異世界転生した男たちの話
ふと書いてみたくなりました。
拙いですがよろしければご一読ください。
ある男が死にました。彼はこれといって特徴のない、平凡な男でした。神様は男が死んだのは自分の手違いだと言いました。
神様が男に言いました。
「すまなかった。お詫びにそなたを異世界に転生させよう」
その世界は剣と魔法のファンタジー世界で、ゲームのように「ステータス」や「スキル」があるといいます。
神様は男に聞きました。
「なにか転生について希望はあるか」と。
男は来世では楽をして生きたいと考え、答えました。
「オリジナルのチートスキルが欲しい」と。
神様は頷き、彼を転生させました。
男は赤ん坊として目覚めると、真っ先にステータスを確認しました。そのスキル欄には、確かにチートスキルがありました。
『チート・・・コンピュータゲームを自由に改造できる』
しかしそれは、この世界では全く役に立たないモノでした。神様は、「チート」の意味を「反則級に強力」であるとは捉えなかったのです。
男はショックを受けましたが、前世の記憶を活かして生きていこうと気持ちを持ち直しました。
しかしその世界では元の世界と物理法則もものの考え方も完全に異なり、彼の知識は使えませんでした。
楽をしたいと願った彼は結局、何もかもが違う世界で、散々に苦労して生きることになりました。
またある男が死にました。彼は野心家で、常に権力を手に入れたいと思っていました。神様は男が死んだのは自分の手違いだと言いました。
神様が男に言いました。
「すまなかった。お詫びにそなたを異世界に転生させよう」
その世界は剣と魔法のファンタジー世界で、ゲームのように「ステータス」や「スキル」があるといいます。
神様は男に聞きました。
「なにか転生について希望はあるか」と。
男は来世では世界を支配したいと考え、答えました。
「その世界で一番権力をもつ家に生まれたい」と。
神様は頷き、彼を転生させました。
男はその世界最大の帝国の皇子として転生しました。彼は権力を使い、最高の贅沢をしようと思いました。
しかし彼は第十五皇子で、それほど強い権力を有する訳ではありませんでした。さらに帝王の悪政に反発して革命が起き、殺されはしなかったものの奴隷へと堕ちてしまいました。
権力が欲しいと願った彼は結局、人権すら持たない奴隷として生きることになりました。
ある男が死にました。彼は英雄願望を持っていました。神様は男が死んだのは自分の手違いだと言いました。
神様が男に言いました。
「すまなかった。お詫びにそなたを異世界に転生させよう」
その世界は剣と魔法のファンタジー世界で、ゲームのように「ステータス」や「スキル」があるといいます。
神様は男に聞きました。
「なにか転生について希望はあるか」と。
男は来世では世界を救いたいと考え、答えました。
「全てを守る力が欲しい」と。
神様は頷き、彼を転生させました。
男は目覚め、ステータスを確認しました。
『絶対守護・・・存在するだけでこの世の全てをありとあらゆる攻撃から守る』
妙な表現に彼が訝しんだとき、彼の両親の会話が聞こえてきました。
「やっぱりどうしても木を切れねえ。どんなに思いっきり斧を叩き込んでも、見えねえ壁に守られてるみてえにキズ一つつきやしない」
「この子が生まれた日から・・・。一体どうなってるのかしら・・・」
「俺たちだけじゃねぇ、冒険者は魔物を殺せなくなったし、魔物も人を殺せなくなった。家畜だって殺せないし、花すら摘めない。まるで生命への一切の攻撃が禁止されてるみたいにな」
その会話を聞いて、男はショックを受けました。
そう、彼のスキルは、「全ての生命が傷つけられなくなる」というものだったのです。
そのせいで、人々は新たに食糧を確保することが不可能になりました。当然混乱が起きましたが、誰一人ケガをしませんでした。
彼は自分が死ねばスキルも消えると考え、母親の乳を飲まないようにしました。しかし母親は無理矢理にでも乳を与え、彼が死ねたのは家の蓄えが尽き、母親が死んだ二日後、生まれてから二ヶ月経ったときでした。
それまでに世界中で大勢の人が飢えて死にました。
世界を救いたいと願った彼は結局、世界を滅ぼしかけました。
彼らの運命を見届けた神様は、とても意地悪な笑みを浮かべ、しかしそれを悟られぬようすぐに真面目な顔になり、次の転生予定者へと聞きました。
「なにか転生について希望はあるか」と。
お読みいただきありがとうございました。