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129 座敷わらし、アーサーの話を聞く

 アーサーと二人きりで屋台のある場所まで歩き、設置されているベンチに座る。


「子どものころから俺には剣の才能があった。パーティーの中で一人だけ実力に差があるってどう思う。それも極端にだ」

「はじめは純粋に頼りにされるだろう。そのあとは依存になるか目標になるか人間によって違うのだろう」


「たいていは依存だ。俺に追いつこうと頑張っていた奴らもいたけどな、俺のやり方がまずかったんだろうな。そのうち何もせずに報酬が分配されることに慣れて変わっちまった。危険を冒さずに金が手に入るんだ。甘い方へ流される奴が多いのはしかたねえ」


「実力が違えば狩場も狩る対象も変わる。アーサーについてこれなくなって折れてしまった者もいたんだろうな」


「ああ、俺は強くなりたかったからな。他の奴らのことなんか気にもせず強い魔物がいる場所へどんどん進んでいった。魔物は全部俺が倒せば問題ねえと思ってたからさ。仲間がそれについていけねえと言い始めた。行きたければ一人で行けと」


「実力がない者がBランクについていくことは危険を伴うからな。どちらが悪いかは私には判断つかん」


「そうだな。だけどほかの奴らに合わせていたら俺は物足りねえ。強い魔物と戦えるのがわかってからは、魔猪(マイノ)大魔鼬(オオマユ)では我慢できなかった。結局ひとりで山に入るならパーティ組んでる意味がねえよな。何度パーティーを組んでもそれは変わらねえ。だから俺とパーティーを組んでくれる同等の冒険者を探してはみたがそれも見つからん。だからひとりで狩るしかなくなった」


「それを言うなら私たちもかなり歪だぞ。実力はバラバラだ。しかも得意なことに特化しているだけだしな。私は十也を危険な目に合わせるつもりはないから、たぶん同じことになると思うが」


「そうか……」


 そこまで話してアーサーの言葉は途切れた。


 アーサーは立ち上がると屋台で売っている薬草茶を両手に持って戻ってきた。それをひとつ私に渡し、自分も飲み始める。


「それで、性格が軽い話はどうした。私はそれを聞くはずではなかったか?」

「おう、それでよう独りぼっちって案外堪えるんだわ。同じ冒険者じゃあ仲間はつくれねえ。だったら俺の帰りを待っていてくれる唯一の女を探せばいいってことに気がついてよ」


「極端すぎるな、お主」


 それでも独りぼっちが寂しいことには同感できる。


「金目当てじゃねえ、心底俺に惚れてくれる誠実な女を探してるってわけよ。だからこう見えて、誰でもいいわけじゃねえんだ」


「それで手を握るのは何故だ」

「なんとなく、魔力の相性が合えば、こいつだってわかるんじゃねえかと思ってよ」

「極端の上に考え方が単純だな」

「いや、魔力の相性ってのは、生物学的? だったけか証明されているみたいだぞ」


「ほう、面白い話だ。それで相手は今まで見つからなかったのか」

「ネイトネさんの手を握った時に安らいだ気がしたから、いい線いってんだけどよう。相手にしてもらえねえな」


「ではまだ探し続けるってことだな? パーティーに加入する以前に、私たちと行動を共にするなら、手あたり次第、女子に手を出すのはやめてくれ。目立つのは困るのだ」


「うーん。まあ、お前たちと一緒ならとりあえず独りぼっちじゃねえから、一時中断してもいいぞ。なんかお前たちも訳アリっぽいからな、パーティー加入もお互い実力をみてから考えようぜ」

「そうだな。急ぐこともあるまい。私たちがアーサーに見限られる可能性の方が多いだろうし」


「お前たちは面白そうだし、俺は一応前向きだぞ」

「こちらも検討する」

「話はついたな。じゃあ、次はリーニアの町でな」

「ああ」


 アーサーが私に手を振りながら町の中へ消えていった。




「はあ」


 私のため息はアーサーに向けたものではない。


 さっきから残念なものを見る目でこちらに視線を向けている焼き鳥屋の親父にたいして出たものだ。


「想像しているのと違うからな」

 私は一言告げてから紅玉の鐘に戻った。




「どうだったの」

「保留だ保留。アーサーにもきちんとした言い分はあった。だが折り合いがつくかはわからんから、先送りになった」

「ふーん。あんなんでも何か理由があるんだね」

「オラクが納得できる話だったわけか。悪い奴でもなさそうなんだな」


 不運は流れてこなかったな。もちろん幸運もないけどな。


「それよりネイトネって誰だ?」

「センターの担当さんだよ」

「…………」


 アーサーの想い人は担当マダムのことだった。


 あいつの守備範囲の広さ、すごいな。


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