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148 座敷わらしと玉虫蛇の落札価格

 オークションもそろそろ目玉を残して終わりになるというころ、玉虫蛇(タマムシヘビ)の競りが始まった。


「あれは何になるんだろう」

 十也がぽつりとつぶやく。


「蛇皮ですから、普通に考えたらお財布とかバック、ブーツでしょうか」

 ニホの言うように日本であれば、だいたいそんなところだろう。


「冒険者の防具もあり得るよ。強度がないから飾りとしてだけど、見栄えにこだわる貴族とかに需要があるみたいだね」

「この世界の冒険者も派手好きらしいから、街で目立ちたい者は欲しがるかもしれないな」

「ああ、確かに。虚栄心が強い冒険者は借金してまで、そういうものに手を出すやつはいるからね」


 美しいものを身に着けたいという気持ちは、わからなくもない。


「僕だったら、命の方が大事だから、そんなものに大金つぎ込むより、ちゃんとしたものが欲しいけどね」

「そうですよね。本当に必要なものを揃えるべきです」


 十也とニホは否定的だが、それも一理ある。十也たちが、冒険者という命の危険を伴う職に就いている以上、見た目など、戦いにおいてなんの役にもたたない。

 そんなことに重点をおくより、危険の回避率が少しでもあがる物を選ぶほうが合理的だ。



 みんなでそんな話をしているうちにオークショニアが最終の金額を読み上げる。


 結局、玉虫蛇は金貨七枚で落札された。


「もっと高額になるのかと思っていたのだが」

「あれを材料にした製品を金貨十枚で売ったとして、二割くらいの儲けで考えればそんなもんだろうな」


「お楽ー、金貨七枚だって十分大金だよ。ここにいると、すごい金額がバンバン読み上げられるから、金銭感覚がおかしくなってるんじゃないの」


「そうかもしれん。初めの頃は宿に泊まるための大銅貨を稼ぐのだってやっとだったからな。金貨七枚あれば、やっと十也にもそれなりの装備が揃えられる」


「あれから、いろいろあったよね。まさか、こんな高級品が並ぶオークションに、出品できるほどの魔物が手に入るなんて思わなかったよ」


「玉虫蛇は十也様々だからな」

「うわ、なんか嫌なこと思い出した」


 十也が渋い顔をするのもわかる。あの時は本当に大変だったからな。


「私がいたら樫くんに痛い思いなんてさせなかったのに」


 ニホが私にだけ聞こえるようにつぶやいた。お主にはそれだけの能力があるようだから、これからは是非ともそうしてくれ。


 私は悪妖化したくないし、そんなことになったらまずいなんてものではない。滅茶苦茶に暴れたあげく、冒険者……いや、悪魔払いに消滅させられる未来が見える。


「お楽、どうかした?」

「いや、別になんでもない」


 それに、十也たちをこの世界に残しては絶対にいけない。


 私が黒く染まらないために、今後は闇雲に攻撃できないことは確定している。

 だから今は、十也を危険から遠ざけるためにも、戦力があるニホと合流できたことを、とても有り難いと思っている。


 たとえ、ニホが何者かわからないとしても。

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