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怨霊と憑依と明王と

平成最後の日に投稿する事が躊躇われた為、一日前倒しで投稿いたします。

 Nやんから聞いた話を文字起こしした物です。


 昔馴染みの変わり者の坊主(まだ当時は坊主には成って居なかったから今回はAとしよう)と夜ドライブをしていた。

 東京の外れの方に有るトトロの森の原作に成った森を気に入っていて、夜散歩がてらたまに行くのだが、Aも同行する事に。

 モデルの病院が有り、森が有り、案外心地の良い(多分相性の良い森だったのだろう)雰囲気を満喫してからまたドライブ再開。


 この森の周辺の家で首つり死体を発見した事も有る話も含めてオカルト話に花が咲き続けた。

 2、3㎞走っただろうか?唐突に霧が出始め、首を傾げているととあるダム湖の側だと分かった。

 夜中の気温とダムの水温の関係で霧が出るのだと納得をして、前方に注意しながら走行を続けた。

「Nやん、気が付いてる?」

「んー、怨念が噴き出てるなー」

 前方に見える橋の真ん中辺り、湖から黒いモヤが湧いて出ているのが見えていた。

「どうする? Uターンするか?」

「うん、その方が良いかも」と言う事に成りその場で車をUターンさせた。

 モヤから5、6mは離れていたと思う。

 溜息混じりに来た道を戻ろうとした瞬間、足を掴まれた。

 強く握り込まれる足首に走る痛みに顔を顰めて、下を見ると恨みがましい表情をした男の顔が足元に有った。

 運転中と言う事も有り下手に動けない為、先ず停車しようと路肩に車を寄せた。


 車を留めたか留めないかと言う瞬間に猛烈な頭痛がして思わず目を閉じた。

 目を閉じた真っ暗な闇の中、数人の男達が重そうに何かを橋の柵に何かを乗せている。

 その何かはドラム缶で、ドラム缶からは首が生えていた。

 その首の持ち主は泣き叫んでいた。

 大声が頭に響くが言葉は聞こえない、でも命乞いをしているのは分かる。

 何と言えば良いのだろう?無声映画の様な感じだろうか?

 男達は笑い声と共にドラム缶を柵から落とした。

 落としたんだ、コンクリ詰めの生きた男を……。

 そこで映像は途切れ、頭痛も去った。

 隣でAが俺に話し掛けているのに気が付いた。


「何を見た?」

「何と言うか……、後で話す」

 そう言ってその場を去った。

 どうやら俺が強制的に霊視させられている時にうわ言の様に「やめろ」とか「殺すな」とか声を上げていたらしい。

 数㎞離れた所で運転しながら俺が視た物を話す。

 元々霊感と言うのだろうか、この場合は見鬼の才と言う方が正確だろう。

 霊視とか透視に類する、心霊現象の奥の出来事を見る才能には乏しく、心霊現象を解決するには向いていない。

 そんな俺でも見える程強烈な怨念と残留思念だった、と言う事だろう。

「ヤクザに多分沈められた人の霊が怒り狂って、恨んで、のた打ち回ってるんだと思う。もう怨霊の類だと思う。音も声も聞こえなかったのに、絶叫や笑い声が伝わってくるってのは怖いな……」

