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162 座敷わらし、モフモフに変幻する

 西門にラトレルさんがやって来たので、これで旅のメンバーが全員そろった。

 もちろんネコも合流している。


 アーサーにネコを紹介する際、そのまま猫の妖精だと話したら、ちゃんとそこに存在しているのに、気体のようなネコの身体がとても不思議なようで、ラトレルさんもやったように、何度もネコにさわろうとしていた。

 みんなやることは同じらしい。


 まずは、途中にある温泉を目指す。


 できる限り町と野営地で寝泊まりをする予定なので、アムーリン領まではアーサーが言っていた片道一か月では難しいらしい。


 アーサーの場合、危険も顧みずに、ほぼ野宿で移動していたようだから、十也やニホ、それにフェルミのことを考えると、急ぐよりは安全性を重視するべきだ。それについては私も同意する。


「そんなに前じゃないけど、この道、リーニアの町に来る時に通ったから、なんか懐かしいなって思っちゃうよ」

「私はテンゴウ山で迷って、その道中でこの道を使ったからそれほどでもないが」

「私も向こうから来ましたよ」

「やっぱり、みんなはじまりの荒野に転移してきたんだね。でも本当になんでだろ」


 十也は首を傾げているが、たぶんそれは、ニホから渡されたチョコレートのせいだとは思うし、絶対にニホが何かを隠している。


 でもそのことは、証拠がないので現段階では十也に話していない。

 十也に関しては、ニホから睨みが飛んでくるので、仲間割れの原因になるような、波風を立てることは避けた方がいいだろう。

 私は徐々に探っていこうと思っている。


 まあ、ネコがニホのことは全部知っているのだし、あえて私たちに伝える必要がないと判断しているのであれば、元の世界に戻る方法をニホも知らないということだろう。


「十也が帰りたがっているんだから、知ってたら教えるだろうしな」

「何の話?」

「いや、なんでもない」


 そんなことより、この道の先にはオークがいる森がある。

 十也はオークにトラウマがあって、またあの日のことを思い出しでもしたらまずいと思うんだが大丈夫なのか。


 私はこっそりラトレルさんに現在の状況を聞いてみることにした。


「ああ、もうほぼ討伐されたそうだから、ほとんど残っていないと思うよ。それより、オラクたちは東から来たんじゃなくてこっちからだったのか?」

「あの時は西側で問題が発生していたからな。下手に巻き込まれたくなかったのだ」

「もしかして、未確認の魔物って……」

「……」

「わかった。答えなくていいから」


 私は嘘がつけないから、ラトレルさんの質問に返事はできなかった。

 私が黙っていることが答えになってしまっていはいるが、それはラトレルさんも察しているようだから、よしとしよう。


 出発そうそう、今夜は一晩だけ、ただっ広い荒野の真ん中で野宿をしなければいけない。


 ネコと私とエウリュアレ様は睡眠の必要がないので、不寝番でも問題なさそうなアーサーとラトレルさんにもしっかりと寝てもらうことにした。


「もう、姿を変えてもいいかしら」

「さすがにみんなの前じゃダメだよ、エウ」


 エウリュアレ様の普段着は、男性陣の目のやり場に困るそうだ。肌の露出がすごいからな。


「だったらそうね。あの岩の陰で着替えてくるわ」


 そう言って、フェルミと、ついでにニホも連れて岩の陰で変身してきたエウリュアレ様。事前に話してはあったが、やはりアーサーは驚いている。


「本当だったんだな……」


 どうせだから驚きついでに、私のことも知っておいてもらおう。


 私は動物園で見た、羊だか山羊だかわからない大きなモフモフした動物に変幻する。


「うわっ、ちょっ、なんだよいったい!?」


 目玉が落っこちるのではないかというくらい見開いて驚愕しているアーサーに十也が声をかけた。


「なんかね、お楽はこういうことができちゃうんだよ。ちなみに僕たちはこんなことできない普通の人間だからね」

「本当にすげえな。期待以上に面白すぎるわ」

「お主たち、夜は私に寄りかかって眠るといいぞ」


「しかも喋った!」

「お楽にいちいち驚いていたらきりがないよ。こういう生き物だと思っておきなよ」

「ああ、世の中俺でもまだ知らないことがあるのな」


 アーサーが嬉しそうに私を見つめている。

 そのきらきらした瞳で見られるのは嫌ではない。崇め敬え、そうすれば私の霊力が増える。


 ただ、アーサーからは好奇心しか感じられないから、私が思っているのとはちょっと違う。

 とても残念だ。


「本当にふわふわですね。匂いもしないし。お楽さん、あなたがいてくれてよかったです。本当にありがとうございます」


 ニホが抱き着きついてきて、ついでに珍しく感謝もされた。地面に直接寝るよりは羊の方がいいに決まっている。


 ヒナも定位置の頭の上でさっそく埋もれているようだ。


 エウリュアレ様がフェルミの布団と化しているのを見た時に、私も変幻すればいいことを思いついていたので、今回実行してみることにした。

 障害物がなく、そう簡単に魔物が襲ってはこれない、こういう場所なら大丈夫そうだからだ。


「それでも、全員は無理だな。俺はいつも通りでいいよ」

「俺も」


 ラトレルさんとアーサーは地面に寝るそうなので、十也とニホとフェルミが私を布団代わりにして就寝することになった。


 私の変幻も使い方次第で十分役に立ちそうだ。


 あとで、他にも応用できそうなことを、十也とニホに相談してみることにしよう。


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