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19 座敷わらし、職業仲介センターに行く

 寝る場所は確保できたし、時間的にはまだ早いのでとりあえず情報収集のため、町の中央にある職業仲介センターに行ってみることにした。

 みんな通称で『センター』と呼ぶらしい。宿屋で仕事を探していると言ったら三頭身の少年が場所を教えてくれた。


 十也の靴擦れや頬の腫れも薬屋で軟膏を買えばいいそうなので見つけたら寄ろうと思う。

 あと洗い場というところもだな。




 職業仲介センターはこの町で一番大きな建物だ。三階建てだが、一階づつの高さがかなりあり天井まで七、八メートルほどはあるので日本の建物と比べれば倍の高さになる。

 入口も武器を所持した冒険者が行きかうためか片扉だけで二メートルはあるだろう。とにかくすべての規模がでかい。


 中に入ってみると、本当に私たちが思っていた冒険者ギルドのようで、広いロビーに受付カウンターがあり、受付業務の女性の前に冒険者が並んでいた。その服装も革や金属の鎧を着けていたり、ロングソードやバトルアックス、ダガーなんかを持っていてファンタジーそのものだ。


 ここは物語のように酒場は併設されていない。たむろしているガラの悪そうな冒険者も見当たらないし、もちろん酔っ払いもいなかった。

 その代わりセンターの周辺は食堂が軒を連ねているので、夜遅く歩き回るのは気を付けたほうが良さそうだ。



 十也は目を輝かせてギルド内を見まわしている。読んでいた小説の世界が目の前にあるんだ。テンションも上がるだろう。


 保護者のつもりで、こんなことを言ってるが、実は私も興奮している。


「そこの子ども、バスアモーリ様の通り道をふさぐでない。無礼であろう」

「あ、すみません」


 突然うしろから怒られた。十也がすぐに謝り横へよけると、ピッカピカの金属の鎧を身に纏った金髪の小太りの青年が、従者と思われる騎士風の中年の男二人を連れて通り過ぎていった。


「あの人も冒険者なのかな」

「たぶんな」


 キョロキョロしていると邪魔になりそうなので、とりあえず受付の列に並んでみたが、視線が気になる。


 念のため十也へ視線が向かないように、私は町に入ってから外套を羽織るのはやめて、自分の方が目立つように当初の革の胸当てをつけた冒険者風に服装にもどしていた。

 私たちは浮いているのだろうか。


 それでも誰ひとり私たちに声をかけてこようとする者はいない。


 先ほど道をふさいでいたせいで叱責はされたが、子どもだからと言って喧嘩を売ってくるような冒険者はいないようだ。


 順番が前に進むにすれて、再び十也と二人で目を丸くしている。

 センターのカウンターがとても不思議なつくりだったからだ。壁があるわけでもないのに受付と話している冒険者の声は、その真後ろに並んでいても私たちには何も聞こえてこない。

 会話が他人に漏れないようにできているらしい。


 これも何かの魔法なんだろうか。


 それほど待たずに私たちの順番になったので冒険者の登録方法を聞いてみた。


「でしたら一番右側に登録受付の窓口がありますのでこの番号札をお持ちになってお待ちください」


 そう言われたので場所を移動した。登録窓口には他には誰もいなかったから、すぐに自分たちの番号が呼ばれる。


「ご登録ですね。職業は冒険者でよろしいですか。職業の経験値によって受けられる仕事内容が変わってきますし、途中で職業を変更した場合は以前の職業のランクは引き継げません。再度最低ランクからになります」


 職業仲介センターでは商業、農業、加工業など職業によって紹介してもらえる仕事が違うらしい。商業であれば読み書き、計算ができて、商売の経験が多いほど、大店に斡旋してもらえるようだ。たいていは幼いうちから商店で丁稚修行を続けてその店で働き続けることが多い。店や生活拠点を移動した場合、町のセンターで仕事を探す際にはランクが上がっていた方が有利になるとか。


 農業も経験によって、任せられる内容や仕事量が変わるので給金が違う。何も特技がなく安全に暮らしていきたければ農業に従事してランクを上げるのがいいらしい。


「どの職業もランクとセンターの個人情報で管理されております。個人情報はランクと異なり自動更新ではありませんので申告や申請は必ずご本人がしてください。代理の方の場合は、申告に不備や間違いがないようにお願いします。後々問題になる場合もございますので十分ご注意ください」


 例えば猪を持ち込んだ人間と実際に狩った者が違う場合、能力がなかったとしても、何も言わなければセンターの個人情報では持ち込んだ者の討伐記録として猪一頭と明記されてしまう。


 能力との差がでてしまい、正確な個人情報にならないので困るらしい。

 あまりにもランクと釣り合っていなければ信用をなくすし、意図的に虚偽の申告をした場合ペナルティがつく場合もあるそうだ。


 冒険者はどの職業にも属さない便利屋で、誰にでも一獲千金を狙えるかわりに命懸けの仕事が多くなる。

 私たちは明日から宿に泊まる金がないので、日雇い、即日払いの冒険者を選んだ。


 それに物語の主人公を探してついて行く必要があるなら、冒険者としてランクを上げて強くなる必要がある。


 大抵の職業は長期契約になるのでセンターに顔を出すのは冒険者が多い。今も周りを見渡せば冒険者風の人間ばかりで、武器などの装備をしていない者は数えるほどしかいなかった。


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