43 座敷わらしと甘味と十也の優しさ
次の日、ラトレルさんに今日の予定を話し、Eランクの狩場から奥には行かないことを伝えた。
「それでも十分気をつけるんだよ」
心配しつつ送り出してくれた。
念のためセンターで荷車を借りて十也、ネコ、私の三人でテンゴウ山へ向かうことにした。
センターで荷車の手配をしてもらおうと受付カウンターの列に並んでいて、私たちの順番になったら担当眼鏡がやって来た。
影狼の件で怒られるかと思ったが、それについて何も言われないどころか、『お二人はこちらへどうぞ』と空いていたカウンターに呼ばれ手続きを担当眼鏡がしてくれた。
初対面の時は睨まれていたのに今日は別人かと思うほど態度が柔らかくなっている。不思議だ。
今日はウエストポーチは持っていない。ひとりで町を出るとき以外は、冒険者カードは十也に預かってもらうことにしたからだ。
山の入り口に到着。昨日と同じ場所へ荷車を繋ぎ、他の人間と狩場が被らないよう歩きながら主に鳥を探した。
鳥は魔物の中でも生息数が多く、比較的見つけることが簡単。なにより十也の獲物として最適だからだ。魔鳩は群れをなしていることが多い。
しかし一羽仕留めると他は逃げてしまうので効率は良くないがそれほど遠くへは行かない。だから群れを追いかけつつ一羽ずつ撃ち落としていった。
魔雉も途中で見つけたので十也が撃ち落とし、ラトレルさんから借りてきた大きな麻袋に魔鳩と一緒に詰めておいた。他に木の上で魔栗鼠が姿をを現す。これも仕留めて麻袋の中だ。
Eランクの狩場は小動物はわりと多いらしい。昼前に魔鳩八羽、魔雉一羽、魔栗鼠一匹を捕獲した。スリングショットが小動物に向いていることもあり、十也にとってここは絶好の狩場である。
昼食後にもう少し探し歩いて午後にマバト六羽と昨日餌に使った魔物で【山鼠】と言う鼠を一匹捕まえた。
鼠の魔物は種類が多く、【地鼠】、【水鼠】、【火鼠】など他にもいろいろ存在する。見た目はほとんど同じなので生息地で見分けるらしい。
麻袋もいっぱいになったので、暗くなる前に町へ帰ることにした。
今日の稼ぎは十也だけで銀貨一枚、大銅貨一枚、銅貨八枚だ。
まだまだ防具も揃っていないし、贅沢が出来るほど余裕はないが、十也が夕食に別料金の果実を頼みたい言うので二人分頼んでおいた。
今日の静水館の夕食は肉がたっぷり入った野菜炒めだった。これも少し辛めの味付けで美味かったのだが……。
食後に出された紫色の果実に驚愕した。甘いとはこういう味だったのか。
「お楽が甘い物を食べたがっていたでしょ、蜂蜜は手が出せる値段じゃないから果物ならいいかと思って。旬の果物を用意してもらったんだ。実は僕も食べてみたかったんだけどね。味は桃に似てるけど、どう?」
私の霊力と幸運が増えた。十也が私のことを思ってわざわざ頼んでくれたのが伝わった。
「ああ、とても美味い」




