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出会いとネトゲ、そしてギャルゲ

「へえ、あんた今日から冒険者になる予定なの」


 彼女は親切な上級者さんよろしく、街に行くのに一緒に来てくれることとなった。


 ギルドに登録せずに魔物を狩ることは禁じられていないが、素材の買い取り等の行いはギルドを通した方が支払いが良いということらしい。


 そのため彼女は見ず知らずの初心者である俺を導いてくれているのだった。


 親切過ぎるだろ。そして俺の知識無さすぎだろ。普通に転生した気分だわ。


「ありがとう。とても助かるよ」


「別に気にしないでいいわよ。ここで会ったのも何かの縁だし死なれても寝覚めが悪くなるからね」


 しかし凄くいい人だなこの人。ネトゲの世界ではここまで親切な人は中々見ないぞ。


 やっていたゲームは色々あるが、神と一緒にやっていたゲームはフルダイブ型のMMORPGで、基本的になんでも出来た。アイテム生産、武器作成、スキル開発、ステータスの割り振りで無限にあるような職業が決まったりしていた。


 フルダイブとはいえ、ジンを召喚した神がやっていたようにパソコン媒体でやることも可能であった。


 互換性があることは当初かなり驚きだったがしかし、フルダイブしている人たちの方が動きが良いのは明白だった。


 何せ動きが自由であり、ステータスウィンドウを開きながら別の作業をしつつプレイヤー同士の会話も可能でそれに対するラグもない。


 戦いかたも複雑で、パソコンでやってる人は酔狂以外の何物でもない。最初期は少なからずいたが、ゲーム性があまりにも違い引退したのである。


 実際に使用率もフルダイブが利用者が99%を越えていた。


 そのなかでほぼ廃人と化していたジンと一緒にやっていた神はかなり異端だったといえる。


「ここよ」


 彼女に連れられて来た場所はいかにもな場所だった。酒場のようなテーブルがあり、カウンターもある。手前がレストラン兼酒場、奥がギルド受付ということだ。


 まさに思い描くギルド酒場ってこんな感じ。


「まずはあそこで登録してくると良いわ。そしたら適性とか色々教えてくれるから。それじゃ、また機会があったら会いましょ」


 そういって彼女は来た道を引き返していこうとする。本当にここまで案内するためだけに来たらしい。


 先ほど彼女も言っていたようにこれも何かの縁だと思うし声をかけてみるか。


「ちょっとまってくれ、何か礼がしたい」


「そんなの良いわよ。私が好きでやったことだし」


「それだと俺の気がすまない。今でなくても良い、命も助けてもらったんだ、必ず礼をする」


 先ほどの兎はひとりだったら死んでいたかもしれない。それを助けてもらい、ここまで案内までしてくれた彼女に礼がしたい気持ちは本物だ。


 ネトゲ時代でも彼女と同じようにしたことが多く、その人たちからは感謝されていた。その中には希少素材を分けてくれたりしてくれた人もいたし、自分もそうありたいと思っていた。


 というか普通に可愛い。礼がしたいどころか色々したいだろこのギャルゲ世界。


「駆け出しのあんたに何かできるとは思えないけど……気持ちは嬉しいわ。っていうか私のこと知らないの?」


「え?」


 彼女のキョトン顔にこちらもキョトン顔だ。


「この街の近くなら知ってたのかと思ったけど……本当にしらないようね」


 彼女は言いよどむようにしていたがそのまま何事もないように話すようにした。


 一般常識もあるかあやしいこの記憶なので本当にごめんなさい。


「私の名前はリリー。リリー・タイムライン。昔貴族だったけど今はただの貧乏人よ」


「そうなのか。俺の名前は神野ジンだ、よろしく」


ジンの反応にリリーと名乗る少女はぽかんとしていた。


「あんた、何も思わないの?」


「没落貴族のこと? そう言うこともあるんじゃないか? その家族がどうだからってリリーが何かしたわけじゃないだろ?」


「お母様もお父様もなにもしてないのに殺されたわ……没落貴族だからっていじめられてた私をかばったら……それだけで……」


 どうやら思ったよりもベビーな家庭環境だったらしい。そしてこの辺りでは結構有名な話だったらしいが、記憶には何もなかった。


 知ってなかったからこの出会いか。記憶ないのもありがたいぜ神様。


「なるほど、最初から心配いらなかったわけか。流石俺だぜ……」


「何か言ったかしら?」


「いやなんでもない。でもその身の上ならパーティ組めなかったりするんじゃない?」


 出会ったときリリーは一人だった。たまたま一人だったのではなくパーティを組めなかっただけだった可能性が高い。そしてあの強さということはずっと一人でやって来たのかもしれない。


 ぼっちの美少女まじ可愛い。


「そうよ、私は一人で平気だもの……それじゃあね!」


 捨て台詞が如くリリーは逃げるようにギルドを去っていった。きっと中に入ったら色々言われることもあるのだろうし、リリーと一緒にいる自分にも迷惑がかかるかもしれないと思ったのかもしれない。


 全ては想像に過ぎないが、初対面の人間にここまで優しく出来る少女はきっとそうだろう。


 というかこの世界はまじでギャルゲーなんじゃないか。


 神は召喚した時に自分達のやってるネトゲに近い異世界と言うことを言っていたが、この最初の出会いはまるでギャルゲーだろ。


 だが別にハーレムを築きたいとかそういうわけではない。男として彼女に魅力がないとは決して思わないが、ギャルゲーマーとしての矜持がフラグを建てるには早すぎると訴えていた。


「ツンデレの元お嬢様とか一番簡単な攻略対象じゃんね。だからこそ一番かっこよくあってほしい。攻略はそれからだな」


 しかしだからと言ってハーレムに憧れていない訳ではない。スタイルは常にハーレムエンドがトゥルーエンド、全員幸せ最強ルート。


 なので全てのキャラを攻略した後に出てくるハーレムに行くために、しっかりと一人一人のキャラを本気で攻略。


 そして何故そのルートなのかというと、その場合高い確率で妹ルートが併発。


 妹ルートは何故か最後まで攻略出来ないとか、ハーレムエンドが妹ルートだとかそんなゲームがめちゃくちゃ多く、妹のために全てのルート攻略をし続けた結果。


 そもそも妹しかいないゲームも多かったがそれはそれで全ルートを綺麗にやるだけだ。


 ゆえに妹とのフラグを建てるためにはあのツンデレ元お嬢をガッツリ攻略だ。


「つまり魔王を倒せとは比喩表現……俺だけの妹物語を完成させろと、そう言うことか……!! だからあんなに可愛い妹がいたんだ……!! やるしかねえ!! 全てのルート攻略を、妹トゥルーエンドを!!」


 魔王を倒すというよりも、攻略することがここに召喚された本当の理由だと思うことにした。

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