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17 座敷わらしと始めての町

 道に沿って歩いているとだんだんと人の気配が濃くなってきた。


 十也と相談した結果、来た道から一番近い入口ではなく、大まわりになったとしても、冒険者殺しの疑いをかけられないないために、念のため別の入り口から入ることにした。


 いまは人と会わないように森の中を歩き、町を迂回をしているところだ。


 左手側の先は何十メートルもある切り立った断崖の壁になっていて、この場所からだと上の方はほとんど見えない。


 右手には町がある。遠目に見えた町の周りは二メートルほどの壁で囲まれているが、石が積み上げられた壁なので、ちょっとした道具があればよじ登ることは出来そうだった。人間の侵入除けというよりは獣や魔物対策なのだろう。


 町に着いたときに、ちょうど鐘の音が三回鳴った。たぶん今は、午後の三時なのだろう。


 迂回しているとはいえ、ここまで来るのにかなり時間がかかっている。結構大きな町だと思うのだが、町の入り口では、きちんとした身なりの門番が数人立ってはいるものの、出入りしている人々はチェックされることもなく素通りをしていた。


 なぜか、門から出る子どもだけが止められて確認されているようだ。私達もまだ子どもの部類。大丈夫だろうか。


「我は先に行きますね。(にゃか)で合流しましょう」


 ネコはさっさと塀を登って行き、てっぺんで私たちの様子を眺めている。私たちが無事町の中に入ることができれば向こう側へ降りるつもりなのだろう。


「よし、行くか」

「なんだかドキドキするよ」


 門には観音開きの大きな木製のドアが設置されていて、今は内側に大きく開いていた。そこを十也と二人で通り過ぎる。


 門の横には石造りの大きな建物があり、そこに守衛所がついていて、門番が何人か待機していた。その中の数人がチラッとこちらに視線を向ける。

 だが、ただそれだけだった。


「誰も声をかけてこなかったな」

「簡単に入れちゃったね」


 呼び止められることもなく入ることができた。どこから来たとかいろいろ打ち合わせをしてきたから拍子抜けした。この町には、王族のような高貴な人物が暮らしていそうな城のような建物が遠目にも見当たらなかったので、それほど厳重に警備をしていないのかもしれない。


 町の中には門から続く幅が十メートルほどある大通りがあり、その周りには石造りの建物が多い。地面にもレンガが敷いてある。

 道端の花壇には色とりどりの花が咲き誇って華やかだ。それが遥か先まで真っすぐ伸びていた。


 ところがいったん路地へ足を踏み入れると、多少は平石が埋めてはあっても、ほとんどが土を固めてあるだけで、整備されているとは言えない状態だ。


 私がこの世界を小説の中だと思っているからだろうか、まるで舞台の表と裏を見ている感じがしてしまう。


 ポニーテールが『なんだかわからねぇ使役獣が隠れていやがった』と言ったのはヒクイドリのことだと思うが、万が一ネコのことも含まれていたら一緒に行動するのはまずいかもしれない。だから周りの反応を見るために、町の中で合流してから、ネコだけは私たちの少し前を歩いている。



 ネコをちらっと見る人がいても、誰もめだった反応はしないので、この世界にも()は存在するらしい。この世界の猫が話せるかはわからないので、確認できるまで人前ではネコと口を利かないように気をつけなければ。


「ネコちゃん良かったね」

「オークとかと同じ括りだったらさすがに困っちゃいますからぇ」


 問題なく町に入ることができたので、まずはこの町で国や町の名前を調べ、本当に本やゲームの中なら主人公を探さなければいけない。


 小説だったら冒険者ギルドや酒場で情報収集するのが一般的なのだろうが、新参者は絡まれるシチュエーションだ。しかも私は性別不明で十也は片頬が腫れている。かなり危険ではないだろうか。


 これからどうしようかと悩んでいたところ、急に十也が足を止めて立ち止まった。


「ねえ、あれなんだと思う?」


 十也が目を向けている方向には不思議な物体が歩いていた。


(おんにゃ)の子の着ぐるみですかねぇ? (にゃか)に人が入っているんでしょうか」


 そこにいたのは人間の形はしているが、デフォルメされている所謂ゆるキャラのようなもの。


「三頭身だし、あの大きさだ。たぶんそうだと思うが」

「魔物がいるような世界なのに、いきなり現代っぽいものがあるとちょっと混乱するよ」

「それでも何か意味があるんだろうな。あれが出てくる小説は覚えているか?」

「ない」


 じろじろ見ていたので視線に気づかれたのか、ゆるキャラが振り返る。私たちは目をそらし急いで歩き出した。


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