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114 座敷わらしとロックチョウの卵 再び 1

「まさか人違いだったとは」


「話にでてきた預言者も間違えてアーサーさんを呼んじゃったんですよねぇ。それだけ主人公に似てるってことじゃにゃいですか」


「そうそう、預言者の貴族は絶対何かを知ってると思うんだよね。アーサーさんなら場所もわかるんだし、それだけでもよかったんじゃない」


 とりあえず、真相を知っていそうな預言者とやらに会いに行くことを最優先事項にする。


 それでも案内役のアーサーの依頼が完了するまで、結構時間がかかりそうなので、私たちは再び岩鳥(ロックチョウ)の卵をとりに行く計画を立て始めていた。


 前回とほぼ同じ方法で行くことにしているのだが、今回は私たちをつけてきたり見張っている者に気をつけなければいけない。


 早く魔法印を押しておいた方がいいと思うのでラトレルさんとはできるだけ早く合流する必要があった。


 それでも岩鳥の攻撃を受ければ命を落とす可能性が高いので、私とネコ以外が巣へ近づくことは躊躇われる。


 ラトレルさんの危険性については目をつぶったとしても十也は絶対にダメだ。だから連れて行くわけにはいかない。


 岩鳥の卵は魔物を倒すわけではないので経験値はあまり関係がなさそうだし、今回は無理をして十也が一緒に行く必要はないのだ。


「「そうかもしれない」」


 ラトレルさんも同意した。同じ言葉を口にしながらも十也の声は切なそうだった。 

 魔物狩りへ行く道中、私たちはそんな話をしながら歩いていた。


「その話、わたくしが手を貸してあげてもよくってよ」

「ええぇ?」


 ネコも含め、全員がエウリュアレ様の言葉に驚いた。


「何言い出すの。危ないから、あたしたちはお留守番なんだよ?」

「誰にも見つかりたくないのでしょう? わたくしそういうことが得意なのだけれど必要ないかしら」


「嘘? 何その話。だったら孤児院でも見つからないようにできたってこと?」

「精神に作用するから小さな子どもにはさすがに使いづらかったのよ」


 エウリュアレ様の能力を知らないから、何ができるのかわからないが、有効ならお願いした方がいいかもしれない。誰も傷つくことがなく達成できるのであれば、私の感情は二の次でいい。


「それでエウちゃんは何ができるんだい」

「見えている物の存在を薄くしたり、その場にないものを見せたりかしら。木っ端の部屋で見せた姿は魔力で幻覚を見せていたものよ。他にもいろいろできるけれど、それを教えるつもりはないわ」


「精神に作用するって、僕もあなたの幻覚見てるんですけど……」

「あら、でも大丈夫だったんだからいいじゃないの」

「…………」


「エウ、ちゃんと説明しないとトーヤ君が心配するよ」

「わかったわよ。わたくしの魔法は相手の脳に錯覚をさせるものなの。大人の場合は引きずらずにその場限りですむけれど、精神が不安定な子どもは、その後にどう影響するかわからない。心に傷として残ってしまう場合があるわ。精神に干渉するってそんな危険性もはらんでいるということよ。だけどそなたには木っ端がついているのだから、心配する必要はないわね」


 私が幸運を授けているから精神を侵されることがないってことなのか?


 十也を見ると半信半疑のようだ。エウリュアレ様が信じられないのか、それとも私が信じられないのか……。


「それができるなら私たちの姿を隠すことはおろか、卵さえ消すことが可能なのでしょうか」

「だとしたら危険なく魔物が狩れそうだな」


「存在を希薄にすることはできるわ。でも匂いが残るから安全ではないわね。魔物は嗅覚が発達しているのでしょう。まったく危険がないのであればフェルミとふたりきりで冒険者をしてもいいんだもの」


「エウリュアレ様が力になってくれるのでしたら、初めから計画を練り直す必要がございますね」

「もちろん、報酬はいつも通りフェルミとふたり分貰うわよ。――これで身分相応のドレスを身に着けられるわ」


 正直なところ、今日に限ってエウリュアレ様が協力的なのが腑に落ちなかった。しかも自分の能力を晒してまで。


 だからとても不思議に思っていた。


 そこまで服装に拘っていたとは。


 その場にないものを見せたりできるのであれば、服装もその術を使えばいいと思ったのだが、それは人間の脳に常に干渉を続けることになる。

 一番近くにいるフェルミに副作用があるといけないのでやらないそうだ。


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