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172 座敷わらし、魔法の違いに気がつく

「ここら辺はあんまり冒険者が狩場として使ってないみたいだな」

「ああ、これでは危なすぎて奥にはいけそうにないね」


 アーサーとラトレルさんが言うように、私たちが狩りを始めようと思っていた場所は背の低い樹木が多いためか、下草が一メートル以上伸びて藪になっている。

 獣が隠れるには最適な環境で、小動物ならいいが、万が一肉食獣の魔物が潜んでいた場合、不意を突かれればアーサーですら襲われる可能性があるそうだ。


「逆に人の手が入っていない分、穴場だったりすることも多いんだ。だからと言って、わざわざ危険を冒す必要はねえと思うんだけどよう……」


 隠れる場所が多いと小動物の生息数も多く、それを餌にする大型獣もうろつく。そして、草の他にも食べやすい位置に若葉がある小さな樹木が多いといいうことは草食のうちでも大型の魔物も往来している可能性が高い。そう言いながら、アーサーは意味ありげにフェルミとニホ様へ目を向けた。


「私たちに何か?」


「おまえら、どの程度魔法が使えるんだ? それによったら、進めないこともねえぞ」

「具体的に何ができたらいいのか、それを教えてもらった方が私はわかりやすいんですけど」

「やってほしいのは単なる草刈りだ。安全に進める範囲だけ、道をつくってくれたらいい」

「草刈りですか……私が得意な魔法は雷と水なので植物の排除には向きませんね」

「いや、無理する必要はねえから、もう少し町の近くまで行って、そこから山に入ればいいだけだ。行くぞ」


 アーサーは別の入り口を探すようだ。ところがそれに異を唱えた者がいた。


「そんなこと簡単」


「「「え?」」」


 フェルミがボソッとつぶやいた声でみんなが一斉にそちらを向いた。驚いている間もなく、フェルミは杖を藪の方向へかざし風魔法を放つ。


 シュルシュルと音がした場所は根元から五センチほどの高さを残して草が切り取られているようだ。それでも密集している草の塊はただ根元が切られただけで、その場所を道として進むなら、それらを除去しながら進まなければならない。

 結局その作業をするのであれば、危険度はたいして変わらないように思える。


 十分ほど、あたり一面で草を刈るらしき風の音がしていたかと思うと、フェルミが大きく杖で輪を描いた。

 今のフェルミは、魔法使いとして力も技も一流の域にあり、無駄を極力省いて的確に魔法を行使している。だから、みんなは邪魔をせず黙ってそれをただ見守っているだけだった。


「終わった」


「「「え?」」」


 フェルミが杖を横に薙ぎ払った瞬間、強い風が吹く。その風で髪がうねって前が見えずらいから、私はそれを手で押さえながら、正面で起きていることに注視していた。


 魔法で起きた暴風により、あたり一面にあった草がきれいさっぱり吹き飛んでいる。それはかなりの広範囲に及び、しかも、細いものなら樹木まで排除されてたので、風が止んだ時には、目の前に開けた空き地部分が出現していた。そして、刈り取られた草は両脇に山のように積み上げられれ、壁のようになっている。


「すげえなフェルミ。これだけの腕があれば、開拓地で引く手あまただろうな……」


 絶賛しながらもアーサーの表情は渋い。強い仲間を求めていたアーサーにしてみれば、大喜びしそうなものだが。


「だからこそ、魔法使いの協会になんて入ったら、自分の意思で動けなくなるぞ。使い勝手がいいやつは、やりたくもねえ仕事をさせられるらしいからな」

「でも、魔法使いは協会に入った方が一人前になる一番の近道だって聞くから、リーニアでは声が掛かった本人はもちろんだけど、家族ももろ手を上げて喜んで送り出していたよ」

「そうらしいけど、俺は協会から逃げ出して来たって奴と話をしたことがあってさ、結局組織ってのは、金儲けのためにあるから、下っ端は上が贅沢するためにあくせく働かせられるって言ってたぞ」


「あら、何を言っているのかしら。そんなことは当たり前じゃないの。そうでなければ、わたくしが、部下や配下なんて作る必要がないのだから」


 たぶん、エウリュアレ様は今まで誰かの下についたことがなく、神を抜いて考えれば、常に頂点で君臨してきたはずだ。そのエウリュアレ様にとって、底辺の妖精など取るに足らない存在なのだろう。まあそれは、どこの世界でも同じようだ。


「フェルミちゃんは誘拐魔と魔法使い教会に実力が知られないように気をつければいいんだよね」

「本人がどうしたいかが一番だが、自由でいたけりゃその方がいいと思うぞ」

「ほら、今はさ、Bランクのアーサーに、Cランクのラトレルさんが一緒だから、どんな魔物をセンターに持ち込んでもフェルミちゃんが周りの人の目に留まるってことはないよね。今回みたいに魔法を使う時だけ誰かに見られないように気をつければいいんじゃないの?」

「トーヤが言う通りだね。だから、フェルミは俺たちがいない時には魔物の取り扱いにも気をつけるんだよ」


 いつもなら、自分のことを話されていても、関係なさそうなそぶりをしているフェルミが今日はアーサーやラトレルさんの話に耳を傾けている。


「ニホも。あたしより強いから」

「ああ、それは確かにな」

「ニホだったら、そう簡単に捕まったりはしないわよ。その辺にいる只の人間になんて敵うわけがないもの」


 フェルミの言葉に私やエウリュアレ様が反応すると、十也が不思議そうな顔をしながらニホ様へと視線を向けた。


「なんで、僕たちはこんなに違うんだろう。同じ場所から来たのに二宝さんだけ神様からチートが貰えたってこと?」

「そんなわけありませんよ。たぶんそれぞれの適正があるんじゃないですか? 逆に私は樫君のようにスリングショットは使えませんし」

「そうかなあ」

「そうですよ」


 魔法に憧れている十也にとって、先ほどフェルミがやってみせた魔法を羨ましく思ってるはずだ。それよりもニホ様の方が上だと言われたら、なぜ自分には能力がないんだろうと思ってしまうのかもしれない。


 その答えは至極明快で、ニホ様はみずち様だからなのだから、雷と水を自由自在に操れるのは当たり前のことなんだが。


「あ、正確に言うとニホさ……のそれはこの世界の魔法とは別物ではないのか?」

「お、お楽さん!」


 思ったことを口に出したらニホ様に怒られた。ちゃんと途中で気がついて言い換えたのに……。


 でも、考えてみたら、ニホ様とフェルミが使用している魔法の根本が違えば、十也がどうやったってニホ様のような魔法を使うことはできないはずだ。

 そして現地人ではない十也はフェルミとも違って、この世界の魔法をも使える可能性がとても低い。と言うことは……。


「残念だが諦めろ」


「はあ? 何をさ?」

「か、樫君。お楽さんとまともに話をしようとしても無駄ですよ。私たちとは何もかもが元から違うんですから」

「それはそうだけど……」


「なあ、フェルミたちが行っちまったぞ」


 アーサーが言うようにフェルミとエウリュアレ様、その二人を追うようにラトレルさんとネコが、いましがたフェルミが作った広場へ足を踏み込み、その先の山へと向かっていた。


「私たちも行きましょう」


 十也は納得がいかないのか、返事もせずに歩き始めた。

 その分十也は、スリングショットの腕を磨けばいいのではないのか?


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