9 質問コーナー ~安治~
仁さんが勢いよく手を挙げる。
「はいはい、彼氏はおるん?」
「いません」
「キミが答えるんかいな、川口君。違うがな、あきちゃんに聞いてんねん」
「豊野の質問はあと一回」
「なんでやねん」
「安治君、あきちゃん、兄弟はいるの?」
「妹と弟がいます」
「ウチは一人っ子です」
「川口君、妹さんおるんかいな。妹さんとはどんだけ離れてるん?」
「たぶん10kmくらいだと思います」
「いや、距離やのうてやね」
「豊野の質問タイム終了」
「なんでやねん」
「安治君ぐっじょぶ」
町江さんがサムズアップしてきたので返しておく。
「部活はなにしてたの?」
「高校では帰宅部でした」
「ウチは中高と文芸部でした。あと高校では一時期第二料理部との掛け持ちもしてました」
「第二料理部?」
「第一料理部は普通に誰でも食べられる料理を作るんですけど、第二料理部は創作料理を作ったり、とんがった味に挑戦したりしてました。『人はどこまで甘いモノを食べられるか』とか『調味料は主食たり得るのか』とか言って」
あ、これあかんやつや。
「でも、そういうところなら、わたしが腕を磨くのに良さそうね」
「「「「「「ダメ、絶対!」」」」」」
「な、なんで?」
「よしのんが作ると、料理じゃなくて兵器になるから」
「酷い」
「「「「「「酷くない!」」」」」」
「え~」
「安治君、あきちゃん、いい機会だから忠告しておくけど、よしのんには絶対に料理させちゃダメだからね」
「もしかしてメシマズなんですか?」
「安治君、メシマズっていうんは、美味しくなくても食べられるものを作れる人に対する称号や。よしのんにはもったいない」
そこまでか。
「犠牲者が出る前に、キチンと教えておかないとね」
「よしのんに許されるのは、食材を手に持つところまで、って覚えておいて。それ以上の一切の加工はさせちゃダメ」
「例を挙げると、バナナを持たせてもいいけど、バナナの皮を剥かせたらダメ」
「流石の私でも、バナナの皮を剥いただけでは何も起こらないわよ?」
「湯浅さんも、あの時はそういう甘い考えで坂本さんに頼んだんだろうね」
「湯浅さん?」
「説明すると、ウチのOBで湯浅さんって人がいて、少し前に一緒に麻雀してる時に、カップ麺作って食べようとしたんだよ。でも電気ポットのお湯が切れてたんで、ちょうど抜け番だったよしのんに頼んだんだよ、『カップ麺作って』って」
「せめて『電気ポットに水入れといて』くらいにしといたら良かったのになあ」
「僕やったら、それさえも頼むの躊躇しますわ」
「みんな酷い」
「死人が出てからでは遅いからな」
「部長まで!?」
「まあ、流石にあの光景を見ちゃうとね・・・」
「何が起こったんですか?」
「15分くらい経ってから、よしのんが出来上がったカップ麺を持ってきたので、局の合間に湯浅さんが食べ始めたんだけど、直後に口を押さえて苦しみ出して、最後には口の中のモノを吐き出した挙句、床に倒れて昏倒したの」
「あれは湯浅さんが風邪ひいてて体調が良くなかったから・・・」
「確かに鼻が詰まってなかったら匂いで異常に気付いただろうね」
「麺を冷ますために息を吹きかけたので、対面に座っていた僕はおかしいって気付いたんだけど、声を掛ける前に食べちゃってね」
「朝になってようやく意識が戻ったけど、少し記憶の混濁が見られた」
「救急車呼ぼうかどうしようか、ってちょっとした騒ぎになったからね」
「第二料理部では2年の文化祭の準備中にホントに救急車のお世話になった人がおって、それが原因で廃部になってしまいました」
「そっちも!?」
「なあなあ、よしのんやったら分かるんやけど、それ以外で何やったら料理で救急車が来る羽目になるん?」
美乃さんなら分かる、ってのが怖いな。
