134 座敷わらしと二宝琴子 1
私は何故か二宝琴子に呼び出された。
二宝琴子が一階に戻る際に、話をしたいから部屋へ来るようにと言われたのだ。しぶしぶやって来てみると、部屋でネコが侍っていた。
「あなた、黒く染まっていますよ」
二宝琴子が突然告げる。
「え?」
「悪妖化しているって言っているんです。樫君があなたにふれると電撃が走るでしょう。あれが証拠です」
確かに、十也は私にさわった後は必ずと言っていいほど痛がる素振りをしていた。
「ちょっとまってくれ。どういうことだ」
「そんなことより、なぜ樫くんと同じ部屋なんですか」
「部屋は十也がひとりでは嫌だと言っていたし、一人部屋では金がかかるからだが。それより私にとっては悪妖化の話の方が大事なんだ。教えてくれ」
「私が呼んだんですから、私の話の方が先です。あなた、どう見たって女の子でしょう。その顔で樫くんと同室だなんて」
「そう言われても顔は変えられないからな、そんなことより……」
「ずっと気になっているんですけど、樫君からフェルミさんとエウさんの気配がするのは何故でしょう。まさか何かあったわけじゃないですよね? ミケ、樫君にかかわりがある女の子はすべて教えてください」
二宝琴子は私のことを無視してネコに話しかける。
「えーっとですね。静水館のベルナさんとはいつも楽しくおしゃべりしてます。お花をプレゼントしてましたよぅ」
「ベルナさん!?」
「エルシーさんは無口だから挨拶するだけの仲ですけど、悩み事を相談されたとか」
「エルシーさん!?」
「フェルミさんには魔力をもらっていまして、手をつにゃぐ時にはすごく照れてましたっけ。エウリュアレ様には抱き着かれていましたし、加護も授かってました。トウヤさんは可愛いと言っていたと思います」
「フェルミちゃんとエウさん……」
「童は幸運や不運を授けていますし、今は男子にゃのにニホ様がおっしゃったように姿は女の子に見えるって言ってます。考えてみれば、こっちでお知り合いににゃった方とは全員と仲良くされてますねぇ」
「なんてこと!?」
二宝琴子はその場で膝をついた。
「いつもクールな樫君が異世界でハーレム築いてるなんてショックすぎます」
十也って学校ではクールなのか? 確かに元の世界にいたころは無口だったが。
ニホは三十秒ほどそうしていたあと、いきなり立ち上がったかと思うと今度は突然私の胸をまさぐった。
「うわ、何をする」
「本当に男の子なんですね。まさか男の娘でもOKなのかしら。私どうしたらいいの」
二宝琴子、今度は壁と話をしている。
壁に額をつけてボソボソ言っている。私は早く悪妖化のことを聞きたいのだが。
「私、樫くんのことが好きなんです。今この世界に二人っきりなのは運命だと思いませんか」
「はぁ?」
二宝琴子が復活したと思ったらまた変なことを言い始めた。
「二人きりではないと思うんだが」
「いいえ、あなたは座敷わらしで、ミケは猫妖精。元の世界からきた人間は樫くんと私だけです」
「確かにそうだが……。いやそれより、なぜ私が座敷わらしと知っている。ネコから聞いたのか」
「私は人間ではない者が見えると言ったでしょう」
「だからと言って種族までわかるはずがないだろう」
「覚えていないと思いますが、あなたには会ったことがありますから」
「私が住んでいた家の娘だったのか? でも人間に気づかれた覚えはないぞ。二宝琴子、まさか妖精か? それとも妖か」
「変なこと言わないでください。れっきとした人間ですよ」
「ネコは知っているんだろう、教えろ」
「ニホ様はお綺麗で頭がよくて、非の打ちどころがにゃい素敵な女子中学生ですよぅ」
「そう言うことではなくて二宝琴子と私のつながりだ」
「それは言えません」
「思い出さない方がいいと思いますよ。あと、フルネーム呼びはやめてください。あなたも『ニホ』でいいですから」
なんだかわからないがこれ以上話していても埒が明きそうもない。
でも、思い出さない方がいいと言われたら、余計に気になるだろう。




