プロローグ
また新たな小説です、すいません。
1942年1月5日午後10時
大日本帝國広島県呉市柱島泊地
夜陰に紛れ1隻の船が出航していった。それを見送るのは僅か2人である。その2人以外に見送る人は居ない。1隻の船が出航するだけで、それ以外は何も変わらない。何時もとほぼ同じ日常がそこにあった。
「長官、大丈夫ですかね。」
「大丈夫だ。」
伊藤整一参謀長の言葉に、小澤治三郎連合艦隊司令長官は答えた。
「大丈夫で無ければ、山本大臣は龍神の建造を許可しなかったし、この作戦も認めなかっただろう。」
「ですが長官。僅か1隻の戦艦だけで艦隊を編成し、太平洋を駆け回りアメリカ海軍を攪乱させる何て無茶です。」
「まぁ確かに、参謀長の言いたい事は分かる。しかしあえて1隻で行動させるのだ。その為に5年の建造期間でこの龍神は多目的艦として竣工したでは無いか。」
「そうですね。龍神は言うならば航空輸送戦艦とでも言うべき代物ですからね。」
「だから大丈夫だ。」
小澤司令長官はそう言うと大きく頷いた。
伊藤参謀長も納得したように頷いた。
この日1942年1月5日、大日本帝國海軍連合艦隊は1隻の戦艦を大海原へ送り出した。正式名は『超弩級多目的戦艦龍神』である。
この龍神がアメリカ海軍に『デーモン』と呼ばれ、懸賞金まで掛けられる伝説の戦艦になるのである。