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御稲荷さんの掌

 Nやんの近況の短いお話です。

 

 まだ幼稚園に通っていた頃。

 祖母に連れられて4歳年上の兄と近所の公園に遊びに行った。

 そこの公園は何故かど真ん中にお稲荷様の小さな社が有り、その周辺には黒い柵で覆われている不思議な公園だった。

 俺とは逆に、腕白で悪戯が好きな兄はお稲荷様に興味を持ったらしくフェンスに足を掛けて悪戯をしようとしていた。

 祖母が兄を諌めるが全く止めず、俺が「お兄ちゃん止めなよ~罰当た」と言い終わる前に兄がフェンスから落下した。

 しかも頭から。

 兄が落ちた瞬間、直前まで兄が居た所に女性の掌が見えた気がした。

 3、4歳の俺には意味が分からず、ただ落下した兄に驚いて硬直してしまった。

 祖母は慌てて駆け寄ると兄は無言で立ち上がった。

 痛みと衝撃で声も出ない、と言った様子。

 自宅に慌てて帰ると父が兄の頭を確認すると3㎝程切れて、土が着いていたのでシャワーで急いで洗い落としに浴室に兄を連行した。

 「ぎゃーーーーーーー!!!」

 傷口に勢い良く水を掛けた為にまるで断末魔の悲鳴の様な声が上がる。

 その声に俺は失禁するのではないか? と言う程のトラウマを植え付けられる事に成った。


 最近、と言うか先週当時の公園に行ってみた。

 何故行こうと思ったのか、と言うとその掌が気になったのだ。

 心霊現象には慣れて居る、むしろ日常と化している。

 それでも物理現象を伴う心霊現象は流石に多くは無い。

 何となく、お稲荷様が悪戯小僧を懲らしめたのかな? と興味が湧いたのだ。


 目的地に着くと予想通り公園は狭く、お社も小さな物だった。

 一礼二拝二拍一拝一礼(本式では浅く一礼し二回深く頭を下げ、二回手を打ち、再度一度頭を下げ、最後に小さく一礼)をし、頭を上げると視界に一人の女性が飛び込んでくる。

 女優に居そうな和風美人さんが古風を通り越した大和時代か古墳時代の衣装を着て、凄く困った様な、引き攣った様な顔をしている。

 兄の幼少の頃の無礼を謝罪すると一つ頷いて消えて行った。

 その様子から決して誰かを害せる類の神様では無いのが分かる。

 むしろ優しい神様なのだと。

 きっと手を滑らせて落下した子供に驚いて、慌てて掴もうと手を伸ばしたのだろう。

 まあ、間に合わなかったか、間に合っても掴めなかったのだと思うが。

 そして彼女の引き攣った困惑顔が気に成って考える。

 帰り道の車の中で思い至った。

 そりゃ、足を掴まれ現在進行形で祟られている男が現れて謝罪されても困惑しかしないだろうよ。

 ごめんね、宇迦之御魂様、今度美味しい鶏天とお酒持って行くよ。

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