表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

妹と二人暮らしから冒険者の選択肢

「なあ、転生って信じるか?」


「なにそれ?」


 妹と食事をしながら率直に聞いてみる。直球過ぎるが他に良い案が思い浮かばなかったのでそのまま聞くことにした。


 妹、サキは急に変な事を言いだす兄に疑問を投げてきたがそんな仕草も可愛いなこいつしか俺の脳内にはない。


「実は俺、神に選ばれて異世界からきた勇者なんだ……って言ったら信じる?」


「信じない」


「そうか……」


 サキにばっさり切り捨てられ落ち込むが、ばっさり斬られるのも心地いい。胸の高鳴りを感じる。


 サキは昔からサキはさばさばした性格で思ったことをそのまま口にすることが多かった。


 結構堪えるような事をさらっと言ったりするが、嬉しい事もさらっと言ったりするので周りからの受けはかなり良かった。


 ちなみに俺はどっちも嬉しい。


「ていうかずっと一緒いたのに異世界から来たとか言われても意味わかんないよ?」


「それもそうか」


 同じ両親から生まれ、同じ場所で育ったのに異世界から来たって言うのは現実的に無理がある事に思い至った。言われてみれば子供の頃を知っているのに転生したというのはおかしな話だった。


 というかサキに転生者であることを理解してもらう必要もないなと思い気にしないことにした。


「急にどうしたの?」


「勇者になったらカッケーナーって思った」


「……お兄ちゃんも冒険でるの?」


 お兄ちゃんも、というのは両親も冒険者であり父親は現役の冒険者でもある。サキは何も言った事はないし不満も口に出したことはなかったが、もしかすると危ない事はしてほしくないと思っているのかもしれなかった。


 妹に心配してもらえるなんて現実では考えられなかったまじ感激。


「そうなると思う」


 神から言われたからというのももちろんあるが、それ以上にこの世界では冒険して生活するのが当たり前になっている。


 職を持って街などを警備する人もいるにはいるが、冒険者上がりがほとんどだ。


「そっか、そういう年頃だもんね。がんばってね」


 素直に応援してくれる妹に感謝の気持ちがこみ上げる。


 ついでに色んな欲望すらも込み上げるがこちらは今は我慢。攻略ルートを通るまで我慢だ。


 元の世界では人に応援されることなんてもうずっとなかった事がどうでもよくなるほど妹可愛い。


「ありがとう。明日は下見に行ってくるよ」


「ん、わかった。家の事は任せておいて」


 妹の様子は別段変わった所もなく、その後は雑談をして食事を終え片づけてから部屋に戻る。


「くそ、緊張してまともに会話するのが精いっぱいだった」


 長らく一緒に生活していた記憶があり、実際に妹としての認識はあるが異世界の記憶も同時に引き継いでいて、妹にテンションが上がりまくるのを抑えるので精いっぱいだった。


 そしてこっちでの記憶も妹以外の記憶がほとんどない。街までの行き方とかそのあたりしかわからない。


 神様色々調整ミスってんじゃねえ?


 だが異世界転生っぽくてそれはそれでありだ。


 というか妹いるからどんなミスでもおうけいだ。


 しかし妹と暮らしたらもっとキャッキャウフフな展開を期待してている自分もいるのでなんとか我慢の気持ちである。


「しかし対外的にはどう見えてるんだろうな」


 自分は異世界の記憶を持っていると認識している。そしてそれは今までの生活の中ではなかったことだ。


 記憶や知識がいきなり追加され、人格も変わってるんじゃないかと思うが実際はどうなのか。サキの様子を見ると特に変わった感じはなかったが、ずっと話していたらぼろがでるかもしれない。


