とは相性が悪いんだよな」


 でも納品している冒険者もいるのなら捕獲方法があるはずだ。


「沼蟹は小動物を捕まえてそれを沼に沈めておくと釣れるらしいんだ。ただそれを引き上げる時に暴れるし、動きも早いからハサミが危ない。しかも毒棘を全身に纏っているからそれが刺さったらすごく痛いらしい。専門にしている人は革の防護服を特注したって聞いたけど、それだって防護服をハサミで切られてしまえば意味がないから大変らしいよ」


「触れることが難しんだな。それだったら防護服を金属で作ったら切られないんじゃないのか?」


「沼蟹をとるためだけに金属の防具を特注しても、元が取れるまでかなりかかるだろうね。今まで作ったって人を俺は聞いたことがないな」


「うわーなんか聞いてるだけでやだよ。お楽はそれを捕まえるつもりなんだよね」


「ああ、どうやって捕まえるかは考え中だがな。とりあえず明日はいろいろ試してみよと思っている」


 ラトレルさんとは相性が悪い魔物なのであまり情報を持っていないらしい。行き方は知っているそうなので、私ひとりでもちゃんとたどり着けるように、後できちんと教えてもらうつもりだ。


「万が一オラクが毒棘にやられたら困るから明日は一緒に沼までついて行くよ」


 有難いことにラトレルさんは道案内もかねて沼まで一緒に行ってくれることになった。


 今回は蟹を釣るだけだ。道さえわかれば楽勝に違いない。 


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