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人形の行く末

 Nやんから聞いた話です。


「Nやん、前に聞いた人形の話あるじゃない? その後どうなったの?」

「ん? ああ、作家さんは亡くなったよ。旦那さんも亡くなったらしい」

「え? なんで?」

 以前話してもらい、詳しくは教えてくれなかった話を詳しく聞こうと思ったらこれだよ。

「個展に誘ってきた友人から聞いたんだけどな」


 日々の仕事に追われ、自身もオカルト絡みで怖い思いをしている時、唐突に連絡があった。

 件の作家さんが亡くなり、人形達を持て余した旦那さんから相談を受けていたらしい。

 結局オークションやらに出したが、あの人形だけは残ってしまったと。

 と言うよりもあの人形だけは売れなかったらしい。

 何となく予想は付く。

 きっとあの人形の写真を撮ればカメラが動かなくなる、オークションに出そうとするとPCが止まる、その程度はするだろうと思い「こんな感じか?」と言うと友人は頷いた。

「だろうな、あの人形はそう言う代物だ。それで? その人形はどうなった?」

「それが……、旦那さんの葬儀に参列したんだけど無かった。遺族に聞いても知らないって言われた」

 もっとも、そうなるだろうなと予想していた通りに成った事に溜息が漏れる。

「なあ? どういう事なんだ?」

「どうと言われても、な。確かに俺は探偵だけど推理して事件を解決するなんて探偵の仕事じゃないんだが?」

 ホームズじゃあるまいし、と笑って応えた。

 まあ、推測は出来るが。

 オカルトの鉄板中の鉄板だろうさ。

 作家を呪い殺し、作家の夫が自分を処分しようとしたからこちらも呪殺して行方をくらませた、定番の流れだ。

 動機もハッキリしている。

 人形にしてみれば「不具に生み出された事への恨み」で作家を呪い、自分を処分しようとした旦那の方は「持て余して捨てるのか!」って所だろう。

 結局、呪具は世に放たれた訳だ。

 今は誰の傍に居るのやら、怖くて危なくて知りたくも無いし、関わりたくない。

「制御出来ない物を生み出すのが人間のごうかねぇ……」


 そう言ってNやんは葉巻の煙を吐き出した。

「Nやん、結局その人形って何だったの?」

「何だったと言われても人形だった、としか答えられないが?」

「でも普通、人形ってそんな極端な物に成らないと思うんだけど……」

 Nやんは少し考え、苦い顔でぽつぽつと語った。


「構成材に起因する。髪は人毛。目は全球の義眼。骨は……人骨、それも女性の。それに何か混ざってると思う。犬か猫か、あの匂いは猫だな。全球義眼が入るって事は眼窩も作り込まれてる訳だし、ある程度頭蓋骨に沿った作りだろ。そして化粧だな、化粧は化生つまり化け物に生まれるって意味合いを含ませた言葉として使われた時期もある。結局全部の要素が揃って危険物に成った、って事だろうさ」

「人……骨……」

「それ以上は踏み込むなよ? 当事者達は全員死亡、証拠品も行方不明。一連の出来事は文字通り闇の中だ。このまま暗闇の中に居させた方が良い事も有るさ。あ、不味い――バレた」

 Nやんの言う通りかもしれない。

 そう思った所でNやんが表情を変えた。

 そしてその不穏な一言の後で私達が着いたテーブルが触れても居ないのにカタカタカタと揺れた。


 これ以上は不味いとのNやんの言葉で私達はその場を後にする。

 血の気が引く思いをして私は家に帰った。

 話だけでアレなのだ、もしその人形を目の当りにしたらどうなっていたのだろう?

 Nやんは最後にこう呟いた。

「なんで猫を混ぜた……」

 

 ねえNやん、Nやんの日常って危な過ぎない?

 そう思わずに居られなかった。

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