 冒険に出たい理由はそれもあった。変な話だが、面識のない昔からの友人に変わってしまったと勘ぐられたくなかった。

 知らない人から後ろ指さされてもそこまで気にならないが、知り合いからそういう事をされるとまた引きこもりになりかねない。


 ゲームの無い世界、この世界がゲームみたいなものだが、せっかく来たというのに元の生活に戻るのはごめんだった。


 でもいつも一緒にいた妹の反応があれならなんとかなりそうな気もする。


 だが他の知り合いはわからない、やはり冒険は必須だろう。


「神はこの新しい世界で勇者になって魔王を倒せみたいな事言ってたけど、なんでこんな平凡な村からスタートなんだ?」


 妹がいるという事実があまりにもインパクトがありすぎて現実を全く見ていなかった。


 神はそれっぽい事を言っていたが、それなら冒険者になってからのこの体から始めれば良かったはずだ。わざわざこんな回りくどい事をする意味がわからない。


 しかし始まってしまったのだから仕方ない、前向きに行こう。



------------



そして翌日の朝、街の方に向かうことにした。村の外はよくある草原地帯で特に強い魔物は生息していない。


主に初心者が簡単に倒すことが出来るくらいの魔物や、服の材料に使われる毛皮等を持った魔物がせいぜいである。


しかしこちらの知識があるとはいえ、ジンは魔物との戦闘経験は全くない。ゲームの中ではかなりの経験があるがそれがどの程度役に立つのかはかなり怪しい所である。


「とりあえずちょっとだけでも倒してみるか」


 とりあえず装備は動きやすい普通の服に、武器はなし。


 石でも投げてればなんとかなるだろ。


 駄目なら気合いで倒す。


 そのくらいのモンスター希望。


 村から街の方に行くと、街の門の近くには見張りなどがいたり、冒険者が数多く往復したり護衛任務などであらかたの魔物は片付けられている。


 それでもどういう原理かはわからないがモンスターが突然沸く。そういう拠点の近くには強い魔物は特別な場合でもない限り沸くことはないので、駆け出しの冒険者たちのレベル上げの場所になっていたりする。


「その辺はネトゲと同じだよなぁ」


 整備されている街の外はやはりかなり広く、冒険心がある者ならば期待に胸を膨らませることは間違いなかった。


 ネトゲの世界とよく似た光景を目の当たりにするとテンションが上がってきた。

 

「その辺にいいモンスターでもいれば良いんだけど」


 やはりというか簡単には見つからない。街の外にちょっと出ただけでモンスターに出くわしたら警備兵が涙目になる事必至だろう。


 それでも結構な時間うろうろして街から離れればモンスターがいるわけで。


「あいつ弱そうだな」


 小型犬くらいのサイズの兎のような生き物が日向ぼっこしていた。


 一見ペットにも見えるが敵であることを示すマーカーのような反応が感じられた。


「女神の能力でつけられたものか。もしかしてよくある鑑定とかも出来たりするんだろうか」


 感覚的に敵とわかるし、これが敵意みたいなものに反応するのならかなり便利でまさにチートと言っても過言ではないだろう。


 このモンスターに対してみた感じではマーカーの色は赤というその情報のみだが、心の中で鑑定と呟くと敵の情報が出てきた。



《ラピットラビット》

危険種 初心者では太刀打ちできない 目にもとまらぬ速さの蹴りで一撃離脱を繰り返す ただしこのモンスターの毛皮と肉は超高級品 見る事が出来る事自体が幸運だが敵意に敏感なため捕まえることはさらに難しい



「え、これやばいんじゃ」


 情報をみてあとずさりすると同時に兎がこちらに気づき、警戒態勢をとったと思ったら姿が消えた。


 完全に死亡フラグだろこれ。


 もしくは初回負けイベントっぽい。


 バキィと鈍い音がしたと思ったら目の前に人がいた。いつ来たのか全く分からないがどうやら助けてくれたらしい。


 初回負けイベントですんで良かった。こんな序盤でもう妹と会えないとか嫌じゃんね。


 助けてくれた礼を言おうと思ったがその前にその人物は叫びだした。


「あー! もうまた逃がした!! もうやだせっかくラッキーだったと思ったのにあんたのせいだからね!!」


 今のは目の前の人物とラピットラビットが戦った音らしく、一撃が防がれたウサギはそれがわかった途端姿を消していた。


 確かに一瞬で俺の目の前に移動してきたことから、普通に戦っていたら余裕で倒せただろう。


 今のが今日の晩ごはんだったとか言われたら申し訳なさすぎる。


 なので謝罪とお礼を。


「あんたの獲物だったのか、すまない。それと助けてくれてありがとう」


「べ、べつにあんたのせいじゃないし! 助けたくて助けたわけじゃないし!」


 思いっきりあんたのせいとか言ってた気がしたがあえて触れないようにした。


 ツンデレっぽいのはつつきすぎると起こりすぎちゃうからね。


「あんた初心者でしょ? その装備を見るとギルド登録とかもしてなさそうだし、街の近くと言っても一人は危ないわよ。せめて仲間連れてくるかしっかりした装備をしてきなさいよ」


 この人物も一人だったが装備がしっかりしていたし、ウサギの一撃を止めたことからも結構強いことがわかる。


 ぼっちとか引きこもりからしたら親近感わいてくる。


「これはあれだ、ネトゲで言う親切な上級者さんだ」


「ん? 私は上級者じゃないしそのネトゲ? というのも知らないわよ」


 独り言にも律儀に返答してくれるあたりかなり親切な人だということは分かった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