また合流
薬草採取するのはいいけどどれにしようか。比較的簡単な奴がいいけど見ただけじゃちょっとわからない。こういう時こそギルドの人に相談だ。
「すいません、ランクEで受けられる一番簡単なクエストはどれですか」
せっかくだからさっきのお姉さんとは違う人に話しかけてみる。ネトゲの基本はコミュニケーションだよコミュニケーション。
でもその辺にいるムキムキな方々はちょっと怖いので、正社員っぽい人に話しかけてしまうのは日本人の悲しい性と言えるのではないでしょうか。
「そうですね……討伐と採取、調合などのクエストがありますがどちらを希望ですか?」
すごく丁寧にされるとそれだけで嬉しい不思議。しかも難易度的に採取と討伐があまり変わらないってもの嬉しい誤算だ。
調合? そんなものはできない。と思う。
しかし難易度が一緒って結構違和感あるな。どんなゲームでも大体採取が簡単にできて討伐がその後のキーになるクエストだったりとかそんなん。
「討伐と採取が同じ難易度なんですか?」
「はい、例えばこのモンスターは一応モンスターに登録されていますが実態は虫取りみたいなものです。素手で行っても特に問題もありません」
職員っぽい人は資料をこちらに見せながら説明してくれた。
「ただこちらのクエストは難易度こそ低いですが、このモンスターの性質で死にかけるとものすごくくさい臭いを出します。なので中途半端にダメージを与えると悲惨な事になります。一撃必殺か臭い対策をしていくのが良いでしょう」
なるほど。
芋虫みたいなものか。
すごく嫌だな。
「なので簡単なクエストとなっています。こちらの薬草採取も位置も近いし常駐クエストなのもあってみなさん一緒にやってきてくださいますよ。討伐のついでにいかがですか?」
すごく嫌だけどとりあえずやってみるか。
何事も冒険だ、突撃してみよう。
やっぱり順々にクリアしてこそネトゲの醍醐味だと思うんだよね。神も楽しめって言ってたし。
「それじゃあそれでお願いします」
「かしこまりました」
正社員っぽい人が討伐クエストの受注手続きをしてくれる。
「それではギルド証の提示をお願いします」
先ほどのお姉さんからギルド証をもらっていたので渡す。このギルド証が身分証明書になるようで、モンスターの討伐とかの記録もこちらで勝手に行われていくそう。ポイントもこれに溜まっていく。
きっと魔法的な何かの処理が行われているのだろう。あまりにも便利過ぎる。
ギルド証で出来ることは身分証明のほかに街の出入りとかランクに応じてセキュリティの高い施設に入れたり入れなかったりするらしく、世間体的な意味でのステータスも兼ねているよう。
日本でいう所のゴールドカードとかブラックカード的な感じだと思っておこう。
施設とかプラチナゴールドとか持ってると無理やり予約できたりするしな。短い社会人生活の中でそんな話よく聞いた気がするわ。俺は持ってなかったけど。
「はいこれで大丈夫です。いってらっしゃいませ」
「ありがとうございます」
ギルド証を受け取り、さっそく現地に向かう事にする。最初のクエストという事もあり距離もかなり近い所だったりする。
目的地は街が手入れしている農園近くの森らしい。どうやらそのモンスターは芋虫よろしく植物を大量に食い荒らし、やたらと数が多いので常に駆除対象なのだとか
森に生息しているとはいえ大小さまざまな個体がいるので、狩りから帰って来た冒険者にくっついて街にまで入って来る事も多く大変なのだそう。
芋虫というのだから何かの幼虫なのだろうけど解明されていないらしい。まじかよと思わないでもないけどモンスターの生態はまだまだ謎がおおく、研究も全然進んでないというのが現状らしい。
というのが職員さんに聞いた話。
やっぱり初心者向けのクエストで間違いないっぽい。
はりきっちゃおう。
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というわけで現地の森にきたわけだけど。
「めっちゃ人いるな」
そう、初心者クエなのだから当然他の初心者も多く存在する。ここが初心者にオススメされる理由が弱いモンスターが出るほかに、助けてくれる他の冒険者が多数いるというもの。
さきほどの芋虫の他にもゴブリンだとか角の生えた兎とか、よくあるゲームとかで最弱を誇るモンスターがこの辺りに多く生息しているらしい。
そしてそこに見た顔を発見した。ひたすらに一人で草を集めている彼女の姿はモンスターを倒してる一団の中にあって少なからず浮いて見える。
女性というのもあるかもしれないが、よく考えたら自分も一人である。友達いないのだろうか。
「あ、さっきの」
向こうもこっちに気づいたようでこちらに声をかけてきた。
幸薄リリーの強さ的にはこの辺はもう超えてて然りかと思うのだが何か用事だろうか。
「この辺りには怪我によく効く薬草も生えてるのよ。あんたもお金に困ってるなら少し採取していくといいわよ」
「そうなのか、ありがとう」
あんたもってことはお金に困ってるのか。結構腕の立つ冒険者って感じだけど一人だとやっぱり難しいクエストが多いのかな。
というか露骨にはぶられてる割にフレンドリーだな幸薄。
これはあれか。見た目結構可愛いし元貴族のお嬢様だからみんな近寄らないタイプのあれか。扱いに困る的なあれそれ。今は何も問題なく活動出来てたとしてもあとでタイムライン家のごたごたが起こらないとも限らないからことなかれ主義的なとか。
ありうるな。
金髪碧眼ツインテのオーソドックスなロリ系少女。ほっとかれるわけがない。
お近づきになりたい連中なんてそこかしこにいるだろう。というかもしかしてここに人が多いのこいつがいるからなんじゃないかと思うくらい視線を感じる。何話してんだよ的なそういう。
本人的には没落貴族でみんな遠巻きにしてると思ってるけど、実はファンクラブとか出来ちゃうくらいみんなあなたのこと好きですパターンかこれ。
つまりファンクラブ会員でない俺が近づいてるのがみんな好ましくないと。
俺だってファンクラブに睨まれるの好ましくないわしっかり見張っとけよまじでと思わなくもないが、可愛い子と知り合いになれてうれしくない男の子なんていないと思います。
なので俺はこの現状を嬉しく思います。
「変な顔してどうしたのよ。大丈夫?」
そしてこいつはさっき別れた時ちょっとセンチメンタル入ってたのに次会ったらケロっとしてるとか地味に調子狂うわ。
なんかこう、気を使うつもりが使われていたみたいなそういう。天然なのかもしれないけど。
でもそうだな。同じ日に二回も会ってかつイベント進めたら話しかけられるとかロールプレイングゲームでもギャルゲやエロゲでもテンプレ展開なんじゃなかろうか。
これは妹にしろっていう神の思し召し。ハーレム要員になってくれるように選択肢を間違えないようにしよう。
「ああ、大丈夫。ちょっと考え事してただけ。それよりこの辺人多いけどいつもそうなの?」
「ええ。狩りに慣れてない冒険者の練習場って事でいつもこんなもんよ。もう少し少ない時もあるみたいだけど誤差みたいなものだと思う」
「そうなんだ。初めて来たから驚いたよ。リリーは薬草集めてるんだっけ? 良ければ教えてもらえない? 手伝うからさ」
「え? ええ……いいけど」
よし少し強引な感じだったけど一緒に行動できるぞ。リリーはたぶん押せ押せに弱いタイプと見て正解だった。
押せ押せに弱いタイプはヤンデレになる可能性が高く危険と言われているけど妹になるならばどんとこいだ。お兄ちゃん的には全ての妹を愛し続けることが至上なんだぜ。