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202 座敷わらし、ニホの料理を堪能する

「二宝さんて、何でも出来るんだね。これ、すごく美味しいよ。ねえ」

「おう。鍋ひとつでいろんなもんが出来るんだな」

「ダッチオーブンの使い方さえ覚えれば、調理はわりと簡単なので、誰にでも作れますよ」

「そうでもねえぞ。料理はセンスも必要だからな。世の中には、何を作らせても不味い物しか出来ねえって奴もいるんだわ」


 十也とアーサーはニホ様が作った、野草と芋のキッシュ、それに丸パンをバンズがわりに使ったチキンバーガーもどきを食べながら褒めまくっていた。


 たまたま鳥の卵を見つけることができたので、ニホ様がダッチオーブンを使いたいと言って、できたものがその二品だ。

 飲み物はもちろん蜂蜜レモン。


 この前、この世界の食べ物は外れを引くとかなりつらい、そう十也が嘆いていた。そのため、旅の間は自分が美味しいものを提供しようと思ったらしい。


 どちらの料理も初めて食べるものだ。


 キッシュは材料が足りないと言っていたが、卵焼きの中にほくほくしている芋と、ナッツが少し入っている。ピリ辛の野草が入っていることで、後を引く美味さだ。


 チキンバーガーは鶏肉を蒸した後、表面だけを粉をつけてパリッと焼いたものを、パン屋で買ってあった丸パンに挟んである。


 どちらも、ダッチオーブンで下ごしらえをしたことによって、短時間で作ることができたそうだ。


 ニホ様の料理は美味い。それがわかったので、夜の食事も楽しみだ。


「ティナさんたちもどうですか」


 食事は自分たちで用意するから必要ないと言っていた猫姉妹。ニホ様はもう一度誘ってみることにしたようだ。


「いや、ボクたちのことは気にしないでくれ」

「そうですか……」


 遠慮しているのか、猫姉妹たちは猫娘が獲ったという魔鳩(まばと)を焼いて食べていた。そしてさっさと食事を済ませると「これから夕飯の分を狩ってくるけど、すぐに戻る」と言って二人で山に入っていってしまった。


「打ち解けるまでには時間がかかるんでしょうね」

「それは僕もそうだったからわかるよ」

「ま、そのうち慣れるだろ。それにしても、チャムが同行することになって、逆によかったよな。知らなかったこととはいえ、俺が追い返した時に、諦めてどこかに消えたりしねえで助かったぜ」

「だよね。イーサンって人がイヴァンじゃなくても、口実ができたんだから」


 猫娘はお荷物だったのではないのか?


「お主らはいったい何の話をしているのだ?」

「アーサニクスに接触するための理由が出来たって話ですよ」


 チャムの主人がイヴァンであった場合、主人公パーティーとの橋渡し役になる。ということらしい。もし人違いだったとしても、会話をすることが出来れば、顔見知りになれるから損はない。


  頑固な猫娘をどうすることも出来なかったので、仕方ない部分もあるのだが、私以外はこちら側にも利があることをわかっていて、猫姉妹を受け入れたようだ。


「ティナがAランクだったのも有り難い話だ。仲間にならないとしても、共闘出来れば相当な魔物や手練れが相手になったとしても、危険の回避率が段違いだからな」

「Aランクって物凄く強いんだろうね」

「びっくりするくらいな。それに、もしあいつらが猫獣人だって町の中でばれたとしても冒険者の高位ランクに喧嘩売るようなやつは、そうはいねえし」

「そうだとしたら、出来るだけ猫姉妹と仲良くしておいた方がいいな」


 嫌われれて敵対されるなんてことは、絶対に避けなければいけないだろう。


「それは、ネコがいるから大丈夫じゃねえか? なんてたって猫神様だからよ」

「やめてくださいよ。それはティニャさんたちの勘違いにゃんですからぁ。それに、いつ間違いだったって気づいて、そっぽを向かれるかわかりませんし」


 からかわれたネコが両前足を振りながら否定している。


「それにしても、なんでさよならも言えずに別れちゃったのかな」

「この前みたいに、仲間の猫獣人が勝手にチャムさんを連れ帰ったのなもしれませんね」

「だとしたら、イーサンの方も探してるかもれねえし、それで俺たちが誘拐犯だと思われても困るな。チャムにもうちょい詳しい話を聞いておいた方がいいか」

「そうですね」

「会話になればいいのだが……」

「そうだね……」


 一応、私たちの旅の目的は二人に話してある。

 アーサニクスという人物を探していて、そのために、まずは情報収集のため、魔法使い協会に行くこと。ついでに魔法使いだけを狙っている人攫いのことも調べていること。

 その仲間にイーサンらしき者がいそうだということ。


「ふと思ったんだけど、あの二人は最終決戦に関係あったりしないのかな。ブランさんの本には出てこなかったけど、ティナさんがアーサニクスの仲間になれば、かなり有利になりそうだと思わない? フェルミさんがヒロインのひとりだったみたいにさ」

「冒険者の中で、上から数えた方が早いのは確かですしね」

「そうだとすると、私たちが連れて行かなければ、イヴァンに会うことが出来なかったのかもしれんな。また話が変わってしまう恐れがあるのか」

「どうだろうな。イーサンがイヴァンじゃねえから、あいつらが本筋に絡むことがなかったとも考えられるけどな」

「どっちにしろ、会わせてみるしかないと思いますよ。もし、イヴァンがチャムさんのご主人様だったとしても、アーサニクスの仲間になるかはわかりませんし」

「フェルミさんが離脱したことで、きっといろいろ変わっちゃてるから、僕たちがいくら考えたって未来予想はできないよ。大筋だけ追って修正していくしかないんじゃないかな」

「ここで、ああだこうだ言っていても仕方ない。まずは、アーサニクスを見つけることが先決だろう」

「とりあえず、二人が戻ってきたらイーサンの話を聞きませんか。人狼がどんな性格なのかも知っておく必要もあると思いますよ」

「ニホが言うように、チャムは獣人だったから、助けられた可能性もあるしな。人族に対して敵意がないとも限らねえ」

「どんな小さな情報もないよりは、あった方がいいからね」


 ということで、私たちは猫娘に人狼のことを詳しく聞くことにした。


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