そして、結局は
『今から、第一ホールでフラワーコンクールの審査結果の発表と表彰式を開催します』
館内からアナウンスが聞こえてきて、僕と澪は顔を見合わせた。
もちろん、見に行くつもりである。
「乙川さん……どうだったかな」
「………大丈夫に決まってる」
当たり前のように澪が言うので、不安などたちまち消えてしまった。彼女の言葉には、説得力がある。
『それでは、優良賞の発表です!』
「ギリギリ間に合った……!」
「遅いぞ悠斗!どこ行ってたんだよ」
半ば滑り込むようにして会場に入った僕と澪を、拓巳が手招きした。
「今から優良賞だから、ほんと危なかったなー」
「うん、なんとかってかんじだよ」
軽いやり取りを交わした後、僕らは同時に前を向く。
『優良賞、ーーーさん!』
知らない人の名前が呼ばれて、僕はホッとするような、落ち着かないような、なんとも言えない感じで次を待つ。
『優秀賞、大野奈都さん!』
「よっしゃあっ!」
「大野さん!やった!」
思わず拓巳とガッツポーズをして、ふと思う。
ーーー拓巳といると、やっぱり楽しいな。
今回のこともあって、僕にとっての拓巳の存在の大きさを、改めて再確認した。
隣を見れば、澪も小さく拳を握っている。顔には、もちろん笑顔があった。
『それでは、最優秀賞の発表です!最優秀賞、乙川彩葉さん!』
「よっしゃあぁぁあ!!」
「……っ!!」
パンッ、と僕と拓巳はハイタッチを交わす。
「ほら、澪も」
僕が手を差し出せば、澪は遠慮がちに手を差し出して、小さく叩いた。
表彰台に上がった大野さんと乙川さんの表情は、とても輝いていた。
お祭りが終わり、片付けを終えると、僕は久しぶりに拓巳と一緒に帰った。
小学校からの付き合いだが、どれだけ一緒にいても飽きることがないのが拓巳だ。
「……拓巳。僕たちってさ、三栗さんと乙川さんみたいな親友だと思う?」
「なんだよ、急に」
拓巳は素っ気なく、「十分仲良いだろ」と言ってくれた。
……こういう奴なのだ、拓巳は。
静かに並んで歩いていると、突然拓巳が話し出す。
「悠斗、お前があいつを気にかける理由が、分かった気がするよ」
「え?」
拓巳は空に向かって両手を伸ばした。
いつの間にか、空は綺麗な茜色に変わっていた。
「あんまり友達を作ろうとしなかったお前が気にかける奴だぞ?親友なんだからさ、俺だって気になるよ」
ーーーそうだったっけ?
自分としてはそんな感じなどしないのだが、拓巳の目にはそう見えていたらしい。
「……で、僕が澪を気にかけている理由って?」
「言わねーよ。自分のことだろ?」
拓巳を恨めしげに見るが、彼は笑って僕の肩を小突いただけだった。
新たな出会いと不思議な出来事。
明日には何が待っているのだろう。
明日の行方を知っているのは、彼女……佐藤澪に力を与えた、神様だけなのかもしれない。
初ミステリー、ついに完結しました。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。