本当に強い者
Nやんから聞いた話です。
「Nやん、霊能力者とかお祓いをする人って居るじゃない? 凄い人ってどんな人なの?」
「さてな、超一流って言われてる人、力を失った人色々だけどな。総じて超一流って人達は恐いぞ?」
「どう怖いのさ、お祓いとか出来る人でしょ?」
「あ~、お祓いが出来る、オカルト方面に強いのがイコールで人格者でも無いだろうしな。医者で腕は良いけど人格破綻してる人とか居るだろ? 超一流って人達は人であって人の埒外に居ると考えた方が良い」
「そんなに?」
「そんなに、だ。前に話した式神で監視されるなんてのも有るからな」
表情を強張らせてNやんは断言した。
Nやんが怯えるってどんな人達なんだろうか?
そんな私の疑問を察知したのか、Nやんは急いで私を止めた。
「間違っても好奇心で近付くなよ? どんな事で怒らせるか分からないんだからな?」
そう言って恐々と首を振った。
「前にネットの怪談放送で怪談を話した後、そんな怖い人達の話を文字に起こしてたんだけどな? いきなりデスクトップのモニターが電源落ちて、真っ黒なモニターに意地悪く笑う女の人の顔が映った時には吐きそうになったぞ」
「ちょっと待って? それってどういう事?」
「それでな? ああヤバい、これは触れたら駄目だって思った瞬間に部屋の片隅からヒタッって爬虫類独得の水気を含んだ足音がしたと思ったらヤモリが居たよ」
ヤモリと言う言葉に以前Nやんを震撼させた式神の話を思い出して背筋が凍った。
「え? それから?」
「謝り倒して「あなた達の事は絶対に書きませんから!」って謝り倒したらPCも普通に動き出してな……」
「何それ怖いんだけど……」
「な? 怖いだろう。良いか? 何々使いって付く人達と関わると怖い思いするからな? 気を付けろよ?」
「いや、気を付け様が無いし……」
「興味を持たない事だ、偶然行き会う分には安全な人達だけど、面白半分で関わろうとすべきじゃないな」
〇〇使いと付く人達と言うと三つ程思い浮かび、そしてそのどれもが物凄い怖い話に繋がるのを思い出した。
「Nやん、Nやんの言う通りちょっと怖いかも……」
「だろ? 怖い話を通り越して怖い目に遭う羽目になるからな。好奇心猫を殺すって言うがな? あれ人間に向けて言う言葉だって事だ」
そう言って居心地悪そうにグラスを煽るNやん。
もしかしたら今もどこからか監視されているのかも知れない。
そう考えるとオカルトとは現代でも怖い事に変わりは無いのかも知れない。
Nやんのグラスの中の氷がピシリと割れた音を立てたのが強い印象を残した……。