「一年目に文化祭で『超グルメトライアスロン』ってイベントやって、あ、これは辛いモノと甘いモノと酸っぱいモノを、決まった量、早く食べた方が勝ちってイベントなんですけど、それが割と好評だったんですよ」
「どんなメニューだったの?」
「最初が辛いので、大判の一味せんべいを1枚、次が酸っぱいので、練り梅を盛ったリッツ、最後に甘いので、砂糖の飽和水溶液を紙コップ2杯です」
「面白そうだね。少しアレンジすれば、罰ゲームのお題になりそうだよ。あと、学園祭の実行委員にも情報をリークしてみよう」
一味せんべいは勘弁してほしいな。
「それで、その第2回のネタを探しててですね、ポッカレモンはどう? って話になって・・・。次の日に部員が2人挑戦したんですけど、その内の1人が途中でむせて、気管に入ったり鼻に入ったりして、涙と鼻水が止まらなくなって・・・」
「なるほどね。ちなみにどのくらいの量を飲もうとしたんだい?」
「紙コップ1杯でした。どのくらいの時間で飲めるものなのか実測しよう、ってことで、よーいドンで飲み始めたら、途中で1人が気管に入ったみたいで、咳き込むのを我慢しようとして口を閉じたけど、我慢しきれなくて口を閉じたまま咳をしたら・・・」
「想像しただけで、鼻の奥が痛くなってきた」
レモン果汁を鼻から飲んだようなものか。
「まあ、救急車で良かったじゃない。よしのんが本気出したら霊柩車呼ぶハメになるよ」
「ちょっと、和泉?」
「あはは。でも、安治君が帰宅部だったのは少し意外だったかな。中学の時はどうだったの?」
「中学の時は川口君水泳部でしたよ、確か」
「ちょっと待って、なんであきちゃんが川口君の中学時代の部活知ってるん?」
「豊野の質問タイムは終わってる」
「それは僕も興味あるなあ。どうしてか聞いていい?」
「川口君とは、中学の時同じクラスでしたけえ」
「あたし達もさっき聞いたところなんですけど、今日会ったのは中学の卒業以来3年振りらしいですよ」
「そう言えば、川口君のお父さんが転勤族だって話は聞いてたな」
「ウチはもう一回質問できるよね?」
「香さんはその質問が2回目」
「いや、ちょっと待ってえな」
「冗談です」
「町江ちゃんのは冗談に聞こえへんわ。えっと2人に大事なこと聞いときたいんやけど」
「なんでしょう?」
「2人の麻雀歴はどのくらい?」
「そや、それは僕も聞きたかった」
「豊野の質問権はないから、和泉、ちょっと豊野の耳塞いでおいて」
「ちょ、答え聞くくらいええやん」
仁さんは間違いなく弄られキャラだな。あと町江さんはドS疑惑が・・・。
「ウチは高校入ってすぐくらいからネットで麻雀始めましたけど、麻雀牌使って麻雀したのは受験が終わってからなので、半月前が最初です」
「僕は小学校の頃から家族でたまにやってました。年に1~2回ですけど」
「強さはどれくらい? 周りと比べての相対評価とかでいいから教えてほしいな」
「僕は中学くらいまでは家族全員ほぼ横一線だったんですけど、ここ2~3年は妹が頭一つ抜け出した感じですね」
「ウチはまだ親戚の家で2回やっただけで、合わせて半荘5回くらいなんですけど、親戚の人からは『あきちゃんは外でお金賭けて麻雀しちゃ絶対ダメだからね』って言われてます」
「ふむ、正直言ってあまり参考にならないね」
まあ、比較対象の強さも分からないんだし、相対評価しても意味ないよね。
「あと質問権があるのは、部長と町江が2回とも残ってるね」
「私は和泉君や町江君から逐次報告を受けていたから、今のところ追加で聞きたいことはないよ」
「町江は?」
「私も特には・・・。あ、強いて言えば」
「強いて言えば?」
「広島県が、大陸からの脅威に対する防衛を島根県に頼りきりになっている現状に対して、2人がどのように考えているのかを教えてほしい」
「うん、その話はまた今度にしようね」