「どうする警察に言う?」

「言えないでしょ、「なんで知っている?」って犯人扱いされるだけだよ」

「でも、その人いつまでも発見されないよ?」

「うん、ダムが干上がって発見されでもしないと、見つからないと思うけど」


 そんな話をしながら車は23区内に戻って来た。

 直線距離で15㎞とか20㎞とか離れていると思うのだが、それだけ離れても寒気がする。

 縁を一方的に結ばれたらしい、これはまずい事に成った。

 一度車にこびり付いた念を剥がしてから、お寺か神社に行くべきか、と思いダッシュボードに入れていた荒塩を手に車から降りる。


 Aも降りて離れて貰い、車に塩を降ってお浄めと真言を唱える。

 車にこびり付いた恨みの籠った臭いが剥がれたと思った、思ったらややこしい問題が発生した。

 Aの様子がおかしいのだ。

 唸っている、体を上下に揺さぶっている。

「そっちに取り憑きやがった!」

 油断していた。

 Aはいわゆる憑依体質と言うヤツで、霊的なガードが緩い。

 その分、感度が高いのだが侵入もされやすい性質だった。

 目を細めると、かなり深くまで入り込まれている。

 このまま神社・神域に行くと完全に取り込んで、住まわせてしまう可能性が高いと判断しその場で除霊をする事にした。


 Aの両肩と背中に塩を降り、ジッポライターに火を点け左手の中指と薬指に挟んで保持し、右手でAの背中から何かを掴む様にして拳を握り込む。

 右手に痛みが走る。

 握った拳を引くとAの中から何かが引きずり出される様な嫌な感触が手に伝わる。

 どんな感覚かと言われると、動物の腸を引きずり出す感じ? としか言えないが。

 引きずり出しながら左手の掌で(ライターの火は手の甲側)Aの背中を突き飛ばし完全に引き剥がす。

 引き剥がした瞬間に右手が重く成り支えきれずに膝を着いてしまう。

 突然、誰かの体重が腕に掛かった様な感じだろう。

 右手で掴んだ何かを火にかざして、烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)の真言を唱えるとオイルライターのオレンジの火が青い焔になって右手を一瞬包み込む。

 重さが失せたと感じた所で違和感が残った。

 右腕の、二の腕から先の感覚が無いのだ。

 神経は繋がっているから指は動く、肘も曲げられる、ただし自分の目で見てる範囲では、だ。

 動かしている感覚、動いてる感覚が無いのだ。見て脳の指令を伝達されているか確認しないと本当に動かせているか分からないのだ。


「まずい、持ってかれたか……」そう呟くとAが「ああ、怖かった……」と頭を振っている。

「Nやん、どんな感じ?」

「右腕の霊体を持ってかれた感じだ、感覚が無い」

「うわ、ごめん……」

「いや、あれはお互いに油断しすぎた」

 Aの油断はガードに意識がしっかり向いていなった事、俺の油断はAの方に飛び火する可能性の失念だ。

 後は、怨霊に見捨てる発言をした事で恨まれた、と言う事だろう。

 本当に口は災いの元、と言うことわざを実感した。


 信号待ちをしている時、窓から腕を出して煙草を吸っていると横から車に追突されて右腕を潰された。

 激痛と千切れた腕をみた衝撃。

 そこで目が覚めて悪夢だった事に気が付いた。

 右腕は有るが動かない。

 さらに翌日、踏切に誰かに突き飛ばされて右腕が吹っ飛ばされる夢で飛び起きる。

 右腕は有るが動かない。

 あの夜から、俺は毎晩の様に悪夢にうなされる事に成った。

 右腕の感覚が無い事が心理的ストレスになりそんな悪夢を見るのか、それとも怨霊が俺の右腕を奪いたくてそんな悪夢を見せているのか、判断が付かないが。

 それから毎晩の様に神社の境内の大木に右腕を押し付ける様にして少しずつ力を分けて貰って、半年掛かったが右腕も復調した。


「俺が四流止まりなのはこの辺りだろうな、一流ならまず腕を持って行かれたりしない」

 そうNやんは苦笑する。

「でも、良く足を掴まれて慌てないで居られるよね?」

「いやだってAT車で左足掴まれても運転に支障ないし、いや、普通逆だろ? って笑いそうに成って」

 とNやんはやはり豪胆と言うか、変人だと思います。


 ここからはNやんの考察と言うか一口解説になります。

 烏枢沙摩明王は明王の中で特に浄化に特化した明王だとか。

 火と浄化の神格と考えたら分かり易いと思う。

 まあ、「何事も生兵法は怪我の元、火の用心火の用心」だそうです。

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