表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/19

結婚


 雲一つない晴れた日になった。気温も穏やかで、暑くもなく寒くもなく。

 結婚式は穏やかな日に行われた。

 見届け人の前で結婚に関する書類に署名を行う。その後は結婚の報告を行う宴が行われた。


 家族はもちろんのこと、その他にも沢山の人からお祝いの言葉を贈られた。

 オーガスト様もイザベル様も参列していた。イザベル様はぎゅっと抱きしめてよかったわ、と泣いて喜んでくれた。


 こんなにも穏やかな気持ちで結婚ができると思っていなかった。

 婚約者がルシアン様でなくなり、アルフレッド様に代わって少し不安だった。長い時間をかけて築いてきた関係を、ほとんど知らない人と1年で築くなど無理だと思ったのだ。


 でも時間なんて関係なくて。

 お互いにどれだけ歩み寄ろうとするかなのだと知った。

 勝手に不安に思ったり、聞けずに願うばかりでは駄目だと。


 そう思えば、わたしはルシアン様に甘えっぱなしだったのだろう。勇気をもってレオナ様と向き合えていたら、もしかしたら相談してもいいと思ってもらえたかもしれない。


 辛い経験だったけど、今はもうルシアン様を思ってもさほど胸も痛まない。ただ彼も幸せになってもらえたらなと今では思う。


 化粧直しに控室に戻れば、聖獣様が待っていた。

 聖獣様は大きな姿でのっそりと歩いてきた。こうしてみれば、聖獣様は本当に大きい。四つ足でもわたしの腰の位置まで体高はある。大きな3つの尻尾が揺れていた。


『おめでとう』

「ありがとう」


 みっともないところを沢山見せて、アルフレッド様についても散々相談した。聖獣様には頼りっぱなしだ。


『あの男とは幸せになれそうか』

「まだまだ十分な愛ではないかもしれないけど、大丈夫よ」


 アルフレッド様とはずっと一緒にいたい。

 結婚して、子供を産んで、家族になって。

 毎日を丁寧に重ねることで、愛の色も変わってくるのだと信じたい。


『そうか。それならよかった』

「聖獣様?」

『私はこれで休むことにする』


 驚いて目を見開けば、ぼんやりと輪郭が滲んでいく。徐々に形が崩れていくのを止めようと慌てて手を伸ばした。


「待って!」

『何かあったら、奇跡の種を植えろ』

「戻ってしまうの?」

『願いを叶えるまで。それが決まりだ』


 ふわりと光が強く光ったと思ったら、その場から聖獣様が消えた。

 手のひらには卵のようなつるんとした表面の種。


 それをぎゅっと握りしめた。


「ありがとう」


 聞こえているかわからないけど、『奇跡の種』にそっとお礼を告げた。



Fin.


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